塩湖や海からのリチウム「採集」と使用済みバッテリーからの「回収」

塩湖や海からのリチウム「採集」と使用済みバッテリーからの「回収」

「リチウム」の枯渇に備える

スマートフォンや電気自動車にも使われている「リチウム」は、自然界では塩湖やリチウム鉱山から産出されるのが一般的です。しかし、その産地は特定の地域に偏っており、土壌の劣化や大気汚染など環境破壊の問題も指摘されています。また、純度を高めるための中間精製はほぼ中国だけで行われていてほかの選択肢がないため、今後の安定した供給には大きな不安が残ります。これらの課題を解決するため、リチウムを産地に依存せずに供給する方法の研究開発が行われています。

塩湖、海、鉱山からのリチウム採取

リチウムにはさまざまな需要があります。リチウムイオン電池はその代表です。現在研究が進められている「核融合」もその一つです。核融合は、重水素とトリチウムを原料とする発電技術です。重水素は海水中に豊富に含まれていて容易に取り出せますが、トリチウムは自然界では殆ど存在しません。そこで、海水中に豊富に含まれるリチウムに中性子を当ててトリチウムを作る方法が開発されました。
リチウムの採取は、エネルギー安全保障上重要であるとともに、国家予算にも匹敵する規模の巨大マーケットに成長することが想定されます。そこで、塩湖や海水中のリチウムを濃縮して取り出す「採取」技術も、実用化に向けて進められています。

使用済み電池からの金属回収技術

また、EU(欧州連合)では、2024年から段階的に電池についての規制が始まります。これにより、電池の製品設計からリサイクルまでのライフサイクル全体の情報公開が求められるようになります。これをクリアできない場合、バッテリーを搭載したEV車などの日本製品を欧州市場向けに販売できなくなります。さらに、使用後に回収されたバッテリーに含まれる、コバルト、鉛、リチウム、ニッケルなどのレアメタルの「回収」と再利用も求められます。再利用の為には、回収されるリチウムはとても高純度で、環境負荷が小さく安価である必要があります。そのようなリチウム回収技術の実用化を急ピッチで進める必要があるのです。

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弘前大学 理工学部 自然エネルギー学科 教授 佐々木 一哉 先生

弘前大学 理工学部 自然エネルギー学科 教授 佐々木 一哉 先生

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エネルギー工学、電気化学、核融合学

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研究職に興味があるならば、文系も理系も関係なく学校でできる勉強を身につけましょう。すべてが研究に生きてきます。そして、研究者という職業は一般的なサラリーマンのように仕事とプライベートとをきっちりわけられるようなものではありません。研究をライフワークとして取り組む姿勢が重要で、本当にやりたいことを見つけ、その研究にしっかりと向き合わなければ成果にたどり着けません。また、研究は体力勝負の側面もありますので、今のうちから体を鍛え、自己管理の習慣をつけることもおすすめです。

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