結晶の欠陥を操り、エネルギー変換に寄与する新材料を開発
産業や人々の生活に欠かせないエネルギー変換
光エネルギーや化学エネルギー、機械エネルギーなど、エネルギーにはさまざまな種類があります。なかでも電気エネルギーは、使いやすいだけでなく他のエネルギーとの間で変換しやすいという特徴があります。例えば、燃料を燃やしてタービンを回し電磁誘導によって電気を得る火力発電所では、化学エネルギーを機械エネルギーを通して電気エネルギーに変換しています。電池でモーターを回して駆動力を得る電気自動車では、化学エネルギーを電気エネルギーを通して機械エネルギーに変換しています。こうしたエネルギー変換の陰には、その機能を持つ材料やデバイス(機器)が重要な役割を担っています。
スマートフォンや太陽電池でも
身近な例を挙げましょう。スマートフォンやパソコンの基板を見ると、多数のコンデンサが所狭しと並んでいます。コンデンサは電気を蓄えたり放出したりする部品です。高速に演算できるCPUや高精細な画面表示を可能にするモニタを開発するだけでなく、それらの動作を支えるエネルギー効率の高いコンデンサの実用化が今後のスマートフォンの進化には欠かせないのです。
光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池の分野でも、革新が生まれつつあります。現在主流のシリコンを用いた半導体では、1つの接合部で得られる電圧は1ボルト程度ですが、「強誘電体」という物質を用いることで、最大で2,000ボルト程度の起電力が得られます。将来的には産業など大きな電力を扱う分野への適用が期待されます。
欠陥制御がすべての鍵
こうしたエネルギー変換に寄与する新材料開発の鍵となるのは、「欠陥制御」という考え方です。第一段階では原子を1個ずつ堆積させて自然界には存在しない、できる限り純粋な結晶(人工格子)を作ります。第二段階では結晶内の微小な欠陥を自在に操ることで新たな機能を引き出していきます。そうしたアプローチにより、創エネルギー・省エネルギーに貢献する世界初の新素材の開発という成果をめざしているのです。
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熊本大学 工学部 情報電気工学科 教授 野口 祐二 先生
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