スーパーキャパシタを使えば一瞬でフル充電が可能になる!
もう充電器はいらない?
スマートフォンやパソコンの中にはリチウムイオン電池だけでなく、ほかにも電池が入っています。いわゆるコンデンサと呼ばれる「キャパシタ」で、さらに進化した「スーパーキャパシタ」も作られています。スーパーキャパシタは物理化学反応をベースにしているため発熱によるロスが少なく、うまく作ればiPhoneを数秒でフル充電することやガソリンの給油と同程度のスピードで電気自動車をフル充電することも可能になります。
さらに充電速度と効率を上げれば、非接触充電の要領で自動充電しながら走行することもできます。世界中で自動充電と自動運転の開発が並行して進められており、既に実験ラインが組まれるなど、実用化まで見据えられています。
ナノシートを「立てる」ことで効率アップ
層状の化合物をナノサイズのシートにバラバラにした後に、積層させることでスーパーキャパシタに使うナノシート電極が作れます。実際にはナノシートを浮かせた溶液を基板などに塗布して使うのですが、重力の関係からナノシートは溶液内で「寝た」状態となります。電気エネルギーはナノシートの間に蓄積されるため、上下から流れた電気はナノシートの表面を回り込むロスが生まれます。そこでまずナノシートを垂直に立たせ、フリーズドライの要領で凍らせてから乾かします。ナノシートが「立った」状態で使えれば電気は一直線に層の間に入ることができ、急速充電や急速放電が可能になるのです。
レアメタルを使ったキャパシタの用途とは
一般的なスーパーキャパシタは活性炭を使うため、非常に低コストです。現状、最も性能がよいのは酸化ルテニウムを使ったナノシート電極です。ルテニウムは希少性が高いレアメタルで高価なので、人工衛星や心臓のペースメーカーなど、性能の高さをより生かせる用途がよいでしょう。
ほかにも酸化マンガンや酸化チタンなどでもナノシートを作れますから、性能とコストを考えてどう使っていくかがポイントになります。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
信州大学 繊維学部 化学・材料学科 教授 杉本 渉 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
無機材料化学、電気化学、触媒化学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?