自由に姿を変えるポリマーの実力
身近なポリマー、ポリエステル
PET(ペット)ボトルを構成しているのは、プラスチック(ポリエステル)の一種であるポリエチレンテレフタレート (PET) というポリマー(高分子)です。ポリマーの特長として、いろいろな形に変形できるということがあるので、作り方によっては見た目が全く違った製品になります。具体的な例で示すと、ポリエステルの仲間は、衣料用の繊維、フィルム・磁気テープの基材、容器などに幅広く使用されるポリマーですが、ポリマー全体として、「長い」という特長があるので、引っ張って伸びきった形で使用すると繊維にすることができます。繊維としてのPETは、耐熱性、強度に優れ、色も付けやすく、衣料用繊維として非常にたくさん使われています。また温度を上げて溶かすと、自由な形に成形できるので、PETボトルとして加工できますし、もう一度溶かして繊維として再利用することもできる、非常に便利な素材です。
熱で収縮するフィルム
ポリマーは、化学構造を変えることで性質を細かく変えることができ、さらにポリマーそのものの形についても、長さを変える、枝分かれを作ると言ったように変形させることで、全く異なる性質を与えられるので、利用される範囲は非常に広くなっています。例えば、多くのPETボトル表面に貼ってある商品名を印刷したラベルも、もちろんポリマーなので、熱を加えると変形します。PETボトルにかぶせ、温めて柔らかくすると元の形に戻ってフィルムが外れなくなるのです。ポリマー同士を化学的な架橋によって共有結合させると、このように元の形に戻ろうとする性質が強くなりますが、共有結合をやめさせるのは難しく、再利用できなくなってしまいます。そこで、ポリマー自身を変形させて枝分かれを作ってやると、枝分かれ部分が障害になり、分子の移動が阻害され変形しにくくなります。一つ一つのポリマーはバラバラで化学的には結合していないのに、元の形に戻ろうとする性質が強くなり、再利用性が高くなります。
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先生情報 / 大学情報
名古屋工業大学 工学部 生命・応用化学科/創造工学教育課程 教授 猪股 克弘 先生
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