薬や新素材開発に欠かせない「化学イメージング」って何?
科学の力を使えば、目に見えない世界が見える!
物体の表面の化学物質の分子や原子を検出するのが「化学イメージング」です。その方法には何種類かありますが、オーソドックスなのが光を照射して調べる手法で、多くの場合、10ミクロンくらいの点を識別できる細かさで、知りたい化学物質の分布イメージが得られます。一方、光の代わりにイオンビームを照射する「二次イオン質量分析法」なら、光の照射の2万倍近い50ナノメートルくらいの点が識別できる細かさで化学物質の分布がイメージングできます。
成分分析の「最後の頼みの綱」
二次イオン質量分析の注意点は、装置が高感度であるため真空の中での測定となり、動植物などを対象とした場合、対象物を生きた状態で分析できないことです。しかしそうしたデメリットを差し引いても得られる情報量の多さから、どんな分析をしてもわからなかったときの最後の頼みの綱として、企業では用いられています。
日本では主に化学系企業や電気・機械メーカーを中心に運用されてきました。電子デバイスの開発などは非常に小さな部品が使われるため、内部で起きていることを確認するには分子レベルでの分析が不可欠だからです。同様に医療系の調査分析にも有効であり、例えば新薬を開発した際、きちんと薬効成分が病巣に届いているかを確認することができます。欧米諸国に比べ日本は医療系分野への使用は少なかったのですが、近年は力を入れ始めています。
さらなる理論的な裏付けが課題
二次イオン質量分析が広く普及するためのネックとしては、まず装置やランニングコストが高額なことがあります。さらにデータの解釈が難しいことも普及の妨げとなっています。扱う人間がデータ解析を深く理解する必要があるのです。
そして、ほかの分析法に比べるとわからないことも多いので、今後はそれを克服していくことが課題ですが、未来の科学の世界を切り開く可能性を秘めた分野です。
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成蹊大学 理工学部 理工学科 教授 青柳 里果 先生
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