次世代の充電式電池の主役は、硫黄?
生活に欠かせない「充電式電池」
スマートフォンやノートパソコン、電気自動車に至るまで、身の回りにある電化製品の多くに「充電式電池」が使用されています。現在の主流はリチウムイオン電池ですが、より大容量で高性能な次世代の充電式電池の開発をめざして、世界各国で活発な研究が進められています。
従来の電池の10倍の性能が実現?
次世代の充電式電池の候補として注目されているのが、「硫黄」を用いた電池です。硫黄電池は、理論的には同じ大きさのリチウムイオン電池の10倍の電気容量を持つことが可能になるといわれています。スマートフォンも、硫黄電池になれば、10日も20日も充電しないまま使えるようになるかもしれません。電気自動車に硫黄電池を搭載すれば、一回の充電での走行可能距離が飛躍的に伸びることになります。また、リチウムイオン電池など従来型の充電式電池には、リチウムやコバルトなどのレアメタル(希少金属)が必要で、供給面やコスト面で多くの課題があります。硫黄は埋蔵量が非常に豊富で、入手も比較的容易なため、レアメタルを使用する場合の課題を解決することができます。
再生可能エネルギーの普及の鍵にも
ただ、硫黄電池の実用化には、まだまだ多くの難問があります。例えば、現時点では硫黄電池の電極の負極にはリチウム金属を使用する事例が多いのですが、それだと動作が安定せず、発火の危険もあるという報告がなされています。そのため、正極に使用する物質に工夫を加えることで、負極にリチウム金属を使わなくてすむような硫黄電池を実現できないか、という研究が進められています。
硫黄電池のような次世代の充電式電池が実用化されれば、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーによって得られた電力を、いったん蓄えておくことで安定供給できるような電力インフラも実現できるかもしれません。電池の研究開発は、社会の土台を変革するような可能性を秘めているのです。
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東海大学 工学部 応用化学科 講師 松前 義治 先生
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