「ミズゴケ」が、種を絶滅から救う!?
1日に100種以上の生物が絶滅している
地球では、これまでに150万種の生物が確認されていますが、現在1日に100種以上が姿を消しています。そのペースは、文明が進展する前に比べると数万倍に達します。絶滅の原因のほとんどは人間によるものです。
なかでも開発などによる緑の喪失は、植物はもちろん、そこにすむ動物も絶滅に追い込んでしまいます。生物の中には限られた環境でしか生きられないものもあり、そうした生物は、その特定の環境が失われるとすぐに絶滅の危機に瀕してしまうのです。
植物が繁殖する基盤をつくる「ミズゴケ」
自然破壊を抑制することはもちろんですが、それだけでは絶滅のペースはなかなか改善しないので、緑を再生させることが必要になってきます。しかし、どんな環境でも植物は繁殖するわけではありません。植物が育つには水と細菌やバクテリアの繁殖による水質汚染を防ぐことが必要です。そのような生物の生育基盤をつくり出している植物の1つが、湿原に生育する「ミズゴケ」です。ミズゴケは葉や茎から直接水を吸い上げ、スポンジのように保持する性質があります。特に雨水のみで成立する湿原を高層湿原といいますが、この湿原では、通常では育てるのが難しい植物が繁殖しています。
人工繁殖したミズゴケのさまざまな利用法
ミズゴケは、湿地帯が広いカナダなどから、乾燥した状態で輸入されていましたが、実はカナダでもミズゴケが減少しています。そこで研究されているのが、ミズゴケの人工繁殖技術による大量増殖です。水に浮く素材を利用し、これを基盤にみたてて水に浮かべ、そこにミズゴケの先端を植え付けることで繁殖に成功しました。
この方法を用いることで、どこにでも簡単に高層湿原にすむ生物が繁殖できる生育環境をつくり出すことができます。ミズゴケの人工繁殖は、緑の再生はもちろん、生態系の再構築による種の多様化、農業での土壌改良、ビルの屋上などでの環境緑化などさまざまな分野での応用が期待されているのです。
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東海大学 農学部 農学科 教授 星 良和 先生
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