未知なる物質の開発に挑む物性物理学
物理学で世の中の物事のつながりがわかる
物理学は現実の世界を抽象化し、数学を使って表現する学問です。物理学の理論を使えば、例えば世の中の100万個の謎が10ほどの法則に集約でき、一見無関係と思える物事同士がつながる理屈がわかります。物理学がなければ、100万個の謎には100万通りの解決法が必要になるでしょう。物理学に親しめば、世界のさまざまな物事がつながってうまくいっていることが実感できるのです。
物質の性質や機能を追究する「物性物理学」
自然界に存在する物質の成り立ちを、分子や原子、電子などの基本粒子まで突き詰め、その先のクォークなどへと研究を進めている素粒子物理学はミクロの物理学の一つです。その素粒子が膨大に集まってできている物質の性質や機能を明らかにするのが物性物理学です。物質の原子は、陽子・中性子・電子のたった3種類の基本粒子からできているだけなのに、なぜ私たちの周りには多様な性質をもつ物質が存在するのでしょうか?
創発性がつくりだす物質の不思議
金属はピカピカ光りガラスは透明なのはなぜか、電流が流れる・流れない、磁石になる・ならないは何で決まるのかなど、これら物質の性質や機能は、原子・電子が集まることで現れる「創発性」によるものです。これは個別の原子・電子からは決して現れることのない性質や機能が、集まることによって全体から発することを意味します。例えば一口に電子材料と言っても、磁性体(ビデオテープなど)、誘電体(携帯電話など)、超伝導体(リニアモーターカーなど)、半導体(コンピュータなど)、光学材料(DVDなど)は、原子・電子にどのような創発性が現れているのかによって異なります。これらの仕組みを解き明かすことで、未知の機能をもつ新物質の設計さえもが可能になります。これまでにも設計された新物質から、ハイテク製品に使われる半導体などが生み出されてきました。物性物理学は豊かで多様な現象を理解するために、背後にある普遍的な法則を解き明かし、役立つ物質をつくり出す学問なのです。
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