遺伝子の発現を制御する「エピゲノム」をふたごで解析せよ!

遺伝子の発現を制御する「エピゲノム」をふたごで解析せよ!

体質や性格が決まるDNA

特定の病気になりやすい体質かどうか、心配性かどうかなど、DNAの設計図を調べていくとさまざまなことがわかります。アジア人には遺伝的にアルコールの代謝が苦手な人が多いのですが、これは体質のことなので、慣れれば飲めるというものではありません。一方で、一卵性のふたごはDNAが同じですが、体質や性格には違いが見られます。生活習慣などの環境要因やDNAに施される修飾によって、DNAからRNAへ転写が進む過程で、またはRNAからタンパク質が合成される過程で、遺伝子の発現の仕方が変わることも大きな要因です。

生まれ持った遺伝子ですべては決まらない

DNAの設計図を変えることなく、修飾によって遺伝子の発現を変える情報を「エピゲノム」と言います。全身の細胞が同じDNAを持ちながら、目鼻口や手足、神経や臓器などの各パーツに特化した細胞へと変化していくのも、エピゲノムの働きです。
家族に高血圧の人が多いケースでは、遺伝的要因もあるかもしれませんが、塩分の高い食事を習慣的に取るなどの環境要因や、血圧に関わる遺伝子の働きがエピゲノムで制御されている可能性もあります。エピゲノムの研究が進めば、環境要因についても科学的に検査できるようになるでしょう。

ふたごのDNA解析から新しい検査をめざして

一卵性双生児は生まれ持ったDNAが全く同じなので、環境要因やエピゲノムの差に着目した研究に適したサンプルだと言えます。一卵性双生児の協力を得てDNAやRNAを採取し、タンパク質の合成までを網羅的に調べていく「オミックス解析」によって、具体的にどこで遺伝子の発現が変わるのかを突き止めることができるようになりました。
エピゲノムの研究は、一人一人の潜在的な能力や適性を伸ばす教育など、さまざまな分野で役立つ可能性を秘めています。医療においては、病気の予防や病気と診断された後の進行の予測、効果的な治療法の選択などに役立つ、新しい臨床検査へとつながっていくことが期待されています。

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大阪大学 医学部 保健学科 検査技術科学専攻 教授 渡邉 幹夫 先生

大阪大学 医学部 保健学科 検査技術科学専攻 教授 渡邉 幹夫 先生

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遺伝学、病態検査学、分子生物学

メッセージ

医療の場でも研究の場でも、正解のないことに対して、「自分はどう判断すべきか」が求められるときがあります。判断を左右するのは、あなたの価値観です。今のうちから自分の価値観を育んでください。ニュースなどに触れたときに「自分はどう考えるか」と意識してみるとよいでしょう。検査結果でも、「この数値はおかしいのでは」という気付きが研究につながります。価値観を持って進むと、大学は楽しいところです。「がん」「遺伝子」などの興味を抱いたキーワードの先に、自分は何がしたいのかも見えてくるはずです。

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