環境にやさしい紙おむつの開発

環境にやさしい紙おむつの開発

紙おむつの原料は?

日本では9割ほどの赤ちゃんが、紙おむつを使用しています。洗う手間がかからず衛生的という理由からですが、ここで問題なのは使用済みの紙おむつの処理です。紙おむつの大部分は石油でできており、しかも使用後は水分を含んでいるため、処理するにはダイオキシン発生防止のために高温で焼却しなければなりません。これには運搬コストや環境負荷がかかります。また原料である石油はいずれ枯渇すると言われています。

吸水部分をトイレに流せる紙おむつ

そこで環境にやさしい紙おむつをつくろうと、天然の綿を使う研究を進めています。究極の目的は、紙おむつ全部を自然の力で分解できる素材に変えることですが、コストや処理場の整備状況を考えると今はまだ現実的ではありません。そこで綿を原料に吸水性樹脂をつくり、使用後はそれを剥がしてトイレで流せるようにする方法が考えられました。これなら焼却するゴミの量を減らせますし、トイレに廃棄された吸水性樹脂を下水処理場の微生物で分解できれば、環境への負荷も抑えることができます。

吸水性に優れ、自然に分解しやすい素材をつくる

綿をそのまま使用するだけでは、吸水性の高いものにはなりません。綿はそのほとんどが植物繊維の主成分である「セルロース」という分子でできています。セルロースの分子は鎖が非常に長い「高分子」で、水分を保持する材料を作るのに都合のよい形をしています。このセルロースに水に溶けやすい性質を付与し、高分子の鎖を網目のように結びつけます。このとき、微生物が分解しやすいように、ちょうどよい強さで網目を化学結合させるのがポイントです。こうやって加工することで、吸水性に優れ、微生物が分解しやすい分子構造になるのです。
実験では、重さの約400倍もの水を保持する樹脂ができました。実用化には、石油由来の製品のように製造コストを抑える工夫が必要なので先の話になりますが、天然資源を使った環境共生型の製品は、これからの社会でますます重要になるでしょう。

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先生情報 / 大学情報

福岡女子大学 国際文理学部 環境科学科 教授 吉村 利夫 先生

福岡女子大学 国際文理学部 環境科学科 教授 吉村 利夫 先生

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高分子化学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私は子どもの頃、ものをつくったり自然に触れたりすることが好きで、大学は化学系に進み、企業に就職してからは、新材料の研究開発に携わりました。一方で、人に教えることが面白いと感じ、先生に向いているのではないかとも、ずっと思っていました。自分の心に向き合った結果、大学の教員に転職しました。回り道をしましたが、好きなことを職業にできて、こんなに幸せなことはありません。あなたにとって好きなこと、やっていて楽しいことは何でしょうか。それを見つけて、あなたの人生が楽しく充実したものになることを祈っています。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

福岡女子大学に関心を持ったあなたは

福岡女子大学は、1923年、わが国初の公立女子専門学校として創立された福岡県立女子専門学校を前身とし、開学以来多くの「次代の女性リーダー」を輩出してきました。
2011年4月には、「国際」と「教養」を重視した国際文理学部1学部のもとに国際教養学科、環境科学科、食・健康学科の3学科を開設。専門教育のほか、1年次全寮制教育や学術英語プログラム、国内外での体験学習など、特色ある教育を行い、これからのグローバル化時代に対応し、国際社会で活躍できる人材の育成を目指します。