講義No.10794 化学

創作料理をつくるように研究する!? 「理学的研究」の無限の可能性

創作料理をつくるように研究する!? 「理学的研究」の無限の可能性

「理学」と「工学」はどう違う?

「理学」とは、化学、物理などさまざまな自然科学の分野の総称ですが、どのような研究をするのでしょうか? よく比較されるのが「工学」です。料理に例えると、工学が「今ある料理をよりおいしく作る方法の研究」だとしたら、理学は「今ある料理を参考に、独創的な新しい料理を作ること」と言えます。
化学の分野で言えば、「産業に役立つ化合物の量産」といった明確な目標があるのが工学的研究で、役に立つかどうかの前に、今までにない機能を持つかもしれない新しい物質を生み出そうとするのが理学的研究です。

「面白い!」が理学的研究のモチベーション

例えば、細さ、軽さ、導電性などの面でこれまでになかった特性を持つ素材「カーボンナノチューブ」は、さまざまな産業用途の開発が進められていますが、そもそもは特定の用途を意図して作られたものではありません。「炭素を今までにない構造で結合させたらどうなるだろう」という発想で研究した結果、偶然に生まれたものです。このように、暗闇の中を手探りで宝物を探すように、純粋な好奇心、探求心から開発された物質や手法が、結果として世の中を大きく変える画期的な成果をもたらしてきたのです。

理学的研究の可能性は無限大

これまでに蓄積された知見の組み合わせを考えると、今後、新しい発見・開発につながる理学的研究の可能性は無限です。「理学」に含まれる分野・テーマは膨大にありますが、注目度の高い分野の一つとして「分析化学」があげられます。使いたい物質をなんらかの形で検出・計測できなければ、研究も産業利用も進まないため、とても重要な分野です。「ナノレベルまで小さくした半導体の粒子に光を当てて、表面に吸着しているアミノ酸、タンパク質、そしてDNAの種類や量の違いを色の変化により目視できるようにする」という理学的研究も行われています。この技術が実用化されれば、医療現場で、特別な機械や技術を使わずにさまざまな検査が簡単・安く・早くできるようになると期待されています。

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先生情報 / 大学情報

山口大学 理学部 化学科 准教授 安達 健太 先生

山口大学 理学部 化学科 准教授 安達 健太 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

分析化学

先生が目指すSDGs

メッセージ

研究には好奇心が大切です。「なぜ?」という疑問、「面白い!」と思ったテーマを追究し続ける力になります。また、学生たちには「常識を疑え」と常々話しています。そうした姿勢から、画期的な発見が生まれるのです。
夢をかなえるためには行動が必要です。難しく考える必要はなく、人に話を聞きに行く、インターネットで検索するといったことでいいのです。私は漫画を読むのが好きですが、漫画の中で得た知識からその後の進路に大きな影響を受けた経験があります。あなたも興味があることをなんでもやってみましょう。

先生への質問

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山口大学は「発見し・はぐくみ・かたちにする 知の広場」を理念に、9学部からなる総合大学です。英語の苦手な人も得意になれる! 山口大学のTOEICを活用した英語教育はすっかり定着しました。また、学生だからこそ考えつくアイデアに、資金を提供するプログラムとして「おもしろプロジェクト」があります。これら山口大学の個性的な取り組みにぜひご注目ください。