創作料理をつくるように研究する!? 「理学的研究」の無限の可能性
「理学」と「工学」はどう違う?
「理学」とは、化学、物理などさまざまな自然科学の分野の総称ですが、どのような研究をするのでしょうか? よく比較されるのが「工学」です。料理に例えると、工学が「今ある料理をよりおいしく作る方法の研究」だとしたら、理学は「今ある料理を参考に、独創的な新しい料理を作ること」と言えます。
化学の分野で言えば、「産業に役立つ化合物の量産」といった明確な目標があるのが工学的研究で、役に立つかどうかの前に、今までにない機能を持つかもしれない新しい物質を生み出そうとするのが理学的研究です。
「面白い!」が理学的研究のモチベーション
例えば、細さ、軽さ、導電性などの面でこれまでになかった特性を持つ素材「カーボンナノチューブ」は、さまざまな産業用途の開発が進められていますが、そもそもは特定の用途を意図して作られたものではありません。「炭素を今までにない構造で結合させたらどうなるだろう」という発想で研究した結果、偶然に生まれたものです。このように、暗闇の中を手探りで宝物を探すように、純粋な好奇心、探求心から開発された物質や手法が、結果として世の中を大きく変える画期的な成果をもたらしてきたのです。
理学的研究の可能性は無限大
これまでに蓄積された知見の組み合わせを考えると、今後、新しい発見・開発につながる理学的研究の可能性は無限です。「理学」に含まれる分野・テーマは膨大にありますが、注目度の高い分野の一つとして「分析化学」があげられます。使いたい物質をなんらかの形で検出・計測できなければ、研究も産業利用も進まないため、とても重要な分野です。「ナノレベルまで小さくした半導体の粒子に光を当てて、表面に吸着しているアミノ酸、タンパク質、そしてDNAの種類や量の違いを色の変化により目視できるようにする」という理学的研究も行われています。この技術が実用化されれば、医療現場で、特別な機械や技術を使わずにさまざまな検査が簡単・安く・早くできるようになると期待されています。
参考資料
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
山口大学 理学部 化学科 准教授 安達 健太 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
分析化学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?