船舶は日本の重要な社会インフラ、脱炭素にも貢献

船舶は日本の重要な社会インフラ、脱炭素にも貢献

船舶燃料のグリーン化

船舶からの大気汚染物質をゼロにするため、船舶の燃料は重油からLNGへ、さらにグリーン燃料に代わりつつあります。特に近年ではカーボンニュートラルに向けて、従来のバイオ由来燃料だけでなく、アンモニアや水素といった新しい燃料を使用できるように、新しいエンジンなどの技術開発が行われています。近い将来には、水素を燃料にして、大気汚染物質を全く排出しない船が実用化されることでしょう。その実用化に向けて、世界的に技術開発競争が行われています。

水素社会実現への船舶の役割

水素自動車の普及など、水素社会の実現には、水素の運搬も非常に重要なカテゴリになります。重さで考えると、日本の物流の99%以上は船舶で行われており、大量の水素を運搬するためにも必ず船舶が使用されます。ところが、水素を大量に運ぶためには、-253℃という極低温にしたり、他の化学物質に水素を吸収させたりする必要があります。これは技術的に非常に難しく、これまでに水素を大量に運ぶ船は殆ど実用化されていませんが、日本は世界でもトップクラスの技術と実績を積んでいます。

水素補給船は海の上の水素スタンド?

船舶の燃料が水素に置き換わるには、水素で動く船舶の開発や水素の大量輸送だけでなく、水素燃料の補給の問題も解決しなければならない大変重要な課題です。例えば、港の中には、多種類の船舶がありますが、これらが水素燃料で走るようになった場合、そこに船が集まるよりも、停泊している船を回って水素補給する方が効率的だからです。これには、液体水素タンクの開発、乗組員の安全を確保した空間設計など、新しい考え方で船を設計する必要があります。このように造船エンジニアは、従来の船を安全に建造することに加え、時代にニーズに合わせて新しい技術開発を行いながら、より良い社会を目指して、インフラストラクチャーの創造への貢献も夢見ています。

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先生情報 / 大学情報

東海大学 海洋学部 海洋理工学科 海洋理工学専攻 教授 渡邉 啓介 先生

東海大学 海洋学部 海洋理工学科 海洋理工学専攻 教授 渡邉 啓介 先生

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海洋工学、船舶工学、環境学

先生が目指すSDGs

メッセージ

日本の物流は99%以上が船による海上輸送です。船はものを運ぶだけでなく、作業の自動化が進んだ巨大なロボットのようでもあり、ホテルのようでもあります。船の建造は総合工学であり、幅広い分野の人たちが携わっています。現在では、船舶設計のソフトウェアを使って、複雑な構造を間違いなく設計できます。図面が造船所に送られると、ある程度の部分はロボットが自動で船を作っていきます。大きいものでは300mはあるような巨大なものを、意外にもハイテクで作られているというのが、造船の面白いところです。

先生への質問

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