化学工学が工場を進化させる
「わかる」と「つくる」の違い
「理学」と「工学」は、どう違うのでしょう。端的に言えば、「わかる」と「つくる」の違いです。鳥を見て「なぜ飛ぶのか」と考えるように、自然現象を解明しようとするのが理学、「人間が飛ぶためにはどうすればいいだろう」と考え、現象を応用して物を作るのが工学です。化学工学というのは、理学的手法と工学的手法が融合した学問の一種です。化学製品を作るときに、その作り方を決め、そのための設備を作り、生産・管理をするのが、化学工学の役割となります。
コーヒーのおいしいいれ方
例えば、コーヒーのいれ方を例にして考えてみましょう。コーヒーをいれるには、コーヒー豆を煎る、豆を挽いて粉にする、コーヒーの成分を湯の中に取り出す、コーヒーの粉とコーヒーを分ける、などの工程があります。これらを化学工学的に言うとそれぞれ、反応操作、粉砕操作、抽出操作、分離操作と呼ぶことができます。それぞれの操作には、必要となる原理があり、最適な装置があります。おいしいコーヒーをいれるために、それらを組み合わせて最適な方法を考えるのが、化学工学なのです。
手のひらサイズの工場ができる!?
化学製品を工業的に大量生産するための設備を、プラント(工場)と言います。最近、「工場萌え」という言葉があるように、プラントは、人類が生んだもっとも機能的で独創的な構造物であると言ってもいいでしょう。
かつての化学プラントには、大勢の人手が必要でしたが、近年、省力化などが進み、わずかな人員でプラントを動かすことができるようになりました。同時に、安全性、効率化も格段の進歩を遂げています。現在は、マイクロリアクターと呼ばれる、小さいチップの中で化学反応を起こすような装置も開発されています。これを応用すれば、未来のプラントは、手のひらに乗るようなサイズのものになるかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 工学部 応用化学科 教授 大村 直人 先生
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化学工学先生への質問
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