人の身体感覚をサポートする「聴覚バイオフィードバック」
人は情報を総合して立っている
人間は、何かの行動をするとき、外部からの情報に基づいて、自分の姿勢や動きを制御しています。例えば、自分がまっすぐに立っているかどうかは、視覚情報と前庭迷路系、固有感覚系という3つの感覚から総合的に判断し、バランスをとっています。
前庭迷路とは、耳の奥にある加速度センサーで、平衡感覚を司(つかさど)っています。固有感覚とは、この場合は足の裏に感じる感覚のことです。軟らかい素材の上でまっすぐに立つことが難しいのは、足の裏の固有感覚が乱されるからです。
視覚障がい者の運動制御を聴覚で
視覚に障がいのある人は、運動制御を視覚に頼ることができないので、運動がしづらくなりがちです。それなら、視覚の代わりに音によって知ることができないか、という発想から生まれたのが、「聴覚バイオフィードバック」の研究です。
目が見える人は、固有感覚系や前庭迷路系による姿勢制御が正しいかどうかを、視覚で確認することができますが、視覚障がい者の場合には、その部分を聴覚で行おうという考え方です。姿勢がどうなっているか、筋肉がどう動いているかなどを、信号音の大小や周波数によって本人に知らせる仕組みです。
応用可能なバイオフィードバック
聴覚に限らず、「バイオフィードバック」は、実はすでに私たちの身近にも実用化されています。ゲーム機の任天堂Wiiのように、プレイヤーの動作がゲーム画面に反映されるのは、視覚バイオフィードバックの技術です。つまり、バイオフィードバックは、障がい者の感覚を補うためだけでなく、さまざまな場面に応用が可能です。例えば、けがをしてリハビリテーションが必要な患者さんが体を動かせるようにするサポートもできます。リハビリテーションは、本人のモチベーションが上がることで効果も上がります。ゲームをクリアしていくように、自分の動きが視覚や聴覚で確認できるようになれば、それがやりがいとなり、モチベーションが上がることがわかっています。
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先生情報 / 大学情報
筑波技術大学 保健科学部 保健学科 理学療法学専攻 准教授 井口 正樹 先生
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