スマホをうまく使えない! 視点の動きから支援方法を考える
スマホをうまく使えない?
日常生活のあらゆる場面で、パソコンやスマートフォンなどの電子機器が使われています。しかし電子機器をうまく扱えずに困っている人もいます。例えば脳の損傷が原因で起こる「高次脳機能障害」を抱えている人で、体は動かせても認知機能が正常に働きにくくなる、という症状が見られます。中でも目の前のものや空間をうまく脳内で処理できない「視空間認知障害」を発症すると、スマホなどの電子機器を使いにくくなる可能性が高いのです。
視点の特徴を探る
電子機器を扱いにくい原因が「画面内の情報を認識するときの視点」にあるのではないかと、ゴーグル状のアイカメラを使った計測が実施されました。一般的にスマホを操作するときは、視点が大きく動くことはありません。画面全体を俯瞰(ふかん)して必要な情報を確認し、その方向に少しだけ視点を動かして効率よく見ています。一方で視空間認知障害のある人は、画面内で視点が大きくあちこちに動いていることがわかりました。ある1点のみに目を向けることはできても、その周囲は認知しにくいという特徴も見られます。そのため必要な情報を見つけるまでに何度も視点を動かさなければならず、効率が低下していました。
電子機器の操作を支援
分析結果をもとに、リハビリや作業療法の方法が考えられています。例えば、電子機器のボタンにさまざまな色のシールを貼る方法です。「次は赤いシールのボタンを押す」のように手順を説明した結果、目的の操作にたどり着きやすくなりました。いわゆるガラケーと呼ばれている携帯電話は、物理的なボタンがあったためこうした対応が可能でした。しかし、スマホはボタンの場所がアプリによって変化してしまうので、シールを使った説明ができません。また、画面内の情報量もガラケーに比べてはるかに多いです。そのため患者が必要としている機能を聞き出して、それを見つけやすくなるようにホーム画面上に表示されるアプリの量を減らすなど、効果的な方法が考えられています。
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