建築学は、芸術と融合した科学として、機能性・快適性・強度・安全性、環境に合ったデザイン性などをそなえた建物を造る知識と技術を研究する学問です。建物の設計やデザイン面が注目されがちですが、最近では防災という観点から、耐震性・耐火性・耐久性など、その構造の強度や安全性も特に重要な要素となっています。
「計画系」は、建築設計を軸に、建築史や建築計画、都市開発など、建築物や街のあり方などを研究します。「構造系」は、防災の観点から建物の耐震構造や建築材料の性質や強度などの具体的な技術や材料について学びます。「環境系」は、建築物と光、音、空気、自然環境などとの関係を研究します。建築物の設計には、これらのそれぞれの分野の総合力に加えて、空間表現力、デザイン力などが求められます。
ゼネコンや設計事務所に就職して、設計や構造計算、現場での施工・管理に携わったり、官公庁の都市計画に関わる職種などでの活躍が期待されています。建築士をめざす人も多くいます。広告や金融、不動産関連に就職する人もいます。
福井大学 工学部 建築・都市環境工学科 教授 明石 行生 先生
国際照明委員会(CIE)において、高齢者・弱視者のための屋内照明のガイドラインがつくられました。高齢者は、年齢を重ねるにつれて瞳孔が小さくなるなどの理由により、通常の1.5倍から2倍の明るさが必要です。また、コントラストを強める必要もあります。例えば、階段をシックな黒にしてしまうと段差が見えにくいので、踏み面の端の段鼻に線を引くなどの工夫が必要です。ガイドラインは、視覚の加齢変化の研究成果と弱視者へのインタビューに基づいてまとめられています。これまで空間は平均的な視力の人に合わせてつくられてきましたが、今後は視覚的弱者に適応できるようにする必要があります。
光がヒトの視覚に及ぼす影響に関する最近の研究では、ヒトの目にはいろいろな光センサーがあることがわかっています。明るいところで働くセンサー、暗いところで働くセンサー、生体リズムのセンサーなどです。それらはそれぞれ波長に対する感度が違います。
そこで、空間の用途とヒトの視覚に応じて波長ごとにエネルギーの量を調整する光源が開発されました。例えば、夜間の街路で明るく感じられる光源をつくりたいのであれば、夜間の暗い場所で働くセンサーの感度は青緑の波長で高いので、それに合わせて青緑に光る蛍光体を加えて光の波長成分を調整するのです。
建築物や都市空間において、安全で快適かつ健康に暮らせる光環境を創造することが求められています。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を活用することで、光量や光の種類などの自動調整ができるので、その可能性は広がっています。
例えば、和ろうそくの炎が伸び縮みする大きなゆらぎと炎の色のグラデーションをLEDにより再現した行灯(あんどん)が開発され、地域のお寺や観光施設でも使われています。使う人や、状況に応じた光をつくり出し、新技術を活用して使いやすい照明器具として具現化することが必要なのです。
島根大学 総合理工学部 建築デザイン学科 教授 細田 智久 先生
建築学には構造学や意匠学など、さまざまな分野があります。その中で建築計画学とは、その空間に集う人々による「使われ方」を追究する、と言えばわかりやすいでしょう。
日本では急速な経済成長を契機に、どの地域でも同じような大量の建物が建てられてきました。住宅以外にも、学校や病院、図書館、高齢者施設といった地域の公共施設がありますが、少子高齢化や地方の過疎化といった問題が注目される現在、これらの「使われ方」の知見を集めた地域施設計画が求められています。
例えば、子どもの数が減った地方では、学校の統廃合、小中一貫校としての再編などが進んでいます。また、両親の共働きで学童保育の需要が増えたり、文科省の政策で放課後や週末の教室の活用の取り組みが始まっています。
急増している高齢者施設では、高齢者の送迎スペースやバリアフリーの確保、現場の要望に沿った動線や部屋の配置を考えなければなりません。図書館なら、利用したくなる造りを年齢層ごとに考えます。いずれも実際のニーズと使われ方を参考に、より現実的で効果的な工夫をすることが必要です。
建物には、地域ごとの特性もあります。雨が多くて寒い地方では、人は屋外にあまり出ないので、屋外施設が宝の持ち腐れになることがしばしばあります。どこに建てるかという立地条件も重要なのです。
古くから建築には「用・強・美」という言葉があります。建築は用(機能)と強(構造)と美(美しさ)という三要素があり、どれが欠けても価値を失うという意味です。
しかし美しさの価値観も時代によって変わります。かつてはポストモダニズムといって、既存の価値観を破壊するものがもてはやされました。今はエコロジーが重視され、地域の木材などを豊富に使う工法が流行しています。つまり正解は一つではなく、その内容は時代によって刻々と変わるものなのです。ニーズの変化に対応しながら、社会や人にやさしく寄り添う建築が求められます。
山口大学 工学部 感性デザイン工学科 准教授 桑原 亮一 先生
地球温暖化を防ぐために、二酸化炭素の削減に多くの国が取り組んでいます。日本もパリ協定で2030年度までに2013年度比26%削減することを目標としました。これを実現するためには、省エネや再生可能エネルギーを利用して化石燃料の使用を抑えることが必要です。しかし建築分野では、エネルギー消費が全体の約3割を占めるにもかかわらず、消費の削減が進んでいないのが現状です。そのため、政府も建築分野のエネルギー消費4割削減を目標としています。
建築分野のエネルギー削減が進まないのは、古い建築物が多いためです。今注目されているのが、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)という考え方です。これは、省エネや再生可能エネルギーの使用でランニングコストをゼロに近づけるという考え方です。
太陽光パネルを設置して、昼間は太陽光で発電された電気を利用し、余った電気は充電します。充電された電気は夜間に使用し、電気自動車のバッテリーに充電することも可能です。また、太陽熱を利用する省エネ対策では、家庭用として太陽熱利用の給湯器を利用します。ビル用では、空気中の水分を除湿剤で除去して空調を行う「デシカント空調機」があります。これは太陽熱を利用することができ、冷媒を用いた通常の空調機に比べ格段にコストを抑えることができます。
建物そのものの省エネ性能を高める方法もあります。断熱材を利用したり、窓をペアガラスにしたり、サッシをアルミではなく熱伝導率の低い樹脂製にすることで、冷暖房の使用を抑えることができます。これからの技術としては「デマンドレスポンス」があります。通常、電気の供給調整は供給側で行われていますが、デマンドレスポンスはITを利用して空調の設定温度を調整したり、需要側にある充電器などを共有したりすることで、需要側で電気利用が急激に高まるピークの電力を低くするというものです。
近畿大学 産業理工学部 建築・デザイン学科 准教授 小池 博 先生
求められる設計デザインは時代とともに変化しています。バブル時代は個性を発揮したユニークな設計デザインが尊重されました。しかし、現在は地域の特性や周囲の環境、住んでいる人の文化や歴史を受け継いで、そこから新しい価値を生み出す設計デザインが重視されています。建物の形という「モノ」への関心から、社会や文化、歴史という「人」への関心に、建築設計の中心が移行しているのです。
建築設計では、地域によって建ぺい率や色、高さなどの数値規制があります。これらは既存建物と調和させ、住みやすさを阻害しないように決められたルールです。しかしそれだけでなく、美や機能性といった定性的な要素も緩やかに規制しようという動きがあります。その主体となるのは地域住民です。住民が話し合ってルールを決め、ビルのような大型建築物だけでなく個人の住宅もその規制に従うことで共有の財産となる街並みが形成されます。人の流れを左右する路地、窓のリズム、外壁の素材、建築要素の基線などを調和させたり、あえて変化させたりすることで新しい美や機能性を持った街並みをつくり、地域全体の住みやすさ、心地よさをめざそうとしているのです。
建物の構造も、より長く使えるように、また多彩な利用法に対応できるように、可変的・可塑(かそ)的なものにする試みが行われています。従来の建物は、最初から部屋と機能が1対1に対応していました。しかし使用目的を限定せず、床レベルやマテリアルなどの差異を設けるだけで、利用法は利用者に任せる設計が出現しています。
このような新しいまちづくり、新しい設計で重要になってくるのが、コミュニケーション能力です。設計能力だけでなく、定性的な要素をわかりやすく説明するための技術、例えばVR(仮想現実)技術や、事例から特徴を見出す統計技術、定性的要素を見える化するシミュレーションなど、新しい対話のためのスキルが必要になっているのです。
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一級建築士の資格を取るため。
1年生の時に建築、土木、測量などさまざまな経験ができることはいいことだと思ったから
自分のやりたい研究が盛んに行われているから
自分の学びたい建築の分野の授業が充実していて、夢の実現に大きく近づくことができる場所だと思ったため。
建築について感性について関連付けて学べるから
自らが希望する社会インフラについて学ぶことができる
学際的な勉強ができる。
九州にある私立大学で、建築デザインが学べ、知名度も高く、就職率が良いからです。
東北工業大学 工学部
エネルギー工学や環境問題などについて勉強するため
建築士になるためのカリキュラムが整っていることに魅力を感じました