食物・栄養学は、食品を安全に加工・調理・保存し、いかに効率よく栄養を摂取できるかなど、食と健康の関係、食の安全、文化面からの食のあり方などを科学的・文化的見地からアプローチし、社会的な視点でとらえる複合・総合的な学問です。栄養士の資格は所定の科目を履修すれば取得できます。栄養士を指導したり、病院での栄養指導などを行う管理栄養士の資格は所定の養成課程を修了して、国家試験に合格すれば取得できます。
急激な食生活やライフスタイルの変化にともない、生活習慣病や偏食、食品添加物の問題などが起きています。また農薬や放射性物質によって食の安全が脅かされたり、子どもたちの食に対する意識を高めるための「食育」の必要性も指摘され、食や栄養に関する専門的な知識を持った人材が求められています。
病院・学校・福祉施設での栄養管理業務、食品メーカーでの商品開発などで活躍が期待されています。食への知識や問題意識を生かして、外食産業、流通・サービス業、マスメディアなどで活躍する人や、家庭科教員として食生活のあり方を指導する人もいます。
山形県立米沢栄養大学 健康栄養学部 健康栄養学科 教授 寒河江 豊昭 先生
食べ物に含まれるさまざまな栄養素のうち、糖質、脂質、タンパク質は三大栄養素と呼ばれ、人間が生きていくために欠かせないエネルギー源です。このうちタンパク質は、筋肉や臓器など体の主要な成分を構成する大事な栄養素ですが、糖質が不足して十分なエネルギー供給ができなくなると、それ自身をエネルギー源として使うために燃やされてしまいます。体内で、タンパク質として機能する栄養素はタンパク質だけです。糖質不足が原因でタンパク質が減ってしまうと、筋肉や臓器をつくる本来の機能を果たせなくなり、筋肉量も減ってしまうのです。
糖質は、脳や赤血球の活動に欠かせない栄養素です。タンパク質をエネルギー源ではなく体をつくるという本来の目的に使うためにも、糖質の十分な摂取が必要です。
体内で必要なエネルギーと栄養素の量を算出するには、疾患の状態や手術の有無、個人の筋肉量や脂肪量なども考慮する必要があります。臨床栄養の現場では、タンパク質を効果的に機能させるために必要な、タンパク質以外(糖質・脂質)のエネルギー量の適正値は、NPC/N比(非タンパクカロリー/窒素比)という指標を用いて算出します。
栄養管理は、病気やけがの治癒を促進するためだけでなく、再入院を防ぐためにも大切です。以前の栄養設定は、エネルギーを重要視したカロリーベースが優先されてきました。現在では、筋肉や臓器をつくるタンパク質が体内でその役割をきちんと果たせるように、糖質や脂質を担保した栄養設定の重要性が指摘されています。
患者さんにとって退院は治療の終了ではありません。栄養管理は入院中から退院後まで継続的に行われなければなりません。病気によって失われた栄養素を取り戻す課題と向き合う、新たな生活の始まりです。退院後、自宅の食事でどの栄養素をどれだけ摂取すればいいのか、臨床栄養の観点に基づいた情報提供が、医療行為の一環として行われることが期待されています。
京都女子大学 家政学部 食物栄養学科 教授 辻 雅弘 先生
胎児に何らかの理由で栄養や酸素がしっかり届かず、2500グラム未満で生まれた赤ちゃんのことを、低出生体重児といいます。低出生体重児は、正常体重児と比べてさまざまな障がいが現れる可能性が高い傾向にあり、ADHD(注意欠陥・多動性障がい)や自閉スペクトラム症などの発達障がい、脳性まひといった神経疾患のリスクも高いことが疫学調査で明らかになっています。
医学分野では以前から、低出生体重児の予防・治療が研究されていますが、近ごろは栄養学の分野でも、この研究が進められています。栄養学というと肥満やメタボリックシンドロームなどに注目が集まりがちですが、実は脳の発達や精神疾患の予防という点においても、栄養の果たす役割は大きいのです。
例えば、アメリカ食品医薬品局(FDA)の研究報告に、「魚をよく食べている妊婦から生まれた子どものIQ(知能指数)は高くなる」というものがあります。IQ数値でいうと4程度、偏差値では2.5程度高いということです。この結果から、FDAは「妊婦は多様な魚を毎週8~12オンス(約224~336グラム)食べること」と勧告しています。
2000年代前半ごろまで、アメリカではむしろ、妊婦は魚を食べないよう指導していました。魚に含まれる水銀による害が懸念されていたからですが、今ではそれよりも、魚の栄養によるメリットの方が大きいと考えられています。
同様の報告はヨーロッパ諸国にもありますが、日本ではまだ研究が行われていません。魚以外の食生活や環境なども関係しているかもしれませんが、この研究は栄養学においても医学においても非常に興味深いものです。なぜなら、世の中にIQを4上げる薬はないからです。
病気を治すのは医学だけではありません。高額な医学治療に対し、毎日の食生活で取る栄養は、いわば「持続可能な治療法」です。そこに栄養学の可能性と将来性があるのです。
高知大学 農林海洋科学部 農芸化学科 教授 島村 智子 先生
食品(機能)化学では、身近な食品に含まれる成分を化学的に分析します。昔から「体に良い」と言われてきた食品でも、現在の技術を駆使して科学的根拠を示せば付加価値が高まり、生産者側にも消費者側にもメリットとなります。
機能性表示食品の制度では野菜などの生鮮品も対象に含まれ、機能性を表示することが可能となりました。実際に表示を目指すためには、根拠となる研究結果が必要です。そのためには、大学、地域の生産者、自治体、民間企業が協働して研究を進めていく必要があります。
一次産業の盛んな高知県の県産品を例にとってみましょう。全国的に市場シェアの高い、ニラ、ナス、ショウガ、ミョウガ、ユズなどの農産物は、研究者と地域が連携し、機能性を調べて共有しています。また、高知といえばカツオですが、沿岸の日戻り一本釣り漁で揚がるカツオを年間を通して調べ、疲労回復につながる物質の季節変動をデータ化するといった取り組みが行われました。山間部の町で作られる伝統的な加工品・碁石(ごいし)茶は、この地域特有の発酵茶ですが、機能性評価とそれに関わる物質を解明するなど、生産量は少なくても地域の存続にもつながる付加価値が得られています。研究結果を発展させるために、動物試験や人体での薬理活性を試験するなど、医学や薬学の分野とも連携しているのです。
こうした生鮮品の機能性研究の過程で、ニラ特有の香りの成分に、胃がんの原因となるピロリ菌を減らす、あるいは増殖を抑制する「抗ピロリ菌活性」があることがわかりました。ピロリ菌は酸性である胃の中にすめる唯一の微生物とされ、通常は薬を使って除菌します。ニラに関する研究例は少なく、高知県産品を研究題材とすることで世界的にも独自性・優位性のある研究が生まれているのです。
南九州大学 健康栄養学部 食品開発科学科 准教授 矢野原 泰士 先生
「おいしさ」と「におい」には、密接な関わりがあります。食べ慣れている料理に香りづけのスパイスを加えただけで、いつもよりおいしく感じた経験はありませんか。また、周囲に「青臭いにおいが苦手」などの理由で、野菜嫌いな人はいませんか。
人工香料などを用いずに、食物自体が持つさまざまなにおいを抑えたり、際立たせたりできれば、好き嫌いのある人でもおいしく食べられる食品が生まれるかもしれません。そのため食物のおいしさを「におい」の面から評価する研究が、食品加工学の一分野として進められています。
「におい」の感じ方は、人によってさまざまです。例えば同じ海産物のにおいでも、子どもの頃から魚や海藻をたくさん食べてきた人と、そうでない人とでは、感じ方が正反対になることが多いようです。
そこで現在、においを数値化して客観的に評価するため、異なる年齢層の人たちによる「官能評価」、食品からの揮発成分を分析する「ガスクロマトグラフィー」、複数種のにおいをあらかじめ「基準臭」として設定し、その量でにおいを評価する「におい識別装置」などが用いられています。
生野菜は苦手だけど熱を加えて調理すれば大丈夫という人も多いでしょう。野菜や果物の青臭さは、熱を加えることで減らすことができますが、加熱しすぎると食品本来の味わいまで損なわれてしまいます。そのため、どれくらいの熱をどの程度加えるか、加熱する際に丸ごとか、薄くスライスするかなど、試行錯誤が必要になります。味噌、醤油など発酵食品は、発酵のプロセスを調整することでにおいを変えることができますが、これもあらゆる組み合わせを試さなければなりません。
こうした調整は簡単ではありませんが、嫌いなものでもおいしく食べられる加工法・調理法を開発することで「食」の多様性が広がり、農・水産業の新たな可能性も生まれるのです。
わたしは将来、食品関連の会社で働きたく思い、そのためには食品について深く知ることが大切だと思ったからです。
私が勉強したいと思っていた栄養について学べる学科があり、管理栄養士の資格が取れるカリキュラムになっている
将来チーム医療に携わる病院管理栄養士を希望しています。医療に関する教育も受けられ、最新の設備が整っている
関西圏の女子大で栄養学が学べる学部が新設されたから
送料とも無料
発送予定日: 本日発送発送日の3〜5日後にお届け
自分の学びたい分野を専門とする教授がたくさんおられ、美しい自然のもとで実践的に学べる環境に魅力を感じ、受験を決意しました。
農業など幅広い学習が出来る部分も魅力的だった。
管理栄養士、栄養教諭の資格が取得できる
四年間で食のスペシャリストを目指し食品の開発・研究・学習ができること
送料とも無料
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山形県立米沢栄養大学 健康栄養学部
県立病院との連携があり実習が多い。
地域学や実習が豊富なので、様々な経験を積むことができると考えたから。