農学は、作物の品質の向上や生産量の増加などに寄与してきた長い歴史を有する学問です。伝統的な品種改良だけではなく、遺伝子組み換えなどのバイオテクノロジーの導入による農産物の生産量の拡大や品質向上の探究も行われています。研究分野は幅広く、遺伝、育種、園芸作物、果樹栽培、土壌などの基礎研究のほかに、環境保全や都市計画分野、農業関連ビジネスや農産物の流通システムの開発なども対象となります。
農芸化学は、農学系の学問の中の一分野で、農作物の機能や栄養成分の研究、栽培土壌や肥料・農薬の研究、食品の加工技術の開発などの研究分野があります。その成果は食糧(食品)、医療、環境などの分野にも応用されています。生物学や生命科学とも関係が深く、環境保全や食糧問題に貢献できる学問です。
農業、造園、園芸・種苗のほか、農業資材や食品関連の企業に就職する人も多く、教職に就く人もいます。農芸化学系の就職先は、飲料・酒造、食品加工、医薬品分野が代表的です。バイオ産業の発展で、金融やコンサルタント業界でも需要が高まっています。
東北大学 農学部 生物生産科学科 教授 金山 喜則 先生
リコピンという成分を多く含む食品として人気のトマトは、種類も豊富に出回っています。近年は濃厚な甘みを持つフルーツトマトのような商品も増えています。これは品種が異なるのではなく、栽培方法を変えて作っているのです。通常のトマト栽培に比べて水分供給をできるだけ少なくする、といったストレスを与えると、実は小さくなりますが糖度がグッと上がり、ほかの成分濃度も高くなることがわかっています。しかし現時点では、糖度が上がりかつ実が大きくなるテクノロジーの開発には至っていません。
花束の脇役として欠かせないカスミソウは、自然環境の中では日長、つまり昼の長さが長くなると花が咲く長日植物です。こちらも、光の種類や長さなどを工夫して開花を促したりする長日処理によって、季節を問わず供給が可能になりました。今はいろいろな光を出せるLEDがこのような自由に花を咲かせる技術に使うことができます。しかしカスミソウを含むさまざまな花で、光の色によって早く咲いたり、遅く咲いたりする科学的なメカニズムにはわからないことが多く、研究途上の段階です。
野菜や果物、花などの園芸生産は、米や麦や畜産物などを含めた国内農業生産の約4割を占めています。栽培の技術開発が進む一方で、まだ明らかになっていない科学的メカニズムについての研究も続いています。どのようにトマトの糖や健康成分が増えるのか、なぜ花が咲くのか、という生命現象そのものを、遺伝子レベルの技術などを用いながら論理的に組み立てることができれば、よりおいしくて健康にいい高品質の野菜や果物を生産したり、従来は不可能だった季節や環境で生産を行ったりすることが可能になります。それは消費者や生産者に有益であるだけではなく、地域全体の産業振興に重要な役割を果たし、国内の食料自給率向上はもちろん、世界の飢餓救済にも貢献できると期待されています。
秋田県立大学 生物資源科学部 応用生物科学科 准教授 春日 和 先生
「放線菌」は土壌中に存在している微生物です。栄養分を与えて培養すると薬のもとになる物質をつくり出す性質があり、結核の特効薬として知られている抗生物質ストレプトマイシンは放線菌から発見されました。数ある放線菌の中から薬になる物質をつくり出す放線菌を見つけることは容易ではありませんが、今ではさまざまな抗生物質が医薬品として役立っています。
また放線菌は、一部の酵素をつくる菌として産業界でも利用されています。その1つ、グルコース・イソメラーゼという微生物酵素は、ブドウ糖を甘みのもとになる果糖にするため、清涼飲料水の生産に使用されています。
セルロース系バイオマスは、身の回りにある草や木に由来する再生可能な資源です。セルロース、ヘミセルロース、リグニンで主に構成され、このうちセルロースを分解して得られるグルコース(ブドウ糖)はバイオエタノールの原料にもなります。しかしセルロースはとても頑丈で、分解するのが難しいため、糖分を得やすいトウモロコシやサトウキビなどの食糧を原料にすることが主流となってきました。
それでもセルロースは、セルラーゼという酵素で分解できます。そしてセルラーゼは、放線菌の中にも存在しています。ですから、放線菌の力でセルロースを分解し、使いやすいものに変えることができれば、食糧を使わないエタノールの生産も効率よく行えます。
抗生物質をつくり出す放線菌と、セルロースを分解する放線菌は、おおむね種類が異なります。もし両方の能力を持つ放線菌を遺伝子工学的につくり出すことができれば、おがくずや間伐材から薬をつくれるかもしれません。
また、自然界に豊富に存在するセルロース系バイオマスを原料にすることは、環境にも大きな利点になります。すぐに実用化はできなくても、長期的視野で研究を続けていくことが必要です。
高崎健康福祉大学 農学部 生物生産学科 教授 吉積 毅 先生
青いバラは、遺伝子組換え技術がなければ作ることができなかったもののひとつです。西洋では長年、赤い色素が薄いオスの花粉をメスに受粉させて青いバラを作ろうという品種改良を試していましたが、いくら続けても青い色にはなりませんでした。そこで、細胞核の中にある遺伝子の配列を調べると、バラの中には青い色素を作る遺伝子がないことがわかりました。「自力で作ることができないのなら、青い色素を持つ遺伝子を足してみよう」と遺伝子を組み換えてみると、交配による品種改良をしていた時間に比べ、ごく短い期間でサントリーの研究者は青いバラを作ることに成功しました。
環境に優しいといわれているバイオプラスチックにも、遺伝子組換え技術が応用されています。土の中にいる細菌が特定の環境下で蓄えた栄養を人為的に植物に与えると、バイオプラスチックの原料となる成分が植物内で生産されます。しかしこの方法では、細菌を育てるための大きなプラントや大量のエサが必要になり、手間や費用がかかります。そこで、植物の葉緑体に遺伝子を組み込み、原料となる成分を自力で作ることができる植物が生まれれば、畑に植えておくだけで効率よくこの成分を生産することが可能になります。
植物の遺伝子組換えに用いる道具に、「パーティクルガン(遺伝子銃)」があります。これを使うと、植物の細胞に、組み換えに使用する遺伝子を持った菌粒子を撃ち込むことができます。しかし、葉緑体はとても小さいため、葉緑体の遺伝子組換えをするには、偶然、葉緑体に当たるまで撃ち込み続けなければなりません。そこでペプチドという、アミノ酸の羅列によって作られる分子を利用して、葉に新たな遺伝子を与える方法が考案され、葉緑体の遺伝子のみを組み換えることに成功しました。この技術によって、今後、多くの植物で遺伝子組換えがしやすくなる可能性があります。
福井県立大学 生物資源学部 創造農学科 教授 木元 久 先生
植物の病原菌となるカビの細胞表層を構成する物質でもある「キチン」は、植物においても、細胞壁を強くするなどして、生体防御反応を強める効果があります。つまり、植物の免疫力をアップさせるのです。
キチンは、カニの殻の主成分でもあります。福井県はズワイガニの水揚げ量が多く、冬の味覚として有名です。先人の知恵として、福井県内には、廃棄物となっていたカニの殻を畑にまく習慣がありますが、福井の生産農家は経験的に、カニの殻が農作物にいい影響を与えること、植物が病気に強くなるという効果をもたらすことを知っていたと言えます。
カニの殻をそのまま地中に埋めるだけでは効果が弱いため、キチンを植物の受容体にはまりやすくする形状に変える必要があります。そこで高分子であるキチンを低分子化してキチンオリゴ糖をつくります。すると、植物の受容体と結合しやすくなります。企業と共同開発したキチンオリゴ糖を主成分とする植物活力剤は、殺虫剤のような有毒な成分を含んだものではなく、植物本来の免疫力を活性化することで、病気にかかりにくくします。農作物の葉に吹きつけることで、病気を抑制するなどの効果が認められています。植物活力剤は、人間にとっての健康補助食品やサプリメントのようなものです。
植物活力剤の効果については、病気に強くなるだけではなく、イネの生長が早くなることもわかっています。根が早く伸びたり、草丈が長くなったりするのです。植物活力剤をイネに使うことで肥料の使用量が少なくて済むという効果も得られています。また、花に使うと、1株にたくさんの花芽がつくことがわかりました。さらにトマトでは収穫量が増し、味が濃くなりました。葉に散布すると特に効果が高く、従来の1.5倍以上の実がなりました。このように、キチンオリゴ糖の効果が多面的に研究されています。
遺伝子組み換え作物を開発し、品種登録出願という実績があり自分のやりたい事について研究できると思ったからです。
微生物の研究ができるから
県内初の農学部設立と言うことで注目されているから
高崎健康福祉大学ではこれからの農業、いわゆる最先端の農業が学べるので決めました。
送料とも無料
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多種多様な研究テーマがある
自然の多い環境で落ち着いて学ぶことができ、諸先輩方はとても勉強熱心で学びの場がしっかりと設けられているから。
管理栄養士の受験資格が得られる
醸造を学びたかったから
東北大学 農学部
農学部はキャンパスを移転したばかりできれいであり、ユニバーシティハウスも新築できれいだった。
食品化学がやりたいと思い、調べたところ研究している教授がいたから。