水や大気、土壌や気温、自然や景観など人間と環境の関係を掘り下げて研究するのが環境学です。環境については、これまで生物学や、農学、地球科学などの自然科学系の学問で研究されてきましたが、環境問題は経済や法律、社会制度などとも絡み合っているため、人文・社会学系のアプローチによる研究も求められるようになってきています。
人文・社会学系では、環境と人間生活との関わりを考えるための法整備や政策の立案、経済的な側面からの問題解決の探究や仕組みづくりなどがテーマになります。理系的アプローチでは、既存の自然科学的分野に加えて環境計画学や環境デザイン学なども学びます。ゴミ処理やリサイクルなどの身近な問題から、酸性雨や温暖化、PM2.5といった地球レベルの問題まで、さまざまなテーマが対象になります。
理系・文系にまたがる学問のため、就職先も多岐にわたります。製造業、建築関係、エネルギー関連、流通・サービス業などの一般企業、マスコミ関係、公益法人、環境NGOなどでの活躍が期待されています。公務員になり、行政機関・教育機関で働く人もいます。
岩手大学 人文社会科学部 地域政策課程 教授 寺崎 正紀 先生
あらゆるものには表と裏、メリットとデメリットが存在します。現代の社会生活に欠かせない化学物質も例外ではありません。その代表的な例が2000年頃に大きな話題となったダイオキシンや環境ホルモンといった物質です。そして近年は自然界にゴミとしてさまざまな化学物質が流入する現象も問題となっています。それにともない、そういった物質のリスクを検証する研究も活発に行われています。
例えば近年は、使い残した医薬品が自然界に流入する問題が取りざたされていますが、これによるリスクは自然界の菌が抗菌薬に対する耐性を持ってしまう可能性が高いことです。以前、薬は医者に処方されて初めて手に入るものだったのに対し、現代ではドラッグストアなどで手軽に手に入ります。そのため、ゴミとして排出されるケースが増えてきました。
また、もうひとつの例が、プラスチックが細かく砕けたマイクロプラスチックという物質です。これが海に広がった場合、海中の毒物を集めてしまう性質があることが検証されています。これをプランクトンが誤食し、そのプランクトンを食べた魚を介して人間の体内に入ってきてしまう可能性も否定できません。したがって、いち早くそのリスクを検証し、法的規制によってリスクを軽減するという対応が必要です。
日常的に使う生活用品の中の防腐剤も、水道水に含まれる塩素と結合することで、ダイオキシンに似た物質に変性します。毒性を持つこの物質には遺伝子損傷のおそれや、発がん性物質が体にたまりやすいなどの中長期的なリスクが潜んでいます。防腐剤は日焼け止めクリームや紙幣にも使われていることが明らかになっています。
すぐに体に異変が出る急性の作用こそないものの、変性した物質は体に悪影響を及ぼします。使用方法や取り扱う頻度に十分に気をつける意識が必要となってきます。
大阪公立大学 農学部 緑地環境科学科 准教授 武田 重昭 先生
「ランドスケープ」という言葉を知っていますか? ランドスケープとは、直訳すると風景や景観を意味する言葉です。学問体系としては「ランドスケープ・アーキテクチュア」という分野があり、「まちづくり」を道路や住宅といった人工構造物だけでなく、緑地や公園といったオープンスペース、さらにはそこでの人々の過ごし方まで含めて考えます。
1850年代のニューヨーク・セントラルパークの設計において総合的な環境づくりの技術体系が確立したことが始まりとされています。建築や都市環境のデザイン的な側面に加え、みどりや自然を取り扱うことから、農学的な要素も多分に含んでいる点が特徴です。
日本にランドスケープ・アーキテクチュアが入ってきたのは明治時代の末から大正時代です。それまで、都心部に計画的なオープンスペースがつくられることはほとんどありませんでしたが、文明開化の影響を受けて公園がつくられるようになります。その第一号は東京の日比谷公園で、人々がスポーツやレクリエーションを気軽に楽しめる近代的な都市公園のモデルにもなっています。その後もたくさんの公園がつくられ、都市生活において欠かせない存在となりました。現在では再整備や利用の仕組みづくりまでを含めて、公園を「つくる」という意味がますます広がっています。
しかし、日本ではランドスケープを意識したまちづくりや都市整備はまだまだ遅れています。日本の建設現場では、緑地やオープンスペースは「外構」と呼ばれ、中心となる建物の周囲を飾るものととらえられることがほとんどです。しかし、世界的に見ると「ランドスケープ・ファースト」という考えが浸透しており、まずは風景や景観の下地となる緑地を計画して、次にそこに見合った建物がつくられます。人口減少時代を迎え、空き地や空き家が増加している日本では、オープンスペースをまちづくりに生かしていくランドスケープの重要性がこれまで以上に高まっていくでしょう。
県立広島大学 生物資源科学部 生命環境学科 環境科学コース 教授 西村 和之 先生
私たちは日々水を使い、汚れた水を下水道に流し、衛生処理して環境に戻しています。そして、人間や動物が生きていく上で好ましい水の環境を整えるために、さまざまな観点から水の計測や分析を行っています。しかし計測できるのは現在の水に限られており、昔よりもどのくらい良くなったのかは正確には判断できません。過去の時代の水の状態を示すデータが残されていないからです。このことからも、水のデータを正確に計測、記録し、50年、100年というスパンで継続することには、次世代の水環境を保つ上で大きな意義があります。
水質研究のレベルは日々向上し続けています。日本の水質汚染問題の転機は、1970年代にさかのぼります。当時は環境中に多量の化学物質が放出され、それらが河川に流出し、水環境を汚染することが問題になっていました。1970年代になって法規制が進み、使われる化学物質の量は大幅に減少しましたが、反対に人々の利便性に応じて使われる化学物質の種類は飛躍的に増えています。水質計測においても、微量で多種類におよぶ化学物質を測ることが求められるようになり、さまざまな計測技法が開発されてきました。
新たな水質計測の方法として近年注目されているのが、遺伝子を用いる計測です。2017年にある研究グループがボルネオ島にある動物の水飲み場の水を採取し、そこに含まれる遺伝子情報を解析したところ、絶滅が懸念されているオランウータンがそこを利用していることがわかりました。つまり、直接観測したり、写真に収めたりする前に、周辺にいる動物の存在が確認できるようになったのです。
これを応用すれば、例えば川の上流から下流までに生息する魚や植物プランクトンの種類、および周囲の生態環境を、実際に捕獲することなく割り出すこともできるようになります。水環境と生物の研究をつなぐ技法として、大きな役割が期待されています。
広島修道大学 人間環境学部 人間環境学科 教授 岩田 裕樹 先生
ハイブリッドカーや省エネ家電など、近年、さまざまなジャンルの「環境配慮型製品」が登場しています。また企業の工場などでも「環境配慮型生産工程」が導入されています。こうした取り組みは、誰かに命令されたのではなく、企業が自主的に行っています。なぜ多くの企業が、自発的に環境への取り組みを実施しているのでしょうか。
環境配慮のメリットに注目すると、環境への取り組みは、企業に、イメージの改善、技術革新の機会、また、ガソリン代や電気代が節約できる商品であれば、消費者からの支持などをもたらす可能性があります。
さらに、資金の獲得においても環境配慮が企業にとってメリットとなる状況も存在します。例えば、現在、環境問題への取り組みなどを通じて社会的責任を果たしている企業に資金を積極的に流そうとする潮流が存在していること、また、利益に直結するのかが不確実な環境配慮活動に積極的に取り組めていることが、投資家に向けて、経営状況が良好であることのシグナルとなる可能性があるためです。もちろん、こうしたメリットの大小は通常、企業間で大きく異なります。
仮に企業が積極的に環境問題に取り組む状況があったとして、それはどの程度、環境問題の解決につながるのでしょうか、また、そうした取り組みにより我々の生活はより良いものになるのでしょうか。例えば、企業が環境に配慮することで、今よりも高い価格で商品が提供されるようになる場合、我々の生活はより豊かになったと考えるべきなのでしょうか。また、そうした企業の取り組みは持続的に行えるのでしょうか。
我々の生活に多くの便益をもたらす企業活動とその活動にともなう環境負荷の社会的影響などについて、理論的または実証的に検証し、環境と経済の両立とは何か、我々にとって豊かさとは何かを模索するのが、環境経済学の面白さの1つなのです。
国際性に富んでいる、自分の学びたいものがある
学科の内容や、1年次で幅広く学んだ上で2年次から専門に分かれることなど、制度も良かったから
県立広島大学では、食品専門の学習をすることが可能であるためこの大学に決めました。
将来、ワインにかかわる仕事がしたいので、ブドウを研究されている教授がいたので受験しました。
学科の内容が魅力的で、将来的に、学んだ事を、県内の企業等で生かしていけるのではないかと思った為。
素晴らしい教育内容のもとで、魅力あふれる人々とたくさん触れ合いながら、色々学んでいきたい。
岩手大学 人文社会科学部
震災の復興に関して積極的に地域と連携して取り組んでいるので、自分もそのようなものに参加してみたいと思ったから。
主専攻と副専攻が選択でき、幅広い知識を得ることが出来るから