ピンポイントで薬をうみだす分子をつくる! 光機能分子とは?
光を使った病気の治療、診断
光は照射する場所や時間を限定することができます。医療へと応用した場合、病変部に最適のタイミングで光を照射することにより、最適な治療を可能とします。「光線力学療法」や「光免疫療法」はこうした光を用いた治療法の例です。さらにがんなどの病変部がどこにあるかを高い精度で診断することも可能とします。こうした光による病気の治療、診断を可能にするのが、光によって様々な機能を発揮する「光機能分子」です。ここでいう「機能」としては、照射した光と別の色の光が発せられる蛍光が有名です。
光によって薬をうみだすCaged化合物
光によって分子が発揮する「機能」は蛍光だけではありません。光によって近くの細胞を殺す活性酸素を生成する機能を持った分子は、先に述べた光線力学療法で使われています。一方、光によって分子の形を形成している「結合が切れる」機能を持つ分子である「光分解性保護基」に着目した研究が行われています。光分解性保護基を薬となる分子の特定の場所に結合させておくと、薬として働けなくすることができます。こうした分子は、薬がかご(Cage)に捕らわれている比喩から、「Caged化合物」と呼ばれています。Caged化合物に特定の色の光を照射すると、結合が切れて(≒かごから飛び出して)、薬がうみだされます。すなわち、光をあてた場所、時間に限定して薬を作用させることができます。
新たな光分解性保護基で副作用が少ない治療を!
新たな機能を付与した光分解性保護基を用いて、副作用が少ない治療法の開発も行われています。注目したのは病変部近傍の環境です。例えば、がん組織の近傍は酸素濃度や酸性度(pH)の数値が正常な部分と異なっていることが知られています。こうした環境選択的に機能する光分解性保護基を開発すれば、薬を患部だけで発生させることが可能になり副作用を少なくすることができるわけです。このような新たな分子の開発による、新たな治療法の構築を目指した研究が進められています。
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大阪医科薬科大学 薬学部 薬学科 教授 平野 智也 先生
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