人間や環境に負担をかけない分析化学手法の研究
新しい分析試薬に依存しない
「分析化学」は、「どのような方法で分析・測定すれば、求める結果が得られるか」を研究する学問です。機能的な分析のためには分析試薬を使う場合があります。しかし、基本的には新しい試薬をつくり出すことはしません。それは、今までにない試薬は、ひょっとしたら人間に有害かもしれませんし、環境にとって悪い影響を与える危険性があるからです。ですから、既存の試薬を最大限活躍させる研究を進めています。同じ試薬でも、活躍させる「場」を変えると予想もしなかった機能が現れることもあります。
水を媒体とする
分析法開発ではエタノールなどの有機溶媒も使用しますが、メタノールやベンゼン、クロロホルムなどは有害です。これまでは、こうした有害物質も溶媒として使っていました。しかし現在の化学では有害な物質をできるだけ使用せず、人間や環境に負荷をかけないようにする動きがあります。これは「グリーンケミストリー」と呼ばれ、分析化学の領域では、水を溶媒として分析する方法がその一つです。
ただ、有機溶媒中ではイオンとイオンが引きあう相互作用が強いなど分析法に利用しやすいのですが、水の中では通常、物質間の反応性は低いという弱点があります。一方で、水中だからこそ強く相互作用する反応もあります。そのような相互作用や反応を見つけ出し、水という「場」を活用して、物質の分析に利用できる方法をつくり出す研究を進めています。
化学のイメージを変える
これまで化学は有害な物質を使って、排出しているといった悪いイメージがありました。かつての公害などでの化学の悪い印象を払しょくするために、現在では、最終目的物質が同じであっても、水のような環境に負荷をかけない材料に置き換えていこうとする研究者が増えています。
企業の工場でも、水のように無害であれば下水に流しても問題はありません。環境への配慮が求められている時代に、化学も流れが変わりつつあるのです。
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先生情報 / 大学情報
徳島大学 理工学部 理工学科 応用化学システムコース 教授 高柳 俊夫 先生
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