イメージング看護で医療現場を支え、病気を予防する
実態を正しく知るために
治療を受けたがん患者さんの身体は、化学療法によってさまざまな変化が表れます。そのうちの一つが脱毛です。さらに脱毛後に頭皮の痛みやかゆみを訴える患者さんもいます。治療中の頭皮では何が起こっているのでしょうか? これまでは視診や触診で状態を判断していましたが、より詳しい実態を明らかにするために、非侵襲(生体を傷つけない)的な機器による測定も行われています。例えば皮膚からどのくらい水分が蒸発しているかといったバリア機能の乱れなどを機器で客観的に測定します。そうして総合的な判断を基にケアを行います。医師や看護師の経験だけでなく、示された数値や画像(可視化)を基に実態を把握することで、より適切なケアが行えるようになります。
可視化で医療を助ける「イメージング看護学」
患者の体内を見る(可視化する)機器といえば、エコー(超音波検査装置)があります。今はAI(人工知能)を搭載した、看護師でも使いやすいポケットタイプ、ハンディタイプのものが開発されています。そして膀胱(尿をためる部位)の観察による尿量のチェックや、直腸の中の便貯留も見られます。それによって看護師によるケアで対応できるか、医師に相談して治療をする必要があるかといった判断を迅速に行えます。「イメージング看護学」では、数値や画像など、看護の現場において可視化する技術を活用して”安心安全で快適な療養生活”を支えています。
症状の本質に迫り、予防につなげる
こうした機器の開発や活用には、理学や工学といった分野との共同が欠かせません。看護の現場から上がったニーズを基に、生物学的研究から原因や理由を特定し、そこからわかったことや必要なものを工学の知見も生かして医療機器として制作したり、看護のシステムを作っていきます。そして臨床での検証、実装と進みます。この仕組みを「看護理工学」といいます。看護理工学研究によって、症状の本質に迫り、予防や予測につなげることをめざしています。
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横浜市立大学 医学部 看護学科 教授 玉井 奈緒 先生
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