さまざまな材料について、化学の知識をベースに、その構造・機能などを工学的に研究し、新機能を発見したり、新しい材料を開発したりする学問です。対象は半導体材料やセラミックス、燃料電池や超伝導の材料、磁性材料、いろいろな機能を持つ合金、医療分野で使われる人工の骨や血管などの生体材料までと幅広く、ほかの分野の発展にも重要な役割を果たしています。
材料の開発にとどまらず、製造プロセスから加工技術の開発、実用化のための研究までが研究領域となります。航空機にも使われる軽量で強度の高い炭素繊維や、伝導性に優れ強度も高いカーボンナノチューブなどの新材料は、既存の材料と置き換えることによって新たな可能性を生み出しています。環境との調和の観点からも、高機能、省エネルギーで、環境に負荷の少ない材料の開発が求められています。
製鉄・非鉄金属会社、商社の鉄鋼貿易部門などで、従来から即戦力として期待されています。最近は多種多様な産業分野で技術の複合化が著しいことから、電気・機械・自動車・繊維・石油・化学といった業種の企業に就職する人も少なくありません。
金沢工業大学 工学部 先進機械システム工学科 ※2025年4月開設 教授 加藤 秀治 先生
金属部品が擦れあうエンジン部品には摩耗を低減するため、硬い焼き入れ材料が使用され、環境が高温になるロケットエンジンの部品には耐熱合金材料が使用されています。部品には用途に応じた材料特性が必要ですが、所定の形状にするのが難しい材料が多く使用されます。そのため、素材や形によって工具や加工機を使い分けます。削ったり磨いたりして工業製品を作る「除去加工」で求められるのは、部品を早く、高い精度で加工することです。金属、樹脂、セラミックなど素材の特徴に対して、それぞれ性能の良い工具が必要です。
エンジン部品では、素材の焼き入れ鋼と工具を共に回転させながら切削する「ロータリー加工技術」を搭載した工作機械の開発で、研磨するより加工時間を大幅に短縮できました。こうした新しい加工技術で小型で性能の良い部品ができ、エンジンを小さくすることも可能になったのです。
また、体内で使用される医療用品には素材として高い精度と強度だけでなく、体との適合性も必要です。歯科のインプラント治療で歯根に使われる特殊チタニウム合金では、先端がボールのような形の工具によって微細な加工が可能になりました。加工時の温度の変化で表面の性質が変わるのを抑え、人体に優しい製品を作ることに成功しています。
メーカーは消費者の要望に合わせて次々と新しい製品を開発しています。最近はデザインや機能が多様化し、同一のものを大量生産するのではなく、種類も数量もその時々に合わせて変化する「変種変量生産」の時代になりました。このような背景から、加工の精度を上げ、コストを削減し、効率化を図ることが求められています。
新しい加工技術や工具の開発は、消費者からは見えませんが、ものづくりを支える大切な「縁の下の力持ち」なのです。この分野では、工具の開発に合わせて工作機械の開発も必要になり、工作機械の研究者と協力しながら、課題解決に向けて研究が行われています。
広島大学 工学部 第一類(機械・輸送・材料・エネルギー系) 教授 佐々木 元 先生
100年前と比べると、私たちの生活はとても便利になりました。飛行機や自動車、家電製品やスマートフォンは目覚ましい発展を遂げ、現代人にとって不可欠なものとなっています。現代社会を支えるこれらの製品は、その高度な性能を実現するために、ソフト面だけでなく、使用される材料にも進化が求められてきました。そしてこの材料について、原子レベルでの研究が進められています。
現在の材料開発では、材料の結晶構造を解析し特性を向上させる研究、そして、新たな特性を材料に加えた複合材料の設計や開発が主流となっています。まず解析では、材料の特性はどのような元素が関係して決まっているのかを解き明かし、個々の要素の物理現象を分解していきます。こうして特性向上のメカニズムが明らかになると、さらに優れた性質を持つ材料の設計や開発を進めることができるようになります。
また、鋳造や焼結といったプロセスを経て、材料に多様な特性を加え、複合材料を作る研究も行われています。複数の特性を混ぜ合わせたことで起こる反応を制御できれば、これまでになかった特性を持つ材料を設計し開発することも可能になります。最近では、温度に対する材料の性質を管理する「サーマルマネジメント」にも注目が集まっています。
機械製作においても材料開発においても、材料の評価から製造までのすべてを理解していることは、実社会でのものづくりにおいて非常に有用です。強度や硬さで示される数値だけで材料を理解するのではなく、一定の環境下では劣化する特性を持つことを知るなど、複合的な性質を持つ生き物のように材料をとらえる視点が必要だからです。そして、機械の性質を材料の特性から考える視点は、今後のさらなる高集積化と高機能化に向け、これまで以上に必要とされるはずです。
九州工業大学 大学院生命体工学研究科 生体機能応用工学専攻 教授 宮﨑 敏樹 先生
病気やけがで骨や関節が激しく損傷した場合、人工的な器具で治療することがあります。代表的なものに「人工股関節」「人工膝関節」があり、病気やけが以外にも、加齢によって関節の軟骨がすり減ったり、変性したりした高齢者が人工関節の埋め込み手術を受けるケースが増えています。
人工関節は、金属の支柱を骨に埋め込んで固定しますが、年月が経つと、骨と支柱との接着が緩んでくることが問題です。金属と生きている骨とを瞬間接着剤のような素材でくっつけるのですが、剥(は)がれてしまい、長期間ガッチリと結合させるのは困難なのです。
人工関節と骨との結合が緩みすぎると、再手術して接着し直さなければなりません。そこで現在、リンやカルシウムから作る「アパタイト」というセラミックス系の材料を、人工関節の支柱表面にコーティングしたり、接着剤の材料として活用したりする研究が進んでいます。
アパタイトは、構成成分が骨や歯と非常に近い素材です。そのため骨との親和性が高く、まるで折れた骨が時間とともに再生するように、骨がアパタイトを骨の仲間だと勘違いして結合するのです。人工関節の結合だけでなく、歯のインプラント治療や骨そのものの治療などでも、アパタイトの応用が研究されています。
ただ、骨と結合しているアパタイトのコーティングが剥がれてしまうと、人工関節を固定できなくなります。また、「骨や歯と非常に近い」とは言え、やはり人工の素材ですから、合成する際にさまざまな化学物質を使用します。その中に、毒性や発がん性が懸念される物質が混じっていると、体内に入れることができませんから、細胞実験などを繰り返して安全性を十分に確認しなければなりません。
まだ多くの課題が残っている研究領域ですが、研究が進めば骨だけでなく、再生させるのが困難な軟骨の代替素材なども開発できるかもしれません。
佐賀大学 理工学部 理工学科 化学部門 准教授 坂口 幸一 先生
将来、自動車や飛行機の部品、コンピュータの電子回路などが、「鉛筆の芯」から作られるようになるかもしれません。鉛筆の芯の原料は黒鉛ですが、黒鉛は層状であり、構成する1枚あたりの層は「グラフェン」と呼ばれています。グラフェンは、あらゆる物質の中で最も速く電子や熱を通し、平面状での炭素原子の結合はダイヤモンドよりも強固です。さらに、安定した物質の元素としては、トップクラスの軽さです。
したがって、半導体部品をグラフェンで作れば、コンピュータやスマホが大幅に高性能化できるほか、熱伝導用のさまざまな金属製品も、軽くコンパクトにすることが可能です。飛行機や自動車の骨格にグラフェンを使えば、現在のアルミやマグネシウムの合金よりさらに軽く、強度も高いボディを作ることができます。
グラフェンは、炭素原子が蜂の巣のような六角形格子構造で結合した、シート状の物質です。上述した素晴らしい特性を持っていることはわかっていますが、原子レベルの厚みのシートを取り出し、目的に合わせて加工する技術が確立されていません。
そこで現在、黒鉛を酸化して酸素を取り込ませた酸化グラフェンを取り出し、加工した後、還元してグラフェンに戻す方法が研究されています。グラフェンを「1枚のシート」として取り出せることがわかったのは、2000年代に入ってからなので、研究の発展が期待されています。
グラフェンは液体と馴染まない性質がありますが、インク状に加工すれば、電子回路を「印刷」することができ、電子機器の製造コストが大幅に削減できます。曲げることもできるので、人体に取り付ける医療用やスポーツ科学用のセンサー類にも応用できます。
冷蔵庫や靴箱の脱臭剤として用いられている「活性炭」も、炭素の加工品の1つですから、グラフェンを応用して超強力脱臭炭を作ることも期待できます。このように化学分野の研究は、まだ誰も見たことのないモノを創造する力を持っているのです。
安心安全の自動車づくりというのにとても力を入れておられるところに魅力を感じました。
色々な企業とも組んで少人数で取り組みたい研究などもできるみたいだから
送料とも無料
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原子力が学びたかったのと、留学制度が整っている所に行きたかったから。
中四国屈指の大きさと研究レベルの高さを知って充実した学生生活が送れると思ったから
ロボットの技術をリハビリや胃カメラなどといった医療の分野に応用し、人助けをしているという点についてとても魅力的に感じた。
研究環境、学生指導が充実しており、就職実績が良いため。
高校で学んだ知識をより深く学べる学部があり 環境も整ってる。
ゼミの内容をパンフレットを拝見し、その大学なら自分のしたい研究があったから。
東京大学 理科一類
様々な分野の先端研究が集まっていて面白そうな上、すごい人達が沢山いそうで刺激的だと感じたから
将来理学系の研究者になりたいので