患者の負担を少しでも減らしたい! 病理検査の効率化を実現

少ない細胞を効率よく採取
病理検査とは、患者の組織の一部を採取して病気の原因を調べる検査です。病理検査の中でも細胞診検査は、細胞の採取に細い針を使ったり自然に排出された細胞を使ったりするため患者への負担が少ない検査ですが、よりストレスを減らす方法が研究されています。
例えば、眼球の内部を洗浄する手術の場合です。ここでは眼球に3本の細い器具を刺して、眼球から取り出した液体で細胞検査を行います。ところが採取できる細胞数が少ないため、診断が確定できずに同じ処置をしなくてはならないことも起こり得ます。これでは患者の負担になることから、一回の処置で確実に診断できるよう、これまで捨てられていた眼球の洗浄液も利用して、可能な限り、再検査とならないような方法が模索されています。
標本から最大限の情報を
通常の細胞診検査では、必要に応じて確定診断につなげるためにタンパク質の発現を調べる検査法や、特定の遺伝子が増幅したり、無くなっていないかなどを調べる検査法など、複数の方法が行われることがあります。それぞれの検査に対して、採取した細胞から作製した細胞標本が必要であり、標本が少ないとすべての検査を網羅できません。そこで、複数の検査手法を組み合わせて、一つの細胞標本で効率よく検査する方法が研究されています。
広がる臨床検査技師の可能性
病理検査を行うのは臨床検査技師です。タンパク質や遺伝子の分析など、臨床検査技師が持つ病理検査の技術は、医学研究に応用できます。
その例として、病気を抑えたり、改善したりする天然由来の物質についての研究が進められています。例えば、ある種の脂肪酸や甲殻類の持つアスタキサンチンなど、抗酸化作用や抗炎症作用がある化合物が、がん細胞や腫瘍のある動物にどのような作用を及ぼすかを調べるものです。将来的にはサプリメントなどにつなげることをめざしています。また、このような研究は臨床検査技師の可能性を広げるものとしても期待されています。
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