観光学では、「現代における観光の役割」「観光地での地域文化との触れ合い」「ホスピタリティの重要性」など、観光と関わりをもつ社会現象に関連する研究を行います。観光を地理学、経済学、社会学、人類学などさまざまな学際的見地からとらえ、豊かな観光文化を築くための探究をすることにより、観光産業に関連する諸問題の解決にあたります。
具体的には、「観光文化や観光行動に関する分析や研究をする分野」「観光地の開発や観光地の運営を地域発展に生かす研究をする分野」「ホテルやレジャー施設、テーマパークといった観光関連施設や企業の研究をする分野」などがあります。文化としての観光という側面だけではなく、産業としての観光についても研究対象としています。また、理論だけではなく、観光業に必要となる語学や実務や技能についても学びます。
ツアーコンダクター、ツアープランナーなどの観光・旅行業界やホテルスタッフ、コンシェルジュといったホテル業界、テーマパーク、アウトドア、レジャー・スポーツ関連など、サービス業界全般で活躍する人が大半です。
高崎経済大学 地域政策学部 観光政策学科 准教授 安田 慎 先生
日本では最近、古民家を現代風にリノベーションした古民家カフェが人気です。実は中東でも、モロッコのマラケシュやシリアのダマスカスに現存する旧市街では、古い建物を再生させたカフェやギャラリーなどが人気を博し、文化イベントや音楽ライブが多数開催されています。
再開発された旧市街が観光客を中心に活性化すると、経済的に潤うだけでなく、地元の人びとも集う場としてさまざまな文化活動が創出されて賑わいが出るというプラスの効果が生まれてきました。さらに、観光地として世界から注目され人びとが集まると、自分たちの文化や社会的主張を国際社会に発信しやすくなるという利点も生まれています。
他方で、伝統や歴史のある場所が観光地化して多くの人が集まると、さまざまな弊害も発生します。ひとつは、昔ながらの街並みや生活が失われてしまうということです。そして、大量の人が押し寄せることで、地価や物価が上昇するほか、騒音やゴミをめぐる問題も深刻化し、そこに住む人びとの生活が圧迫されてしまいます。これらの弊害は近年では観光公害と呼ばれ、その対策にと各地でさまざまな形で知恵が絞られています。中東諸国でも、行政のほかにもコミュニティ組織やNPOを中心とする市民運動が、これらの問題に積極的に対処しようと自発的な活動を展開するようになっています。
プラスの面もマイナスの面もあるにせよ、現代はもはや観光抜きには語れない時代です。事実、中東の人びとは観光客を受け入れるだけでなく、自らも旅行者としていろいろな場所を訪れて学び、自分たちの人生や社会を常に国際社会のなかに位置づけています。
また、移民なども含めて、広い意味で人が移動することが当たり前の時代になっています。人が移動するということは、それにともない社会や人も変わります。観光研究は、そんな移動にともなう人や社会の変化や、あるいはよりよい社会のあり方について構想する学問領域でもあるのです。
長野大学 環境ツーリズム学部 環境ツーリズム学科 教授 熊谷 圭介 先生
スキー人口は、1990年頃をピークとし、昨今は半分以下に減っています。例えば、長野県飯山(いいやま)市には、かつてスキー場が10カ所程度ありましたが、今は3分の1ほどです。スキーを目的とした宿泊施設も経営的に厳しくなっています。そこで冬の観光から、春・夏・秋グリーンシーズンの観光への転換が求められています。これはウィンタースポーツを観光の目玉としてきた長野県の観光地やリゾート地全体に共通する課題です。
こうした課題やその解決方法を考えるには、実際に過疎や高齢化が進む地域に行き、地元の人と交流を深め、現場で問題を把握することが重要です。観光施設経営者や、移住してきた人などからいろいろな話を聞けば、その取り組みを知ることができます。その中で多様な生き方や生活に触れることも大切です。そうすることで、エコツーリズムや地域の暮らし、文化を生かした観光プログラムを提案できます。
また、あまり知られていませんが、魅力的な風景や見晴らしのよいスペースを、もっと観光に活用するためのアイデアを出し合ったりもします。模型を使って既存の施設と周囲の景観を生かした新たな開発計画を三次元で考えることで、より具体的に検討できます。
膨大な予算が必要な案は、なかなか実現できませんが、地域での社会実験や地域住民による景観づくりなどはすぐに実行に移せます。アイデアを出すだけではなく、説得力を持ってプランニングし、提案できるかどうかが大切なのです。地域の住民と協力して実現に向けたプロセスを考えていきます。
地域の活性化を考えるためには、旅に出ることもいい経験になります。ヨーロッパでは若者が長期間、旅に出ることは一般的です。なぜなら、旅は風景を見たり食事を楽しんだりするだけでなく、人生を豊かにしてくれるからです。いろいろな経験を積み、人生を考える時間を持つことも旅の役割です。旅が新しい視点をもたらしてくれるのです。
奈良県立大学 地域創造学部 地域創造学科 教授 新井 直樹 先生
2018年、インバウンド(訪日外国人旅行者)が年間3千万人を突破しました。2012年に初めて1千万人を超えてから6年で3倍に急増しました。少子高齢化にともなう人口減少で国内の市場が低迷する中、ほかの産業では例を見ないほど規模の拡大が続いているのは、インバウンド観光市場です。
日本の自然文化、食事などの観光資源が評価されていることはさることながら、国内の事情だけではこんなに短期間で急増しません。何が一番変わったかと言えば、近隣のアジア諸国が経済発展して国民所得が向上し、訪日旅行需要が拡大したことです。もちろん、これに合わせて政府もビザ免除、免税措置、LCCの拡充といった規制緩和策などで対応しています。ほかにも円安や日中関係の改善など、さまざまな要因があります。
国内日本人観光は、内需の移動ですが、外需を獲得するインバウンド観光は「見えざる輸出」と呼ばれ、国の経済成長に寄与します。2018年のインバウンド消費は、4兆5千億円に達し、自動車部品、電子部品の輸出を上回ります。
また製造業と違って旅行消費は、買い物、宿泊、飲食、交通、娯楽など幅広い分野に波及します。さらに訪日旅行をきっかけに、その後も日本製品を越境ECで購入し、化粧品や食品などの輸出が伸びるなど、インバウンドの経済効果は大きいです。また、訪日旅行の前後で、対日世論が厳しいとされる中国人、韓国人旅行者の日本に対する印象が、悪いから良いに大幅に変わるなど、社会的な意義や効果も大きいです。
しかしインバウンドの増加は、同時に課題も生み出しています。インバウンドの消費額は、東京、大阪、北海道、京都などの大都市や特定地域に集中し、多くの地方がその恩恵を受けていません。逆に京都では外国人観光客が増えすぎて生活環境が悪化するなど「観光公害」の問題が発生しています。このように、観光学とはさまざまな因果関係から現象や問題を解明する、学際的な研究なのです。
地産地消について学びたい自分にとって、フィールドワークが多いこの大学は自分にとって最適でした。
環境ツーリズム学部のゼミナール学習の中に自分が学びたいものがあった。
観光学と英語を学びたかったので、京都外国語大学の国際貢献学部グローバル観光学科を選択しました。
授業がオールイングリッシュ、ビジネスコースがとれる
奈良県の歴史的な建物や名所などを利用し、観光に関する情報を学べるから。
観光地としての魅力が多い奈良という地を活かし、地域活性化について学ぶことができるため。
将来は海外で働きたいと考えていたので、英語で授業が受けられる点や、充実した留学のシステムなどもとても魅力的でした。
国立大学唯一の観光学部というところにも惹かれました。観光学部では、GIPやLIPといった活動もあり、さまざまな経験ができると思います。
高崎経済大学 地域政策学部
地域の観光マーケティングについて研究できるので。
地域政策学部は、法律についても学ぶとのことなので、自分の希望に近い学部として決めました。