講義No.10072 医療技術 理工系その他

人の身体感覚をサポートする「聴覚バイオフィードバック」

人の身体感覚をサポートする「聴覚バイオフィードバック」

人は情報を総合して立っている

人間は、何かの行動をするとき、外部からの情報に基づいて、自分の姿勢や動きを制御しています。例えば、自分がまっすぐに立っているかどうかは、視覚情報と前庭迷路系、固有感覚系という3つの感覚から総合的に判断し、バランスをとっています。
前庭迷路とは、耳の奥にある加速度センサーで、平衡感覚を司(つかさど)っています。固有感覚とは、この場合は足の裏に感じる感覚のことです。軟らかい素材の上でまっすぐに立つことが難しいのは、足の裏の固有感覚が乱されるからです。

視覚障がい者の運動制御を聴覚で

視覚に障がいのある人は、運動制御を視覚に頼ることができないので、運動がしづらくなりがちです。それなら、視覚の代わりに音によって知ることができないか、という発想から生まれたのが、「聴覚バイオフィードバック」の研究です。
目が見える人は、固有感覚系や前庭迷路系による姿勢制御が正しいかどうかを、視覚で確認することができますが、視覚障がい者の場合には、その部分を聴覚で行おうという考え方です。姿勢がどうなっているか、筋肉がどう動いているかなどを、信号音の大小や周波数によって本人に知らせる仕組みです。

応用可能なバイオフィードバック

聴覚に限らず、「バイオフィードバック」は、実はすでに私たちの身近にも実用化されています。ゲーム機の任天堂Wiiのように、プレイヤーの動作がゲーム画面に反映されるのは、視覚バイオフィードバックの技術です。つまり、バイオフィードバックは、障がい者の感覚を補うためだけでなく、さまざまな場面に応用が可能です。例えば、けがをしてリハビリテーションが必要な患者さんが体を動かせるようにするサポートもできます。リハビリテーションは、本人のモチベーションが上がることで効果も上がります。ゲームをクリアしていくように、自分の動きが視覚や聴覚で確認できるようになれば、それがやりがいとなり、モチベーションが上がることがわかっています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

筑波技術大学 保健科学部 保健学科 理学療法学専攻 准教授 井口 正樹 先生

筑波技術大学 保健科学部 保健学科 理学療法学専攻 准教授 井口 正樹 先生

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理学療法学、福祉工学

メッセージ

自分が興味の持てることを見つけて、思い切り勉強してください。たくさん勉強することで、自分に自信がつき、さらにいろいろなことに興味を持てるようになります。
私はかつて、視覚障がいがあることに対して劣等感を持っていましたが、目が悪い分、ほかの人に負けないように勉強しようと考え、がんばれました。つまり、自分の弱点が強みになったのです。あなたも、仮にハンディキャップや苦手なものがあったとしても、考え方を変えることで、それを自分の強みとすることができるはずです。

先生への質問

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本学は、聴覚障がい者、視覚障がい者のための唯一の国立大学です。学生の障がいや個性に配慮しつつ、障がいを補償した教育を通じて、社会的自立と社会貢献のできる人材を育成しています。
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