「病気を見つけ出す」臨床検査技師が酵素の謎の働きを解き明かす

「病気を見つけ出す」臨床検査技師が酵素の謎の働きを解き明かす

医師の診断を支える臨床検査技師の仕事

医師が診断を下す際、患者の顔色や脈拍など臨床で得られる情報以外に、心電図検査や血液検査などのデータが不可欠です。その検査データを提供するのが臨床検査技師で、医師の診断を支える重要な役割を担っています。つまり、臨床検査技師は「病気を見つけ出す人たち」だといえます。
臨床検査は、大きく分けて「検体検査」と「生理機能検査」があります。検体検査では、血液中の成分を化学的に分析して、赤血球や白血球の数、血糖値などを測定します。一方、生理機能検査は、電極や機器を用いて患者の体から得られる信号や画像を分析する方法です。「臨床化学検査学」は、血液などの検体を分析して、病気の診断や治療に役立てる学問です。

50種類以上の成分

血液検査では、試験管のキャップの色が検査項目によって異なる仕組みになっています。例えば、紫色のキャップは赤血球や白血球数の測定、グレーのキャップは血糖値測定など、どの病院でも同じ色のキャップが使われています。このような工夫によりミスを防いで、効率的に検査が行えるようになっています。
血液中には、多くの成分が含まれています。血液を遠心分離機にかけると、比重に応じて層に分かれ、赤血球などの重い成分が下部に、血漿(けっしょう)などの軽い成分が上部に分かれます。上澄み成分は、上清(じょうせい)と呼ばれます。

まだ解明されていない血液中の成分

上清にはさまざまな成分が含まれており、これらを分析することで、病気の有無や進行状況を調べることが可能です。しかし、その働きや病気との関連性が不明なものも存在します。例えば、ある酵素は病気になると必ず変動しますが、なぜ変動するのか、分子レベルでのメカニズムは解明されていないのです。このような「素性のわからない」酵素の働きを明らかにすることは、臨床化学検査学の重要な研究テーマとなっています。

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先生情報 / 大学情報

北里大学 健康科学部 医療検査学科 教授 小丸 圭一 先生

北里大学健康科学部 医療検査学科 教授小丸 圭一 先生

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臨床化学検査学

メッセージ

臨床検査技師の仕事は「間違い探し」に似ています。基準となる正常値と照らし合わせて「検査データから異常を探す」という、細部まで注意深く観察して違いを見つけ出す。そして違う理由まで推測する能力が重要なのです。これは文系・理系に関わらず大切なスキルです。臨床検査学は理系分野のイメージが強いですが、文系出身者でも諦める必要はありません。高校1年生レベルの基礎的な数学と理科の知識があれば十分ついていけます。物事に疑問を持ち、深く探究する姿勢さえあれば、活躍が期待できるでしょう。

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北里大学では「なりたい、を超えていく」をコンセプトに、思い描いた将来像をも超えていけるような、社会に出てからも成長し続ける人の育成をめざしています。
また、「生命科学の総合大学」として、データを読み解き、未来の課題を見つける分野(未来工学部)、生命科学の基礎的研究を行う分野(理学部)、 動植物と環境に関する分野(獣医学部、海洋生命科学部)、人間の生命と健康に関する分野(薬学部、医学部、看護学部、医療衛生学部、健康科学部)の4つのフィールドから総合的にアプローチしています。