土木工学は、社会と暮らしを支えるための学問で、道路・鉄道・橋といった交通施設、発電所などのエネルギー施設、河川海岸の堤防やダム、上下水道やガスなどのライフラインを構築する技術を研究します。建設のための技術だけではなく、その前提となる計画・調査・設計の知識や、建設後の管理・運営の技術や知識も習得します。土の力学的性質を学ぶ土質力学、水の流れに関する力学について学ぶ水理学、地盤力学などの基礎的な知識も必要とされます。
環境工学は、自然環境と人間生活との調和を図りながら社会システムを形成することをめざす学問です。居住環境の問題から都市環境、さらに地球環境の問題までが研究対象となります。工学的な知識はもちろんのこと、社会学的な知識など幅広い視点からのアプローチが求められます。環境との調和は、今後も人類の大きな課題といえます。
ゼネコンで公共工事などに関わる人が大半です。鉄道・不動産・コンサルタントといった業種でも知識と技術を生かせます。環境工学の場合は、土木工学と同じ分野のほか、上下水道整備を請け負うコンサルタント会社などに勤める人も多くいます。
東北文化学園大学 工学部 建築環境学科 教授 須藤 諭 先生
近年、大気の状態が不安定になり、短時間で大雨を観測することが増えています。局地的かつ突発的に発生するため「ゲリラ豪雨」とも呼ばれるこの現象は、ヒートアイランド(都市高温化)が大きく影響しています。
国内では20世紀半ばごろから課題として認識されるようになったヒートアイランドには、地球温暖化だけでなく、建物のエネルギー消費が大きく関わっています。空調や照明、冷房、エレベーターなど、建物でエネルギーが使われた結果生じた熱が建物の外に放出され、それが周辺環境の温度を上昇させ、熱的汚染となるからです。都市のように建物密度が高い場所ほど、その兆候は顕著に表れ、また近年は地方都市の高温化も加速しています。
建物の消費エネルギーを減らすために、建物がどのくらいのエネルギーを使用しているのかを調べ、数値化する取り組みが行われています。建物で消費されるエネルギーを計測・調査し、その平均値を基準とする「エネルギー消費原単位」を、建物のエネルギー消費性能の評価指標にすること、また省エネルギー推進の指標として活用することは、改正された省エネルギー法にも明記されています。緑化推進を条例で定めて対策を進めている地域もありますが、「エネルギー消費原単位」データを活用し、建物の省エネルギー化をめざすためにも、全国規模でデータ整備することが必要です。
冷暖房の設定温度を抑えるなど、意識的に省エネに取り組む人が増えていますが、継続の秘訣は無理をせず、快適さを保つことです。照明をLEDにするなどの基本的な対応はもちろん、建築設備の性能向上などを含め、今後は建物自体の消費エネルギーをさらに減らす対策が必要です。また災害が発生した際、建物内の配管や配線に不具合が生じライフラインが遮断されないよう、防災・減災も含めた建物の設備設計の性能向上も、今後の大きな課題です。
埼玉大学 工学部 環境社会デザイン学科 教授 川本 健 先生
現在、開発途上国は多様な環境汚染問題を抱えています。被害がわかりやすい大気汚染、水質汚染については、以前から対策が講じられてきていました。しかし土壌汚染に関しては、実態が見えにくい面があり、対策が遅れています。途上国の経済成長にともない、ゴミ問題も深刻化しており、処理しきれず処分場に放置された有害廃棄物からの汚染物質などにより、土壌や地下水の汚染が進行しているのです。
日本は、環境問題に直面している途上国に対して、技術的な援助を行っています。例えばベトナムでは、都市部の開発が進み、建設ラッシュが起こっていますが、同時に、解体された建築物の廃材処理が問題となっています。大都市では1日3000トンもの建設廃棄物が発生し、処理能力を超えてしまっています。それらをリサイクルし、道路の路盤材など、新たな資材として再生するという計画が進んでいます。また、軽量気泡コンクリートは多孔質な構造をしていて重金属を吸着する作用があるので、廃材を水質汚染の改善に利用できます。ベトナムでは、こうした対策の下、2025年までに建設廃棄物リサイクル率60%の実現を目標としています。そこに、日本が技術と経験を生かして協力しているわけです。
しかし、本当に大事なのは、自国の技術で処理していけるような仕組みづくりをすることです。まずは、「低コスト、低メンテナンス、低環境負荷」で成立するようなビジネスモデルを構築する必要があります。
そのためには、ゴミ処理やリサイクルのガイドラインづくりにあたっても、日本のガイドラインをそのまま適用するのではなく、現地の実情に合い、定着するようなものを、現地の人たちを中心に作っていくことが大切です。自国の人たちが自国の技術で継続していけるリサイクル、それは、地域のゴミを地域内で処理するという「ゴミの地産地消」につながっていきます。
横浜国立大学 都市科学部 都市基盤学科 教授 細田 暁 先生
あなたは「土木」と聞くと、道路工事や橋の建設を思い浮かべるかもしれません。土木というとそのような「もの」に目がいきがちですが、実はもっと大きな意味があります。そのような1つひとつのものづくりを通して、国土をつくり、国をつくっていくことそのものが土木なのです。そしてその目的は、世を治め困っている民を救う、「経世済民(けいせいさいみん)」です。土木とは、この国をよくしていくためにはどうすればいいかを考えて実践する学問なのです。
具体的な例を見てみましょう。例えば、南海トラフ地震と呼ばれる大きな地震がくると言われています。この地震が本当に来た場合、地震による建物の倒壊や、津波によって多くの被害が出るはずです。その場合の日本の被害総額は、巨大な地震が発生した場合は少なく見積もっても1,400兆円と言われています。しかし適切な対策をとることで、被害は減らすことができます。このような災害に対し、どのような対策をとればいいかを考えるのも、土木の重要な役割なのです。その意味では、土木は防災の考え方と近いところにあります。
また、日本の交通網が首都圏に一極集中していることも、土木の考えるべき課題です。首都圏に交通インフラが集中することで、人口が首都圏に集中し、結果として地方が過疎化し、疲弊していきます。実際、東日本大震災で被災した東北の沿岸部には、新幹線も通っておらず、高速道路もありませんでした。そこへ大津波が襲い、さらに痛手を負ったわけです。そこで、改めて東北の交通が見直され、復興道路がつくられることになりました。このように、社会の中にある偏りを是正するマネジメントも、土木の役割です。
ちなみに、東北の自動車道には、冬になると凍結防止剤がまかれます。この凍結防止剤が鋼を腐食させ、コンクリートを劣化させる原因になります。そのような凍結防止剤に強い道路をつくる技術を開発するのも、もちろん、土木の役割です。
西日本工業大学 工学部 総合システム工学科 土木工学系 教授 高見 徹 先生
昔、川は子どもたちの格好の遊び場でした。しかし、氾濫防止などのために各地で護岸工事が進められ、魚釣りもできず、落ちたら自力でははい上がりにくい河川が急増しました。そして、人々が水辺に近づかなくなった結果、水の汚染やゴミの散乱が放置され、自然環境や景観を保つ河川が少なくなってしまいました。
その反省から、国土交通省は、河川における生物の生息環境や景観を保全する「多自然川づくり」政策を推進しています。ところが、人々が再び水に親しみ始めたことで、新たな問題が浮上してきました。それは病原性細菌への感染です。
河川には、大量の生活排水や産業排水が流れ込みます。もちろん、各地の下水処理施設で浄化されるのですが、殺菌しきれずに放流されたり、ごく微量の菌が川や海の中で増殖したりする可能性が指摘されています。
特に多く見られるのが糞便(ふんべん)性の大腸菌で、水辺にいる人が毒性の高い菌と接触することで、感染症や疾患を引き起こす恐れがあります。そこで、「環境衛生工学」分野で研究が進んでいるのが、AI(人工知能)を活用した水辺におけるリスク予測です。
各自治体が、川や海岸の水質検査を数十年前から実施しています。ただ、それらの検査は、いろいろな種類の菌をひとまとめにした「大腸菌群」の密度を計測するものなので、毒性のある菌がどれくらい含まれているかがわかりません。また、細菌の培養には約1日かかりますから、リアルタイムな警告を出すのは困難でした。
そこで、過去のデータに加え、各地で計測した最新データをあらかじめAIに学習させ、気温や水温、水質、その地域の人口や下水道普及率、上流域の地形などの環境条件から発生するリスクを予測しようという取り組みが行われています。研究が進めば、人々がより安全に自然と触れ合えるようになるほか、河川整備の際も、細菌が繁殖しにくい川の環境を提案することができるでしょう。
琉球大学 工学部 工学科 社会基盤デザインコース 准教授 下里 哲弘 先生
「道」は生活や経済活動を支える重要な社会基盤です。人体に例えると栄養と酸素を運ぶ血管にあたります。そして道が、河川や渓谷などで途切れないように建造されたのが「橋」です。日本には約70万基の橋がありますが、その多くは1960年代の高度経済成長期に造られたものなので、続々と築50年以上の高齢化施設となっています。加齢で傷んだ箇所を放置すると重症化(=通行止め)の危険性が増すため、橋を長寿命化させるには、橋の傷んでいる箇所を正確に診断する「橋の医者」が必要です。
私たちが重大疾患を予防するために定期健診を受けるのと同様に、橋にも5年に1度の定期点検が義務づけられており、橋の裏側のコンクリートや鉄筋に、ひび割れや腐食などが発見された場合、適切な修繕を施さなければなりません。
ただ、橋の損傷は立地や形状、自動車通行量などによって異なる上、外見だけではわかりにくい劣化や、どんな修繕が必要か判断しにくいケースもあります。橋の場合、高度な診断ができる「専門医」の数が少なく、さらに財政面の問題も加わって、精密検査や治療が受けられない橋が少なくありません。「橋の専門医」を増やすため、土木工学分野を学んだ人材が求められています。
橋も建築物だから、「土木」ではなく「建築」の分野では?と、疑問に感じたかもしれません。では、和英辞典で、土木工学を調べてみてください。英語では「Civil engineering」で、つまり土木工学は「市民のための工学」なのです。
まちのグランドデザイン(全体構想=都市計画・地域計画)を策定し、道路、橋、トンネル、公園などの社会基盤を造り上げる仕事は、「建築」ではなく、「土木」の役割です。あなたが将来、まちづくりの分野で活躍したいと考えているなら、都市計画学・構造力学・水理学・土質力学・建設材料学など土木分野の知識がなければ、公共建造物を造り、さらにはその公共建造物を守ることはできないのです。
建築の分野も環境の分野も学ぶことができるから
自分の研究したい内容の研究室があり、キャンパスが一つにまとまっていることで他学部との交流も可能だから。
建築を学ぶための環境に恵まれており、講師陣が豪華で良いと思ったため。
環境の研究がしたかった。専門性の高い学部が設置されていた。
施設や大学が新しく学びやすい環境。
測量士補をはじめ、様々な資格を取得できるのでこの大学を選びました。
送料とも無料
発送予定日: 本日発送発送日の3〜5日後にお届け
長期留学ができるグローバルエンジニアプログラムを受けることができます。
建築士になりたいと思い、沖縄の気候を活かした建築をやっていきたいので
東北文化学園大学 科学技術学部
学習環境が充実している
福祉住環境コーディネーターや二級建築士の受験ができるから