スパコンに匹敵! ボランティアコンピューティングとは
計算資源の有効利用
スパコンは、通常のコンピュータに比べて計算速度がはるかに高いコンピュータです。当然かかる費用も膨大で、一世代前の「京」では開発費に約1100億円、電気代などの運用費に年間約80億円かかっていました。実はこのスパコンに匹敵するほどの計算性能を、ほぼ無料で利用できる方法があります。
私たちがパソコンで日常的な作業をしているとき、実はパソコンが持つ計算性能の10%も使われておらず、残り90%は遊休状態にあるのです。インターネットに常時接続されているパソコンは全世界で20億台以上あるといわれており、これらの遊休計算資源をボランティアとして提供してもらって集めれば、スパコンに匹敵する計算能力を得ることができます。この方法を「ボランティアコンピューティング(VC)」といいます。
VCの計算プロジェクト
もっとも、VCにも課題はあります。依頼した計算結果が返ってこなかったり、悪意のあるユーザーが故意に間違った計算結果を返したりする懸念です。そこでVCの信頼性を上げるために、同じ計算を複数のユーザーに割り当て、各ユーザーの過去の正答率も考慮に入れつつ多数決で計算結果の正確さを判断するなどの対策がとられています。
実際のVCの計算プロジェクトとして、アメリカの電波望遠鏡が宇宙から受信した電波の解析や、病気の治療薬開発を目的としたタンパク質の立体構造解析などがあります。
用途の広い「並列計算」の実用化へ
上記の例は、個々のコンピュータが独立して計算を分担する「分散計算」の例です。一方、ほかのコンピュータの計算結果を利用して次の計算を行う「並列計算」は、ユーザーのコンピュータ同士の通信が必要になり、VCでの対応が困難です。ただ、天気予報や津波のシミュレーションなど、科学技術計算において並列計算の占める割合は少なくありません。そこで、サーバーを経由してユーザー間で送受信するシステムの開発など、VCでの並列計算の実用化に向けた取り組みが行われています。
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