微生物のエネルギー代謝機構の解明とその可能性を探る
微生物のエネルギー代謝機構を明らかにする
自然界には微生物が行う詳細が不明な代謝(化学反応)がまだあります。ある2つの異なる微生物は共生してプロピオン酸を分解し水素を介してメタンを生成します。それぞれの微生物は特有の遺伝子によって代謝を用いますが機構の詳細は予測にとどまっています。それは、これらの微生物の培養が困難で遺伝子操作できないことが主な原因です。このような未解明な代謝機構はまだ多く残されており、今後も発見される可能性があります。
未知遺伝子の機能をモデル微生物で検証しよう
近年、生物のゲノム配列が決定できるようになり、微生物の遺伝子情報は簡単に得られるようになりました。ただ、配列による機能解析は他の遺伝子の情報を基に行うため、配列が異なる場合機能が違うことがあります。また、全く新しい遺伝子もあります。そのため、多くの遺伝子の機能は予測にとどまっています。ただ、遺伝子を人工的に増やしたり合成したりすることが簡便に出来るようになってきました。
そこで、未知のエネルギー代謝機構に関わる遺伝子の機能を解明するためにモデル微生物、特に大腸菌の活用を試みています。大腸菌は培養しやすく、遺伝子の機能情報が数多く蓄積され、そして遺伝子やゲノムの操作技術が発達している、利用しやすい微生物です。このようなモデル微生物に機能が不明な遺伝子を導入し発現させることで機能を特定していくとともに、その遺伝子を活用していくことが考えられています。
異なる微生物の代謝を活用する微生物を創る
現在は、プロピオン酸分解を行う微生物の遺伝子を大腸菌に導入して機能させる方策が調べられています。最終的には、この微生物が持つ特有の働きを大腸菌で再現し、その機構の詳細を明らかにすることがめざされています。それによって、真の意味で代謝機構を理解、そして遺伝子の機能情報を生み出すことになります。そして、これまでにない物質を活用する微生物を作ることが出来れば、未来のエネルギー生産と活用において微生物の利用がさらに期待できます。
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先生情報 / 大学情報
山口大学 農学部 生物機能科学科 准教授 高坂 智之 先生
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