木粉がプラスチックに変身! 木から生まれる環境に優しい新素材

木粉がプラスチックに変身! 木から生まれる環境に優しい新素材

木の力で環境に優しい材料を

近年、繊維製品の製造においても「サステイナビリティ」の実現が大きな課題となっています。この課題を解決するためには、サステイナブルな材料の開発が欠かせません。
プラスチックの代わりとなる環境に優しい素材の候補となるのは木材や紙です。紙は水に弱いため、表面をプラスチックでコーティングする方法が採られています。プラスチックの使用量をさらに削減するために、コーティングも木材由来のリグニンを利用する方法が開発されました。紙の主成分であるセルロースには、疎水性の部分と親水性の部分があります。疎水性のリグニンはセルロースの疎水性の部分と結び付きやすいため、単にコーティングしただけでは、親水性の部分がコーティングされずに残ってしまいます。そこで、リグニンに添加物を加えることにより、コーティングのムラをなくす方法が開発されました。

疎水化技術で木粉を活用

リグニンによるコーティングは、木粉を天然の接着剤で固めてプレス成型することで「プラスチック製品の代替材」を生み出すことにも役立ちます。木粉もセルロースなので疎水性の部分と親水性の部分があり、接着強度が得られないという問題がありました。木粉をリグニンでコーティングして全体を疎水性とすることで、代替材は木材と同程度の強度が得られるようになりました。この方法は、木材をくり抜くことなくさまざまな形を作ることが可能な上に、端材や間伐材を木粉として活用できて、環境負荷の削減に大きく貢献するものです。

水使用量の削減が鍵

環境問題の解決には、新素材の開発だけでなく、環境負荷の少ない製造プロセスモデルの確立が必要です。そこで、繊維製品のライフサイクル全体でのCO₂排出量を評価する研究も行われています。その結果、水を蒸発させる過程で多くのエネルギーが使われており、水をあまり使わないプロセスに変更することで、CO₂排出量を大きく減らせることがわかってきました。また、効率的な乾燥方法の研究も進められています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

信州大学 繊維学部 化学・材料学科 教授 村上 泰 先生

信州大学繊維学部 化学・材料学科 教授村上 泰 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

触媒化学、無機材料化学、電気化学

先生が目指すSDGs

メッセージ

環境問題を解決するためには、電気などのエネルギーの問題と、材料をはじめとする化学的な問題とを解決する必要があります。そしてエネルギーの使用量を削減するためにも、化学の知識が非常に大切です。高校生のあなたには、ぜひ化学を学ぶことで、現在の社会問題の解決に貢献してほしいです。そのときには、化学の専門知識だけでなく、社会の問題も広く理解することが大切です。あなたの柔軟な発想と行動力が、きっと未来を変える大きな力となるはずです。

信州大学に関心を持ったあなたは

信州大学は、人文・教育・経法・理学・医学・工学・農学・繊維の8学部からなり、すべての学部に大学院が設置されています。教員は約1千人、在学生数は約1万1千人で、世界各国からの留学生約400人も意欲的に学んでいます。
松本、長野、上田、伊那に位置するいずれのキャンパスも、美しい山々に囲まれ、恵まれた自然のもと、勉学にも、人間形成の場としても、またスポーツを楽しむにも最適の環境にあります。さらに、地域との連携がきわめて良好であり、地域に根ざした大学としての特色も発揮しています。