46億年前に誕生した地球の謎を解き明かし、さらに温暖化やオゾンホール、エネルギー問題など、地球の未来を左右する自然現象の問題解決をめざす学問が、地球科学です。地層や化石、気象、生物を手がかりに、地球という存在そのものに焦点を当てます。また、地震・津波・火山噴火・竜巻などの自然災害の現象の解明や防災にも寄与することをめざします。
研究のスケールは大きく、地球の誕生から現在までのすべての事象が対象となります。基礎科学の分野としては、地質学、岩石学、鉱物学、気象学、地震学、地球物理学、自然地理学などがあります。また応用分野としては、地球環境科学、天然資源開発、防災地学、さらに、太陽や月、宇宙空間を対象とする地球惑星科学などがあります。研究では実験のほか、現地での野外調査や観測によるデータ収集なども重視されています。
多くの人が大学院へ進学した後に、環境計画・都市計画関連、エネルギー関連、土木・建設関連企業などで専門職に就きます。IT関連企業や製薬会社への就職も目立ちます。公務員になり、国土交通省や気象庁などで働く人もいます。
東京海洋大学 海洋資源環境学部 海洋資源エネルギー学科 教授 中東 和夫 先生
日本周辺の海域では巨大な地震がたびたび発生し、深刻な被害を与えています。残念ながら地震は止められませんが、地震発生のメカニズムや揺れの特性などを明らかにできれば、被害の抑止につながるでしょう。そのためには、地球の内部構造がどうなっているかを知ることが重要です。地球の表面は約7割が海水に覆われているため、海底下での調査も欠かせません。しかし、海底を深く掘って内部構造を調べることは不可能です。そのため、地震波の伝わり方で内部構造を探る方法が採られています。
例えば、地下構造の固いところは地震波が速く伝わり、逆に軟らかいところはゆっくり伝わります。この伝わり方の違いを調べることで、地下構造を知る手掛かりが得られます。しかし、自然地震はいつ発生するかわからず、また、発生場所もわかりません。そのため自然地震だけではなく、人工的に地震波と同じ衝撃波を海中で起こし、その振動がどのように伝わっていくかを観測し、地下構造を調べることもあります。
海底では電源・電波を使えず、海水の高い圧力に耐える必要もあるので、特別な観測機器が必要になります。このような観測機器の開発や改良も進められています。
地球の内部構造については解明されていないことがたくさんあります。近年の研究では、地震の発生に水が関係しているのではないか、ということがわかってきました。これは、プレートが沈み込むときに海水も取り込んでしまうため、水の影響で地下の構造が変質した場所で地震が発生しやすくなっている、というものです。このような地球内部への海水の取り込みは、これまでの予想より速いペースで進んでいるという調査結果もあり、海の水は6億年後にはなくなってしまうかもしれない、という予測も出されています。
地球の内部構造を知り、過去から現在まで地球がどのような変化を遂げてきたのかを明らかにすることは、地球の将来を考えるうえで重要なヒントになるのです。
立正大学 地球環境科学部 地理学科 教授 島津 弘 先生
身の回りにある自然は、どのようにしてできたのでしょうか? 例えば山や川の成り立ちは、それらの形成に密接に関わる土砂の性質と移動の仕方にあらわれます。つまり、土砂の性質や流れ方について調べれば、山や川がどのようにしてできたのかがわかるのです。
まず調べるのは、河原にある石の大きさや形です。どんな大きさ・形か、それがどういう割合で混じっているのかを調べます。それから谷や河原、山の斜面の地形の関係を見ていきます。過去に蓄積された土砂の動きに関する物理的な研究や地形研究も照らしあわせながら、どんなふうに土砂が動いたのかを分析し、地形のでき方を明らかにします。
また、土砂の流れ方は大きく分けると3通りあります。重力の作用だけで動くもの(山崩れ)、川の水が流れることによって動くもの、そして重力と水の流れ両方によって動くもの(土石流)です。川の水が石を運ぶ場合、当然石の大きさよりも川が深くなければ運ぶことができません。つまり、石の大きさから洪水時の川の深さを知ることもできます。このように地形とあわせて石の大きさを調べることによって、石の動き方だけでなくその場所の環境も知ることができます。
地面の傾斜と土砂の動き方や土砂の動きでできる地形の関係を用いて、土砂災害・洪水ハザードマップ(防災・被害予測地図)をつくることもできます。ハザードマップがあれば、どこでどのような土砂崩れが起きるか予測できるので、状況に応じてさまざまな対策を立てることができ、土砂崩れによる被害を防いだり、抑えたりすることができます。また樹木の樹齢を調べていくと、過去にいつ土砂が流れたのかがわかる場合もあります。
山や川の成り立ちは、人間との関わりのなかで考えれば、土砂災害、河川災害を考える糸口になりますし、そこに生えている植物などと結びつければ、自然のでき方や美しい風景のでき方にも理解が広がっていきます。
横浜国立大学 都市科学部 環境リスク共生学科 教授 山本 伸次 先生
地球は、ほかの惑星と同じように隕(いん)石がぶつかりあってできたものです。しかし、その後どのようにして今の地球の姿になったのかは、多くの謎に包まれています。特に、生命が誕生する前の時代には、遺跡も化石もありません。ではどうやったら人類や生物が誕生する前の地球の様子を知ることができるのでしょうか? その手がかりは、岩石や鉱物の中にあります。いつ海ができたのか、大陸はいつからあったのか、いつどこで生命が生まれたかなど、岩石や鉱物はさまざまなことを教えてくれます。
例えば、いつ頃大陸ができたのかは、ジルコン(ZrSiO?)という鉱物を調べることでわかります。ジルコンは大陸の元となる花崗岩(かこうがん)に多く含まれる鉱物です。ジルコンは、その中に含まれるウランと鉛の比を調べることによって、それがどの時代にできたジルコンであるかわかります。つまり、ジルコンができた年代がそのまま大陸ができた年代であると言えるのです。その調査から、少なくとも44億年前には大陸があったことがわかっています。地球ができたのが約45.6億年前なので、かなり初期から大陸があったということになります。また、花崗岩の形成には水が必要なので、大陸ができた当時にはすでに海があったのではないかとも考えられています。
ほかにも、ジルコンからはいろいろなことがわかります。例えば、ジルコンの中に不純物として炭質物が入っていることがあります。炭素の同位体比からは、生物が関与していたかどうかがわかります。生物は軽い炭素を取りこむので、炭素12と炭素13の比をくらべて、12が多い場合は生物が関与していたとわかるのです。また、ジルコンに含まれるわずかな磁鉄鉱から、地球の磁場がどう変化したのかもわかります。さらに、まれに入りこんでいる少量の水からは、当時の海や大気の組成などもわかってしまうのです。
富山大学 都市デザイン学部 地球システム科学科 教授 安永 数明 先生
あなたは、どんな天気が好きですか? 一般的に「晴れ」を「天気が良い」、「雨」を「天気が悪い」と表現しますので、晴れが好きな人が多いのかもしれません。でも、そんな「良い天気」も長く続くと渇水などの問題を引き起こしますし、「悪い天気」も水不足のときには恵みの雨として重宝されます。ですから、どちらも「ほどほど」であることが大事です。しかし「ある天気」が、時として集中的に現れたり、年々少しずつ増えてきて、気がつくと「ほどほど」を超えていたりすることがあります。このような時、大気では何が起きているのでしょうか?
北陸を中心とした日本海側の地域では、12月の降水量がこの約30年間で1.5~2倍に増加しています。日照時間も減少していますので、この地域の12月には悪天が「ほどほど」を超えて多くなっていることになります。
冬に日本付近では「西高東低」とよばれる気圧配置により、北西の季節風がふきます。この風が、暖かい日本海で水蒸気を吸収しながらやってくることで、日本海側の地域では雲が発達し、多くの降水がもたらされます。この事実から考えると、悪天の増加は上流である日本海に何か関係がありそうに思われます。しかし原因は、日本から遠く離れたインド洋の雨にあることがわかってきました。実はインド洋の12月の降水も、この約30年間で1.5倍程度に増えています。その影響によって日本付近で低気圧が発達しやすくなり、降水の増加や日照の減少につながっていたのです。
ここで取り上げた遠く離れた場所の天気のつながりを、気象学ではテレコネクションとよびます。2018年夏の猛暑も、フィリピン付近の降水やユーラシア大陸の偏西風の変動に関わりがあったことが指摘されています。こうしたつながりは、ある場所の天気の原因を考える際に、その周囲に目を向けるだけでは不十分で、地球スケールの視点が必要であることを教えてくれます。
京都大学 理学部 地球物理学教室 教授 田口 聡 先生
空を見上げると、太陽があり、雲が浮かんでいます。地球の近くにある雲と、ずっと遠くにある太陽との間は、いったいどうなっているのでしょうか。雲と太陽との間には何も存在しないように思えますが、実はダイナミックなことが起きています。
地球と太陽との間の宇宙空間で起こっている現象を物理学的にとらえて研究するのが「太陽地球系物理学」です。この領域で唯一目に見える現象はオーロラです。オーロラを詳しく調べると、地球周辺の宇宙空間で起こっているいろいろなことがわかってきます。
地球は巨大な磁石になっており、地球から宇宙空間に伸びた磁力線に沿うさまざまな道筋で、太陽の表面から放出された「太陽風」のプラズマが地球の近くにまで入ってきます。このとき、プラズマの中の電子が地球の大気に当たって、酸素原子などが光を出します。これがオーロラです。
オーロラは高度約100kmから約500kmの希薄な大気の中で、地球の磁石の極をほぼ中心にしてドーナツ状に光っています。一般によく見られる緑色のオーロラは、電子がやってくる途中で十分にエネルギーをもらって大気に当たった結果です。これに対して、電子が低いエネルギーに集中していると赤いオーロラを光らせます。太陽風プラズマが入りやすい地球の磁力線の穴のような領域から、そのような特徴をもった電子がやってきます。赤いオーロラを調べることで、太陽風プラズマが直接的に入り込んでくるメカニズムの情報がわかるのです。
ノルウェーのスヴァールバル諸島に設置した観測装置によるデータから、赤いオーロラの現れ方に想像を超える大きなムラがあることが明らかになっています。また、赤いオーロラが光る場所の大気が暖められて大きく上昇していることもわかってきています。赤いオーロラはなぜ激しく変化するのか、なぜ低いエネルギーの電子が地球の大気をそんなに上昇させるのか、そのプロセスについての研究が現在進められています。
フィールドワークの機会が多く、自分がやりたい「まちづくり」について学ぶことができると考えたから。
環境、気象関係の勉強がしたく志望しました
専門教科を一年から勉強ができるため
フィールドワークが多い、さまざまな分野の科目を学べる
気象について学べる数少ない大学だから
地球システムという、やりたい学部があり、同じ北陸地方で近いのも利点。
数学、物理を学びたく、より良い環境が揃っていると感じたから
研究設備、環境、指導者が揃っていて、かつ自由で刺激的な校風に惹かれて選びました
東京海洋大学 海洋資源環境学部
日本のエネルギー事情を変える事ができる海底資源探査に関わる事が出来るから。
なによりも海洋に関して大学全体で取り組んでいるのがよかった。