退院後も見据えた生活指導で心疾患の再発予防を
心疾患へのリハビリテーションは比較的新しい領域
作業療法士という仕事は国家資格として認められてまだ60年に満たない、比較的新しい職種です。身体障害のリハビリテーションでは、主として理学療法士が基本的な動作の回復を担当し、作業療法士は患者一人ひとりのニーズに合わせた応用的動作や生活活動のサポートを担当します。しかし、病気の種類によっては患者への関わり方が十分に確立していない領域があります。そのうちの一つが、心臓病や大動脈など血管の病気を持つ患者への作業療法です。
一人ひとりに適した生活活動を提案する
心疾患の患者は一見すると体の動きに明らかな制限がなく、生活上、特に支障はないように感じられることがあります。しかし、長い目で見て心臓や血管に負担がかかる動作の方法や生活習慣は再発につながります。だからといって安静にしすぎても、体力の低下や認知機能の低下につながってしまうこともあります。そのため、可能な範囲で本人に合わせた適切な生活習慣を身につけることが重要です。適した活動の範囲も一人ひとり異なるため、患者と向き合いながら、その人に適した範囲を導き出し、その後の生活を指導することが作業療法士には求められます。現在、入院中の患者の実態調査を行い、指導方法の体系化が行われています。
退院後までを見据えた生活のサポート
通常は患者の退院後の生活の実態を把握することは難しく、症状が再発し、再入院してからその実態を知ることがほとんどです。しかし、実態調査によって次第に患者の退院後の生活も明らかになってきました。例えば、認知機能が低下している患者の場合、薬がうまく飲めないことや、加齢にともなう筋力の減少や他の病気の併発により、心疾患の悪化や再発につながっていることがわかってきました。入院中からその点を考慮した生活指導を行うことで、持病や障害のある人も住み慣れた地域で長く穏やかに生活していくことが可能になります。そうした患者をサポートし、生きがいを一緒に作っていくのが作業療法士の仕事なのです。
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先生情報 / 大学情報
信州大学 医学部 保健学科 作業療法学専攻 助教 佐藤 正彬 先生
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