機械学習でMRIの画像を鮮明にするには?
磁場が弱くても鮮明な画像を
MRIは磁場によって体の内部を映し出す検査装置です。磁場を強くすると鮮明な画像が撮れますが、撮影時間が長くなるため、患者には大きなストレスになります。そこで、磁場が弱い短時間撮影の画像を、画像処理を行うことで鮮明にする技術の開発が進んでいます。具体的には、同じ患者を短時間で撮影した画像と、理想の出力にあたる長時間で撮影した画像をペアにした訓練用データをコンピュータに読み込ませる「機械学習」を行います。
きれいにしたいのは背景じゃない
理想の出力を「教師信号」、訓練用データから学習されたモデルを「学習器」と呼びます。現在の機械学習では、学習器が教師信号の何を学習したかを特定できません。単に画像を与えるだけだと、目的の人体の部分ではなく、関係のない例えば背景をきれいにして出力してしまう学習器に育つこともあります。仮に教師信号と同等なほど鮮明な画像を出力する学習器ができたとしても、学習器の内容を説明できなければ、命に直結する医療の現場での使用は慎重にならざるを得ません。
専門家を組み合わせる
機械学習をさまざまな分野で使えるようにするためには、判断した理由を学習器自身に説明させる必要があります。しかし、今の機械学習は人間で言うと、いわば「子ども」です。子どもが何かをしてしまったとき、「どうしてこんなことをしたの?」と問いかけてもうまく答えられないように、機械学習は自分の判断を正確に答えることができないのです。
判断の理由を画像上に表示できる説明可能AIの研究が進んでいる一方で、人間側の使い方の工夫も必要になります。MRIの画像処理なら、特定の臓器だけを専門にし、さらに臓器の部位ごとに特化した複数の学習器を作り、それぞれの出力を合わせることで理想の画像を生成できると考えられます。一部分に特化すれば判断基準は単純になり、説明もしやすくなります。機械学習の進歩とともに、人間が賢く使いこなすことで、AIと人間が互いに助け合う世の中になるでしょう。
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岩手県立大学 ソフトウェア情報学部 ソフトウェア情報学科 教授 亀田 昌志 先生
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