住居学は、生活の場である居住空間に関わる全般を学び、豊かな住環境の実現を目的とする学問で、主要分野は「設計・デザイン系」「住文化系」の2つに大別されます。「設計・デザイン系」は、建築学とも関係しながら、構造力学や住む人のライフスタイルを反映した間取りなどの住宅計画・住環境を設計する工学的な分野です。「住文化系」は、住環境の在り方をライフスタイルの側面から考え、家政学や生活文化学的な視点で研究を行います。
高齢者や障がい者の生活に不便な段差や障害を取り除いたバリアフリーや、すべての人にとって使いやすいユニバーサルデザインを取り入れた住環境が求められるようになっています。子どもの成長や家族構成、生活スタイルに合わせて、すべての人が豊かで快適に暮らせる空間づくりの研究がテーマとなります。
住宅産業やインテリア産業での商品開発やアドバイスを行う仕事や、建設業での建築物設計や都市計画に関わる分野などで、学んだことを生かせます。公務員として住宅行政に取り組んだり、不動産分野に進む人もいます。
駒沢女子大学 空間デザイン学部 空間デザイン学科(2025年4月新設) 教授 佐藤 勉 先生
人間は、居心地のよい場所を自然と求めるものです。それを意識的に見つめ直し、もっと心地よく、さらに快適で健康に過ごせ、かつ安全で自分にふさわしい場所を作るのが住空間デザイン(インテリアデザイン)です。
住空間デザインを学ぶには、まず「自分はどういう場所を居心地よく感じるのか」を深く考えることから始まります。それを考えるには、さらに「自分にとっていい暮らしとは何か」を考え、あなた自身が暮らしを楽しむところからスタートしなくてはなりません。あなたの現在の部屋も、「本当はこうしたい」という理想の姿があるはずです。そのイメージを膨らませるには、普段の経験の豊かさがものを言います。
実際に、ある部屋をデザインする場合を考えましょう。部屋というものは、間取りが同じでも建物の場所や周囲の環境によって、同じ部屋というものは二つとありません。また、デザインを依頼してくる顧客もそれぞれ違う人で、要望は各人各様です。デザイナーは顧客に言われたことを形にするだけではなく、会話の中で引っかかった言葉やその背景を探ることが求められます。この密な対話を積み重ねて計画を練ることを「エスキース」と言います。
そうして受け止めたアイデアをデザイナーが具体的な形や色、素材に置き換えるわけですが、デザイナーも個性のある人間です。デザイナーの数だけアイデアがあります。こうして、顧客とデザイナーの個性がぶつかって生まれる最適解が住空間デザインです。「正解」は無限にあるのです。
日本の建築は古くなると壊して建て直すというやり方が主流でしたが、近年はなるべく建物を長く使うように意識が変わってきました。それにともなって、住空間デザインの重要性はますます増していくと考えられます。住空間デザイナーの活躍の場も設計事務所だけでなく、一般の人とメーカーなどの専門家の中間に立って橋渡しをする「翻訳家」のような役割が求められていくと考えられています。
東京都市大学 環境学部 環境創生学科 教授 リジャル ホム・バハドゥル 先生
私たちは、少し寒いと感じると窓を閉めるなど、無意識のうちに「快適」になるように行動しながら生活しています。人が快適と感じる温度には地域差があり、また季節差もあります。もちろん、個人差もあります。実は、こういった快適さは、「熱的快適性」と呼ばれる指標によって測ることができます。熱的快適性は、人が居る場所の、温度、湿度、風速、太陽や照明からの放射熱の4つの要素および着衣量と代謝量の2つの要素をもとに求められます。具体的には機器による計測や、人々へのアンケートで測ります。
窓の開閉ができない都会のオフィスビルでは、いかに快適に働くことができる環境にするかが大きな課題となっています。そこで、11棟のオフィスビルで、熱的快適性の4要素を測る温度計、湿度計、風速計、グローブ温度計(放射熱を測る機器)を設置して年間を通じて計測を行っています。また、その建物内で働いている1350人の執務者にアンケート調査も行います。「人は室温が何度の時に少し暑いと思うのか」「少し暑いと感じる場合はどういう行動をとっているのか」など、4つの要素の数値と暑さや寒さの感じ方、行動の相関関係を見ていくのです。
環境省が推奨しているエアコンの温度「夏は28度、冬は20度」という数値は、実際のオフィスで本当に「快適温度」なのでしょうか? 調査によると、人の快適温度はオフィスでは平均して夏は26度、冬は23度という数値が出たのです。季節差はありますが、住宅では快適温度が18~28度と幅が広く、一方、オフィスでは23~26度と幅が狭いこともわかりました。
本来、人は自分で調整しやすい環境にいれば、エネルギーを使わなくても快適に過ごすことができます。都市環境の熱的快適性を調べ、その実情を明らかにすることは、環境負担や個人の健康負担を軽減させ、ひいては持続可能な社会の実現につながるのです。
奈良女子大学 工学部 工学科 教授 長田 直之 先生
家を建てる人は、間取りやインテリア、外観などを一生懸命考えます。「オープンキッチンがいい」「子ども部屋は明るい雰囲気にしたい」など、確かに家の中のプランも大事ですが、実は家の外側に広がっている住環境も、人間の暮らしに重要な役割があります。
被災地に建てられる一般的な仮設住宅を例にとると、中は普通のアパートと同じでも、一歩外へ出ると同じ住戸がずらりと並び、一帯には店も、くつろげるフリースペースもなく、外食や買い物をしようと思っても不便です。
仮設住宅でも、一般の住宅でも、複数の世帯や人々が集まって暮らしていることに変わりありません。そこで暮らす人々の生活の質を確保するためには、住宅の内部だけでなく、外側の環境を合わせて考える必要があります。どんなにステキな家でも荒野の一軒家では暮らしづらいですし、複数の世帯が集まって暮らすマンションなどの集合住宅でも、それぞれが自分の住戸にだけ関心を寄せ、隣の人の顔も知らないのは味気ないものです。人々が集まって暮らす環境にまで目を向けた住まいの提案として、住人が共同で一から集合住宅をつくる「コーポラティブハウス」があります。
コーポラティブハウスとは、入居希望者が組合をつくり、プランニングから設計・建築までを共同で進めていく方式で、欧米では広く普及しています。通常のマンションと違い、暮らす者同士が話し合いながらひとつの集合住宅をつくり上げていくので、各住戸だけでなく広場や通路などの共有部分も自由にデザインや設計することができます。
例えば、遊び場にもなる路地や井戸端会議ができるベンチスペースなど、集まって住むことで生まれる空間づくりの可能性が広がるのです。建築の大きな役割は、人の暮らしの質を向上させることです。集まって暮らすにぎわいや、交流や楽しさを、建築が演出する時代が来ています。
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施設が整い、様々な学類へ進めるという魅力が非常に素晴らしいと思った。
建築士になりたいので。
学習環境が充実していることと、素晴らしい教授の方が大勢いらっしゃるので、魅力を感じました。
やりたいことを学べてなおかつ就職にも何かしらやりたいことに結び付けらえるのではないかと、思ったから。
建築に必要な知識、芸術的なデザインなども同時に学べるということで自分にとてもあっていたから。
設計課題で断面詳細図の提出が求められているなど実務的な建築教育が徹底しているため。
建築、設計だけの面でなく、都市計画やランドスケープの面からも住空間について学ぶことができるから。
国立であること。魅力的な教授陣がおられること。一級建築士の受験資格が得られること。
東北工業大学 ライフデザイン学部
高齢者や障害者が、どんなことを不便と思い、どうすれば快適に過ごせるのかを、自分達で実際に体験して学べるという所にとても魅了を感じたから。
建築や設計CADについて学び、防災や環境について考え、暮らす人の目線にたって「幸せ」というものを考える力を身に付けたいと思ったから。