環境に優しいプラスチックの未来が、人々の生活を変える
環境に優しいプラスチック
現代社会は石油を燃料や動力として利用する以外に、プラスチックの原料としても活用してきました。しかし石油そのものが限りある資源であるうえ、プラスチックの焼却や廃棄による環境汚染が大きな問題になっています。そこで進められているのが、生物由来の有機物資源から得られる材料の活用で、再生可能な糖や植物油などを原料とした「バイオマスプラスチック」、また微生物の作用で自然に分解される「生分解性プラスチック」といった材料の利用です。
これまでにない機能が生活をより良くする
バイオマスプラスチックと生分解性プラスチックには、容器包装、衛生用品、農業・土木用資材、野外レジャー製品など適した用途があります。繊維化やナノファイバー化、ゲルシート化によって、軽くて保温にすぐれた衣料材料や、抜糸をせずにすむ手術用縫合糸、細胞を増殖させるシート、化粧用パックといった医療材料・健康用品、砂漠の緑化シートなどに利用することが可能となります。生分解性プラスチック材料は、現状はまだ強度やコストの問題がありますが、別のものを混ぜて複合化させたり、分子構造を変えたりすることで新たな機能を持たせる研究が進んでいます。例えば、小さな穴がある繊維は、非常に軽く、風合いが独特な素材となります。より高度な保温性や抗菌性を持たせることもでき、特定条件下で早く自然に還る機能も持ちます。
これからの世界に必ず求められる分野
これらの最大の特徴は、地球環境問題の解決に役立つ材料であるということです。例えば生分解性プラスチックを使った下着は、着ている間は従来の繊維と変わらない着心地ですが、もし誤って自然に廃棄しても分解されるので環境問題を引き起こさないわけです。しかしこれらを普及させるには、もっと人々が求める機能を付与するか、生産コストを格段に下げるかしなければならないでしょう。環境低負荷型高分子は、今後のものづくりで必ず重要な材料となるはずです。
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先生情報 / 大学情報
信州大学 繊維学部 先進繊維・感性工学科 教授 田中 稔久 先生
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高分子化学、有機素材化学、環境材料化学先生が目指すSDGs
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