軽くて強い材料、「カーボン繊維強化プラスチック」の未来像

軽くて強い材料、「カーボン繊維強化プラスチック」の未来像

スポーツから宇宙までをカバーする材料

私たちの身近にあるスポーツ用品で、テニスラケットや釣り竿、ゴルフクラブのシャフト、自転車のフレームなどに用いられている材料に、「カーボン繊維強化プラスチック」(Carbon Fiber Reinforced Plastics、CFRP)があります。ほかの素材に比べて圧倒的に軽くて強く、耐久性も高いカーボン繊維強化プラスチックは、自動車や航空機、さらには人工衛星にまで利用されるようになりました。スポーツから宇宙までをカバーする材料として注目されています。

大幅な軽量化がもたらすさまざまなメリット

カーボン繊維はアクリル繊維を蒸し焼きにして生成します。そのほとんどが炭素で構成されており、直径5ミクロン程度でありながら非常に強靭な繊維です。そのカーボン繊維をプラスチックとともに成形すると、カーボン繊維強化プラスチックになります。
現在の自動車や航空機に用いられている金属材料が、カーボン繊維強化プラスチックに置き換えられていくと、大幅な軽量化が可能になります。例えば電気自動車の場合は、それによって走行距離をさらに伸ばすことが可能になりますし、航空機の場合は、軽量化によって年間で数億円もの燃料費の節約につながると言われています。こうした効果は、二酸化炭素削減などの環境対策にもつながると期待されています。

生産性の向上とコストダウンが鍵を握る

カーボン繊維強化プラスチックの課題は、生産に非常にコストがかかることです。このため、必要以上に材料を使用して無駄にしないようにするための詳細な強度測定や、現在は固まるまでに2時間かかる場合もあるというプラスチックを1分で固まるようにすることをめざすなど、生産性の向上とコストダウンを図る研究が、世界各国で進められています。これからの私たちの社会にとって、カーボン繊維強化プラスチックは欠かすことのできない材料になることは間違いありません。

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先生情報 / 大学情報

東京都立大学 システムデザイン学部 機械システム工学科 教授 小林 訓史 先生

東京都立大学 システムデザイン学部 機械システム工学科 教授 小林 訓史 先生

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複合材料工学

メッセージ

私の研究は、機械工学の中でも「材料」を扱っていますが、最近のこの分野の技術革新は非常にすさまじいものがあり、機械についてだけでなく、化学的な合成の知識なども必要になっています。これからは、こうした流れがどんどん加速していくと思うので、あなたも、自分の好きなものだけを勉強するのではなく、さまざまなものに興味を持って、幅広い知識を得るようにしていってほしいと思います。

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