病原菌を捜査する、「臨床検査技師」は名探偵!
なぜ抗生物質が開発されないのか
感染症を引き起こす病原菌をやっつけるためには、抗生物質が有効です。ところが近年、製薬メーカーでは、ほとんど抗生物質の開発が進められていません。なぜなら新薬の開発には多額の資金がかかる上に、たとえ開発しても病原菌が進化して耐性を持ち、2、3年後には効かない菌が生まれてしまうからです。病原菌が薬剤耐性菌となるのは、皮肉なことに抗生物質を使うからです。不必要な抗生物質の使用を減らし、適切な治療を行い、医療費を削減するためにも、病原菌をきちんと特定することが大切になります。
最先端! 光や飛距離で菌を特定!
「微生物検査」は、病気を引き起こす細菌・真菌(カビ)・ウイルスなどの微生物の種類を特定する検査です。これまでは、検査材料に混在する雑菌から病原菌を分離培養する必要がありました。しかし、最先端の検査法では、病原菌の遺伝子だけを増幅させるPCR法を用いて、その菌だけに見られる遺伝子を見つける「遺伝子検査法」があります。この方法では、病原菌が持っている特殊な遺伝子がPCR法によって増幅されると光を放つ仕掛けを利用しています。
また、菌のタンパク質に電荷を与えて飛ばし、質量の違いから生まれる飛距離で菌を見分ける「質量分析法」もあります。これはノーベル賞を受賞した田中耕一さんが考案した方法です。また、どの菌がどのような反応を示すかをデータ化して、コンピュータで自動的に判定する技術も進んでいます。
医療現場への貢献と研究を同時に
検査の中でも微生物検査は、未知の菌に最初に出合い、研究する学問分野と言えます。これらの医療の知識、最先端の科学技術を使って、探偵のように病原菌を見つけていくのが臨床検査技師の役割です。
医療の現場では、検査を担当するだけではなく、検査データの解釈や投与する薬の提案、スペシャリストとして院内感染の防止に取り組むなど、活躍する場がますます広がっています。
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先生情報 / 大学情報
岐阜医療科学大学 保健科学部 臨床検査学科 教授 中山 章文 先生
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