25情報学・データサイエンス

情報学は、コンピュータやプログラミングを学ぶ、情報の収集・分析・処理技術を学ぶ、情報と社会の関係を学ぶなどの分野に大別。文系学部では情報技術の理論・知識と情報収集・情報解析などの実践的技術を習得して情報を活用した問題解決手法を学びます。理学系学部では認知科学や情報統計学、情報処理論などの原理的研究が中心。工学系学部ではネットワークやAI(人工知能)などを学びます。情報学を学べる学部・学科は文理とも増加傾向。
IT技術の普及により収集・蓄積が容易になった膨大かつ多種多様なデータ(ビッグデータ)を活用して、ビジネスや社会課題の解決などに生かすのが「データサイエンス」という学問。統計学も学びますが、収集・分析する内容を自ら考え、課題の発見・解決やビジネス上の成果につなげるため、経済・経営やマーケティングに関する知識も必要です。
IT関連、金融・保険業を含む幅広い業種の企業、一般企業の情報関連・マーケティング・企画開発部門や、データサイエンティストとしての活躍が期待されます。情報学の理工系は、ソフトウェア開発・情報サービスや各種メーカーなどに就職する人が多くいます。
武蔵野大学 データサイエンス学部 データサイエンス学科 教授 石橋 直樹 先生
近年「データサイエンス」という言葉をよく耳にするようになりました。データサイエンスの概念自体は以前からあるもので、大量のデータ分析から何らかの法則性や関連性を導きだす学問全般をさす言葉です。しかし、そこで培った知識や導き出された情報を社会に正しく還元できて初めて、人々を幸せにできると言えるでしょう。データサイエンスの研究は私たちの生活にどんなことができるのか、難しい言葉で言えば「社会実装」の重要性が高まっています。
データサイエンスを社会実装する一例として、美術館システムの再構築について紹介します。これは多くの人が持っているIT機器であるスマートフォンを利用して、これまでにない美術館体験を実現するための試みです。これまで展示作品の音声案内は専用機器の貸し出しが必要でしたが、専用のスマートフォンアプリを使うことで美術館にいるときは声優の声で、それ以外の場所では機械音声で展示作品の案内が楽しめるようになりました。ここには、デジタル化された収蔵品のデータを位置情報などと連携してどう活用するかといった、データサイエンスの理論や技術がふんだんに用いられています。
もちろん、美術館のアプリはあくまで社会実装の一例です。重要なことは、美術館を新しい技術の実験場にすることで、人々が楽しむアートを通じてデータサイエンスの進歩や可能性を社会に示したことです。今後は、さまざまな美術館でデジタル化されたアート作品のデータを集め、過去の展示をいつでも再体験できたり、会場に行くことができない遠隔地の人にもバーチャル美術館めぐりで展示を体験できたりするようになっていきます。これはまさに、データサイエンスを使ったタイムマシン「どこでもドア」になります。データサイエンスは多くの人々の夢をかなえるための研究でもあるのです。
福知山公立大学 情報学部 情報学科 教授 山田 篤 先生
アップル社のAI(人工知能)アシスタントSiriやスマートスピーカー(AIスピーカー)Google Homeなど、コンピュータに話しかけると返事が返ってくる音声対話システムが、私たちの生活に定着しつつあります。
人間同士が話すように対話するこの技術は、相手の言うことを聞き(音声認識)、それを理解して返事を考え(自然言語処理)、その返事を音声にする(音声合成)という3つの要素に支えられています。これらの技術を急速に向上させた一番の要因はAI研究の発達です。例えば音声認識率は、AI研究の基盤技術であるディープラーニングの導入により飛躍的に向上しました。
しかし、AI研究が発達する一方で社会的な問題や課題も表出しています。例えば、プライバシーの問題です。スマートスピーカーを通じて得られたユーザーの音声はクラウドで処理されるため、事業者のサーバに送られます。また、音声の誤認識や利用者の言い間違いによって生じる電子商取引上の誤発注も発生しており、システムの進歩に対して法整備などの社会的対応が後手に回っているのが現状です。
重要なことは、ユーザーがこれらの仕組みをしっかりと理解した上で、各個人がこれらの仕組みを利用するにあたって事業者と交わしている契約内容を把握して、自分で自分を守るという考え方を身につけなくてはなりません。
このように音声対話システム研究は今、世界中に広く展開可能なモデルを形成し実際に使用しながら、そこで発生する社会的・技術的課題にも取り組み続ける成熟段階にあります。次の展開として注目されているのが、より身近な地域社会の課題解決にこのシステムを生かす研究です。例えば、観光客への多言語対応や防災・減災に関するツールでの利用など、生かし方は多様に広がる可能性を秘めています。そのために経営学や社会学などの専門家と共同で学際的な研究が日々進んでおり、社会情報学は新たな注目を集めています。
関西大学 総合情報学部 総合情報学科 教授 林 勲 先生
実はAI(人工知能)の歴史は古く、初めて提唱されたのは1950年代後半でした。第2次のブームが訪れた1990年前後には、人間らしさや人間的な感性をコンピュータに実装する試みが行われ、「ファジィ」や「ニューロ」理論を応用した家電が登場しました。そして2015年頃から第3次といわれるブームが盛り上がりを見せていますが、その立役者は「ディープラーニング(深層学習)」と呼ばれる技術です。
ディープラーニングは、人間の脳の生物学的な仕組みをソフトウェアで再現しようとする「ニューラルネットワーク」というシステムをベースに、膨大なデータから知識を獲得する「機械学習」の仕組みによって、人間が自然に行う決定や思考、認識をコンピュータで実現しています。人間の脳の神経細胞の仕組みを模したニューロンを多層的に重ねたニューラルネットワークを深く学習して、膨大なデータの特徴を獲得できるのがディープラーニングの強みです。囲碁の世界チャンピオンに勝ったディープラーニングのAIアルゴリズムは、大量の対戦データから勝つための戦略を自己学習し、試合中のあらゆる局面で取りうる「手」を評価して予測し、瞬時に最も有効な指し手を選択しています。
同様に、対戦スポーツで、AIアルゴリズムが相手の動きから勝つための戦略を瞬時に立て、次の有効な攻撃を選手にコーチングすることも夢ではありません。卓球を例にとると、過去の試合動画からボールの軌跡や回転、選手の動きなどの大量のデータを抽出し、AIアルゴリズムがそれらのデータを知識化して、相手の攻撃を予測した上で「勝ち」パターンを導き出すことができます。また、選手の能力を引き出してくれるAIコーチング型ロボットを作ることも可能です。人間の脳のさまざまな有効的な仕組みをプログラムで実現する脳知能モデルの進化は、これからの社会を大きく変えていくでしょう。
神戸大学 工学部 電気電子工学科 教授 寺田 努 先生
音楽のライブ会場を盛り上げるのに欠かせない光の演出に導入されているのが、ウェアラブルコンピュータ、つまりLEDやセンサーなどを身につけて使用するコンピュータです。リオデジャネイロオリンピックの閉会式でも、音楽やダンスに連動して服に搭載されたLEDが点滅するパフォーマンスが繰り広げられました。これは、センサーが人の動きを察知して、自在に光を制御する技術を活用しています。見る人を魅了するウェアラブル技術は、エンターテインメントの世界にとどまらず、福祉や介護、教育などあらゆる場面でも応用されています。
人の動きを感知するセンサーの先読み技術を搭載したコンピュータを身につけることで、例えばパーキンソン病患者は、手の震えの悩みから解放されました。食事のときにも手の震えが止まらず、料理をうまく口に運べずに苦しんでいましたが、スプーンの取手部分にセンサーを内蔵することで、スプーンの動きを安定させることに成功したのです。
さらに同様の技術で、キーボードを正確に打つことも可能にしました。また、尿意を感じにくい認知症患者には、センサーをおなかに貼ることで、トイレに行く時間を知らせ、介護の負担を減らすことにもつながりました。
ウェアラブルコンピュータは、心理学、社会学、医学、哲学などあらゆる分野との関わりで今後もどんどん発展し、一気に利用が広がるときがくるでしょう。障がいのある人は苦手な能力を補うことができ、プロのアーティストやスポーツ選手はさらに能力を高める支援を受けられます。ユニバーサルデザインからさらに一歩進み、一人ひとりに合った生き方をサポートするパーソナルデザインの世界への移行が実現するはずです。
しかし、新技術には良い面と悪い面が存在します。研究者はその両方を理解し、人に与える影響を十分考え、技術を生み出すことが求められています。
立正大学 データサイエンス学部 教授 渡辺 美智子 先生
現代の世の中では、データサイエンスの技術が私たちの日常生活に大きな影響を与えています。生活を便利にするさまざまなAIサービスも、大量のデータ分析によって支えられています。例えば、通販サイトのレコメンド(おすすめ)機能は、過去の購入履歴データを分析して個々のユーザーの好みにマッチした、より最適な商品を提案します。この技術は、私たちの購買体験を便利で快適なものにしてくれます。また広告業界では、データ分析によってターゲティング広告が行われており、顧客に必要な情報が効果的に提供されるようになっています。これにより、顧客の満足度やロイヤリティの向上が実現され、企業の収益向上にも繋がっていきます。
スポーツの分野でも、データサイエンスの技術が活用されています。例えば、メジャーリーグの選手のデータを分析して、選手のタイプ分けを行う研究が進められています。バスケットボールでも、優れたアスリートの20年分のパフォーマンスデータを分析して、選手のどのような能力要素が選手生命に影響するかを調べるといった研究が行われています。
試合や練習中に装着されたセンサから得られる、心拍数や運動強度などの大量のデータを分析するのも、データサイエンティストの仕事です。そこから得られるデータの分析結果が、選手のパフォーマンス向上やけがの予防に役立てられています。
データサイエンスの目的は、単に数字を分析することではありません。データから得られた知見を生かして「社会をよりよくする、Data for Social Good!」が最終的な目標です。経済・社会・文化といった多様な分野でデータサイエンスを活用するためには、文系の考え方が欠かせません。文理融合の学問として、文系のセンスと理系の技術を組み合わせ、新たな視点で社会課題に取り組む、データサイエンス力を持った人材が、社会のあらゆる分野で求められています。
社会科学とデータサイエンスの両方を学べる学習内容に魅力を感じたから。
数学が好きで数学を使って社会に貢献できる勉強をしたかった。
情報機器が豊富で学べることが自分の意思と合っているから。
専攻という分け方がない自由度の高いカリキュラム形式なため、自分が勉強したいことや興味を持ったことを選択して学ぶことができるから。
市民工学科という分野は神戸大学にしかないから
学習内容が自分の理想的です。留学制度も充実しており、将来に役立つ経験が豊富にできるようだから
自動車工学に関しては歴史のある伝統校でハイレベルな資格合格率、就職実績など受験に際しての決め手となりました。
教育と数学の二本立てで学べるため
立正大学 データサイエンス学部
将来データサイエンティストになりたくて、データサイエンスを学べる学校が知っている中で4、5校あったが、中でも立正大は教授の専門性が高く、学びの質が高いと感じたので立正大学を選びました。
データサイエンスで文系出身でも挑戦できること。
私が将来したいスポーツアナリティクスを目指している先輩がいた事とスポーツが盛んでアナリティクスの情報も取得しやすい環境。