既存の枠を越え、人間の本質を理解する
―VUCAの時代に自分を生かす力―
「文化」を探究し、人間の本質を知る
「データサイエンス」から見える人間とは
私たち、同志社大学文化情報学部が考える「文化」とは、芸術や文学、芸能に限りません。それらを含めて、人間のつくりだす行動様式や習慣、技術、経験則、あるいは道具や動機、価値観さえもが「文化」に含まれると考えています。2005年に開設した本学部は、時代に先駆け「データサイエンス」の力に着目し、広い意味での「文化」の研究に応用する文理融合の学びを推進してきました。
データ、情報の世界とはなじみの薄かった「文化」を研究対象としているのはなぜかー。それはこれからが「人間の時代」だからです。技術や情報化が高次元で進む一方で、人間が引き起こしたさまざまな社会問題(環境・紛争・格差など)を抱えるこれからの時代こそ、「人が本当に何を求め、何を幸せと感じるか」を見極めた上で社会を作っていかなければなりません。そのためには、過去から現在に至るまで、人間が獲得する習慣、技術、経験則、道具、動機、価値観、信念にどのようなものがあり、どのくらい繁殖し、なぜ繁殖するのかを解明する必要があります。つまり、文化を研究する必要があるのです。
データサイエンスは情報学や統計学を活用してデータから新たな価値を引き出す学問です。この手法での研究は、人間の直感や感覚だけでは導き出せない、全く新たな視点の解釈や新たな価値を創出できる可能性を秘めています。また、データサイエンスは多岐にわたる「文化」という研究対象に「横串」を刺し、さまざまな分野の研究に共通して活用できる有効な手段です。多様性に満ちた本学部を一つにする接着剤のような役割を担っていると言えるでしょう。
学生は大学の「ユーザー」ではない
同じ目標を共有する研究機関の一員
本学部は、「文化に関する学術研究に基づいた確かな情報を社会に供給する」ことを目標に掲げています。そのため本学部では学生を、大学という教育機関の「ユーザー」ではなく、研究機関の一員として捉えており、教員と学生が共同で研究活動を行う「研究機関型教育機関」を標榜しています。学生には社会から恩恵を受けるTAKERから、社会に恩恵をもたらすGIVERとしての社会参加を促しているのです。
こうした研究・探究志向は必修科目の中にも徹底して落とし込んでいます。1、2年生の「文化情報学1〜4」では文化情報学の理念、最新の研究動向、上級生による卒業研究紹介などに触れ、文理融合に基づく探究活動の基盤を構築します。3年生春学期の「ジョイント・リサーチ」では、これまでに修得した文化現象の知識やデータサイエンスの実践力を生かしてグループ単位での研究活動を行います。3年生秋学期には卒業研究の構想に着手し、4年生で総括となるリサーチ・プロジェクト(卒業研究)に取り組みます。学生は4年間の探究活動の過程で、早期から「社会の中で自分をどう生かすのか」という思考を巡らせることができます。
リベラルアーツのエッセンスを吸収し
知的バイタリティを涵養する
本学部はリベラルアーツの学部ではありませんが、そのエッセンスをカリキュラムに色濃く取り入れています。そもそも、リベラルアーツの起源は大きく2種類に分類できると考えられています。1つ目は「知識養成アプローチ」です。これは、特定の職業に特化しない基礎教養が固定的に存在し、それらを教育することで将来の指導者階級を養成しようとするものです。もう1つが「態度養成アプローチ」です。これは、学生が自由な発想をもって研究活動に参加することを重視し、学生を特定の分野や考え方、信念から解放(リベレート)し、学問分野の壁を乗り越えることが、研究の質を高めるとする考え方です。本学部の探究志向カリキュラムが実践しているのは、2番目にあげた「態度養成アプローチ」であり、それによって形成されるのは、未知の分野に踏み込んで『学習』する能力を手腕に、仕事を巡る社会の変動に積極的に立ち向かえる人物です。
自分の殻を打ち破り、異なる専門分野を
渡り歩く自信と能力を獲得する
学問分野の壁を越える態度、すなわち自ら未知の学問分野に踏み込み、学ぶ姿勢を有することは、今後ますます重要な資質となります。人間は長い歴史の中でさまざまな問題を解決してきましたが、その過程で自然と学問の機能や役割分担は限定されてきました。既存の問題であれば、こうした機能別の役割に従うことは有効ですが、日々深刻化する気候変動のように、現在、私たちは従来の役割分担が適用できない複雑で高度な問題に直面しています。こうした状況にあっては、特定の分野に特化した専門家だけでなく、必要に応じて異なる専門分野を渡り歩き、そのエッセンスを修得した上で問題解決の道筋を構想できる人物が求められます。
こうした時代の要請に対応するため、大学では知識や技術を修得するだけではなく、それらを社会でいかすための考え方を身につけ、向社会的態度を養わなくてはなりません。人生の中でも最も成長に対してエネルギーを注力できる大学時代に、分野横断的な研究を通して自分の殻を打ち破り、旺盛な知的バイタリティで社会に貢献する。本学部ではそんな学生の養成に重点を置いています。
多様な分野から形成される「総合知」と
「なんとかする力」で時代を生き抜く
多様な側面をもつ「文化」を取り扱う本学部では、教員の専門分野も哲学や芸能、言語、情報、数理など実にさまざまです。同じく学生も文系・理系という垣根を越えて、地域の伝統芸能に貢献してAO入試を突破してくるような人も含め、多様なモチベーション・背景をもった人が集まっています。
異なる分野の学問が集積してできた本学部には、同じ学問分野内では存在するような「共通言語」がありません。教員や学生は互いをつなぐ言語を探し、少しずつ認識を共有していきながらコミュニケーションを深めていきます。ときには意見がぶつかったり、同じ方向を向けない時もありますが、それでも多様な教員と学生が同じテーマ・目標を共有し、真剣な議論を交えながら探究活動を行うことで、総合知の創出につながると考えています。こうした自身と考え方の異なる他者との交流を通して成長した本学部の卒業生は「なんとかする力」を身につけて社会で活躍しています。
今後も社会、とりわけ仕事を巡る状況は変動していくことでしょう、本学部の学生にはさまざまな壁や課題に真剣に向き合い、先行き不透明で予測困難なVUCAの時代をしなやかに生き抜く素地を4年間で養ってほしいと願っています。
文化情報学部
ディプロマ・ポリシー(2024年度生以降)
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知識・技能
文化と人間に関する複雑な現象を的確に捉え、文献調査から、データの収集、集計および分析など、文理の枠を越えた様々な研究技法を習得し、目的に応じて使い分けることができる。
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思考力・判断力・表現力
主体的な研究の計画と遂行を通じて身につく精確な思考力と判断力、さらに、研究成果の発表・発信を通じて身につく高い水準の表現力を有している。
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主体性・多様性・協働性
文理の枠にとらわれず、他者の視点からも学ぶ発想力と未知の分野に踏み込んで研究・学習する知的バイタリティにより、社会の変化に柔軟に対応できる。