病気早期発見につながる1滴の血液 ~臨床検査技師の仕事~
診断に必要な検査データを提示
臨床検査技師は、血液や尿、唾液といった生体試料を分析する「検体検査」を行い、医師にデータを提供します。医師は、その検査データに基づいて診断を行います。近年では、臨床検査技師は新型コロナウイルスのPCR検査を行える職業としても知られるようになりました。
検査にはほかに、心電図検査や脳波検査など患者さんの体を直接検査する「生体検査」があります。いずれも、体の機能や組織を調べて、病気の早期発見や、治療による病状の経過を把握する重要な役割を果たしています。
発症前にタンパク質の異変を発見
こうした検査の精度と感度を高めることで、病気のさらなる早期発見が可能になります。人間ドックや健康診断などの際に、一滴の血液や唾液からあらゆる病気の前兆を見つけられるようになれば、患者さんの負担の軽減や治療にも大きく貢献できるでしょう。
生体試料である血液や尿、唾液などは、タンパク質が含まれています。病気が存在すれば、それに応じた特定のタンパク質が変化します。それらは病気の存在や進行度合などの指標となるものであり、「バイオマーカー」と呼ばれています。体のどこかに腫瘍(しゅよう)ができている時に検出される腫瘍マーカーも、そのひとつです。例えば、このバイオマーカー10個の変化で検知しているものを、5個で検知できるようになれば、病気が発症する前に治療できるような「超早期発見」が実現するでしょう。さらに、タンパク質をつくる遺伝情報(ゲノム)から検知する研究も進められています。
新しい検査法の開発も
こうした検知を実現するには、部位別のがん、また、リウマチや糖尿病といった症状のある人と健康な人とのデータを比較して、ごく微量な違いを発見し検証する地道な研究が必要です。超高齢社会を迎えて医療は大きく進歩しており、臨床検査の重要性はますます高まっています。加えて、新しい検査手法を開発することで、治療法も劇的に進歩する可能性を秘めており、臨床検査は医療にさらに大きく貢献できるのです。
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先生情報 / 大学情報
四日市看護医療大学 看護医療学部 臨床検査学科 教授 高崎 昭彦 先生
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