44船舶・海洋工学

船舶・海洋工学は、地球規模で海と人間に関わる幅広いテーマを対象とする学問で、船舶系・海上海洋系・環境系の3つの分野に分かれています。
「船舶系」は、船舶を中心とした構造物の設計や建造、船舶の運航に関する研究を行います。船舶の構造に関しては、物理的な基礎理論を機械・電気・流体力学・制御などの工学分野から学びます。「海上海洋系」は、海洋資源の探索・開発、海底油田の石油掘削プラントや海上空港、海上リゾートなどのレジャー関連施設などの建設に加え、海上輸送システム、船舶による国際物流などについても学びます。「環境系」は、海の潮流や波など自然現象を解明し、海洋環境の保全や水域の有効利用につなげるための研究を行います。国土を海に囲まれた日本にとって、船舶と海洋の利用は非常に重要です。
造船・輸送機械、重機械工業、海運業で船舶の製造や海上輸送に関わるほか、自動車、建設、航空、運輸、倉庫、通信など、バラエティに富んだ業界での活躍が期待されています。海技士免許を取得し、世界の海で活躍する人もいます。
東海大学 海洋学部 海洋文明学科 教授 山田 吉彦 先生
日本は、四方を海に囲まれていることもあり、海が好きな人がたくさんいます。あらためて周りを見渡すと、海に関わりながら仕事をしている人はいっぱいいます。漁師、フェリーなどの船長や船員、貿易に関わる海運、潜水士といった海を職場にするものはもちろん、気象関連の仕事やホテルをはじめとする観光業界にも、海に関係した仕事がたくさんあります。また、最近では海底資源開発をはじめ、あらたな海洋分野の研究、開発が進み職域が拡大しています。
漁業を始めとした水産業は、きつい仕事というイメージがあるかもしれません。しかし、最近の水産業は、たくさんの可能性を秘めています。話題になっているマグロの養殖をはじめ、魚介類を育てる漁業へ変貌を遂げることで、水産業の安定が図られています。また、大間のマグロ、関アジ、利尻コンブなどブランド化が付加価値を生むようになってきました。そして、海洋環境を守りながら、日本人の食文化を考えることにより、水産業の未来は開かれています。漁村という枠を越え、日本の経済の根幹を支える経済活動として水産業の多角化、国際的な漁場の研究など新たな分野が広がっています。
こうしたビジネスは、離島などにも、生かすことができるはずです。日本には、6千852の島があり、うち420ほどが有人島です。離島は、人がすぐに出て行ってしまい、経済が衰退し、元気がないと言われますが、その島に合った産業や、生活の仕方を考えれば、衰退を防ぐことはじゅうぶん可能です。小笠原諸島や石垣島、屋久島などの離島は、自然と文化が共生し魅力ある島になっています。食や祭りなどの伝統文化と観光の融合、島の特性を生かした地場産品の創生などにより、島を活性化させることはじゅうぶん可能なのです。
東京海洋大学 海洋資源環境学部 海洋資源エネルギー学科 教授 宮本 佳則 先生
海洋生物の情報収集に「超音波バイオテレメトリー」という方法があります。魚にピンガーという超小型の発信機を取り付け、受信した音波から魚の位置、遊泳している場所の深さ、水温などの情報を収集します。水中では電波が届かないので音波を利用します。以前、カナダとアメリカが共同で大規模な魚の生態調査を行ったこともあり、現在はバイオテレメトリーの装置はカナダのメーカー1社がシェアの9割を占めています。
発信機が超小型のため、単一の周波数しか使えません。たくさんの魚を識別するために、今までの装置はそれぞれが発信する断続的な音波の間隔を変える方法を取っていました。しかし狭い範囲では同じ声の人が一斉に話すような状況になり、音が重なると聞き分けられません。日本では定置網の中での魚の泳ぎなど、狭い範囲で細かな行動を調査したいというニーズが多くあり、この方法では困難です。
そこで日本独自の装置の開発が始まりました。日本の装置には、携帯電話やGPSの技術をもとに特殊な音を出す振動子を利用して信号に識別コードを埋め込む方法が採用されています。これによって同じ周波数でも、個々の信号を識別することができ、これにより狭い範囲での調査が可能になりました。
この技術は生物の調査だけでなく、漁業の発展にも応用されています。海中の潮の流れは一様ではないため、漁具を意図した場所に入れるのは困難で、長い経験が必要です。そこで、漁具にピンガーを取り付け、水中マイクを海中に入れることで、投げ入れた網などの位置や水深がわかります。生物に付けるピンガーは小型化と長寿命を両立するために発信間隔を変えるなどの改良を重ねる一方、漁具に付けるものは電池交換ができるように逆に大型化させるなど、実用に向けた装置の開発が進められています。
日本独自の装置の普及とともに、漁業就業者数の減少に対する効率的な漁獲に役立つことが期待されています。
横浜国立大学 理工学部 建築都市・環境系学科(環境情報研究院) 准教授 村井 基彦 先生
海洋工学とは、海という空間をどうやって利用するかを考える学問です。海にあるものといえば、魚だけでなく海底火山や海洋深層水、波などさまざまなものが思い浮かぶでしょう。日本は周囲を深さのある海に囲まれ、排他的経済水域の広さは世界屈指の国です。2007(平成19)年より、海洋基本法が施行され、海洋の開発・利用そして海洋環境の保全との調和が日本の海洋政策の柱の一つに位置づけられました。今後ますます海の活用は注目されるようになり、海の可能性を引き出すために、海洋工学の出番も多くなることでしょう。
海洋空間の活用法の一つとして挙げられるのが風力発電です。風力発電は、送電やメンテナンスに必要な分以外はCO2を出さないのでエコロジーの面でも注目されています。海上は陸上に比べて風が強く、また当然広いので大きくて効率的な風車を設置することができます。ただし、日本の海は深いので、海に浮かぶ新しいタイプの風車を開発する必要があります。
風力のほかにも、イギリスを中心として波の動きを利用した波力発電の開発が進められており、アジアの中では比較的波の強い日本での開発も期待されています。これらの技術開発は海洋工学なしには進みません。
海は地球の表面積の多くを占めており、海洋工学と環境の問題は切り離せません。人間がきちんと海をコントロールしていけるシステムを考えるのも海洋工学の大きな役割なのです。例えば、タンカーの事故で海に原油が広がったとすると、海洋工学の考え方を応用したシミュレーションでは現在の姿だけでなく、1日後はどうなるか、1週間後は、と予測して回収船をどう使うか考え、海や海岸を守ることも海洋工学の役割です。
今、地球がどうなっているか、人間が何をしているかを常にチェックしながら、海という空間の可能性を引き出していく海洋工学は、環境の世紀と呼ばれる21世紀にさまざまな形で活躍することが期待されています。
大阪府立大学 工学域 機械系学類 海洋システム工学課程 教授 有馬 正和 先生
シャチやイルカなどの鯨類は、水中で鳴き声を出し、人間のように互いにコミュニケーションをとる生き物です。中でもシャチは、「クリック」「コールス」「ホイッスル」の3種類の鳴き声を使い分け、群れで行動するという特徴があります。そのため、どの方向からどんな鳴き声が聞こえているかを分析すると、群れの大きさや移動の様子だけでなく、獲物をらせん状に追い詰めて捕食する様子までも観測することができます。
シャチやイルカの鳴き声を測定する音響観測には海中ロボットなどの機械を使います。「水中で音を測る」とだけ聞くと簡単に思えるかもしれませんが、海中ロボットの開発には課題が多くあります。
まず、水の中の様子は少しでも深くなると海上からは見えなくなってしまうため、人間がラジコンで操作することができません。そのため、ロボットを自律的に動けるようにすることが必要です。また、広い海の中では複数機での観測が必須となります。観測技術はもちろんですが、水深によっても海域によっても環境が変わってしまう海の中をいかに効率的に動かすかという点で、海中ロボットにはさらなる改善の余地があります。
音響観測の研究は、鯨類の場所の把握だけでなく、海全体の生態系や環境の調査に役立ちます。例えば、毎年同じ場所にやってくる群れが突然来なくなったことから、海水温などの環境の変化を推定することができます。さらに位置がピンポイントでわかれば、高速船との衝突を防ぐことができ、海洋で鯨類と人間が安心して共生できます。
また、シャチは海の食物連鎖の頂点に立つ、海の王様です。食物連鎖の最下層にある植物プランクトンとシャチの動きを結びつけることで、海の生態系がどのように変化しているのかを解明できるかもしれません。海中ロボットの音響観測の精度を上げることが、海洋環境の保全にもつながるのです。
神戸大学 海事科学部 マリンエンジニアリング学科 准教授 山本 茂広 先生
AI(人工知能)を活用した自動車の自動運転は、世界中で研究・開発が進められています。同様に海上を航行する船の自動運転技術も開発が進められています。カメラを使って景色や風景を認識しながら船を誘導し、ほかの船や障害物との衝突を自動で防止するといった、船舶の安全航行を目的としています。
現状でも船にはレーダーやGPS、ジャイロコンパスといった航海計器によって、ある程度の自動航行は実現されています。ただし本当に見落としや見誤りがないかといった最終的な見張りは、人間の目視によって行われています。それでも見落としなどの人為的ミスもあるため、時折、船同士の衝突や座礁といった事故が起こります。
人間に代わって周囲の風景を認識するためには、AIによる画像認識技術が使われます。画像に映る船や橋脚、航路標識などを学習させることで、周囲の風景を正確に認識させるのです。また、船は急に止まったり方向転換したりすることができないため、自動車の10倍以上遠方にある障害物をいち早くとらえることが求められます。その際に用いられるのがステレオ計測です。人間の目の仕組みのように、2台以上のカメラを設置し、それぞれの視線が交わるポイントによって距離を計測します。視線の角度にズレがあると、距離計測に大きな誤差が生じるので、何度も計測した結果から適切なデータを選ぶフィルタリングという手法で精度を向上させます。
船の自動運転は、外国航路の貨物船など大型で長距離を航行する船舶から導入が進められると考えられています。しかし将来的には、多くの船が行き来する港湾や、海峡といった込み入った場所での活用が期待されます。こうした場所では船舶の上からだけでなく、陸上にカメラを設置して自動認識を行う研究も進められています。特定の船だけでなく、港全体の交通インフラとして導入されれば、多くの船の安全性を向上させることができるでしょう。
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自分の目標である海洋資源開発について専門の学科を持ち、さらにその分野において優れた研究者も多数在籍するため
関東にあり、鯨類の研究ができる唯一の国立大学だから。
MITの教育プログラムを取り入れているという教育内容も良い
志望した海洋工学の研究に特化している
広く工学系の内容をまず習得した後、専門コースを選択できるから
各研究室がネイチャーなどの冊子に載っているということを聞いて、レベルの高い研究が行われているのだなと思ったから。
日本で唯一の船舶を学べる総合大学だから
環境系、特に海洋方面に興味があって海事科学部だと自分のやりたい勉強に加えて他の幅広い分野も学べると思った
東海大学 海洋学部
海洋生物、深海生物に関することを学びたいと思い、東海大学海洋学部を志望しました。
養殖研究に力を入れている先生がいるから