設計の重要ポイントはココ! 製造業の負担を減らす「公差」の研究
設計者は誤差も計算する
今、手元にあるスマートフォンやペンを眺めてみてください。部品同士がぴったりと組み合わされています。このようにしっかりとした製品ができるカギは「公差」にあります。公差とは、誤差の許容範囲のことです。
例えば、ある部品を「寸法100mm」と設計しても、製造工程では必ず100.01mmや99.99mmのものができます。何種類もの部品を組み立てると、個々の小さな誤差が最終的に大きなズレになります。しかし、ある程度は誤差を許さないと製造が難しくなります。そのため設計者は、各部品について「ここまでの誤差ならOK」という範囲を計算しているのです。寸法だけでなく、輪郭度や平行度などの「幾何公差」も必要です。
誰でも簡単に公差を計算
寸法公差、幾何公差の計算や、それを製造者に正確に伝えることは重要で難しい工程です。工学分野では、それを簡単にできる方法が研究されてきました。
その結果、従来は設計者の力量に頼っていた計算を、サイン・コサインといった基礎的な数学で、数字を入れるだけで誰でも行える公式ができました。また、各部品の誤差が最終的にどの程度のズレになるかを可視化できる方法も開発されています。
もう、たくさんの図面はいらない!
また、製造工程で公差を正確に把握できる方法も研究されてきました。現在の設計図は、コンピュータ上の3次元画像で描く「3DCAD(3D Computer Aided Design)」で作られています。しかし、公差は2次元の図面に書き込まれることが一般的です。つまりCADとは別に、「上から見た図」「横から見た図」など、何枚もの紙の図面が必要なのです。
そこで、CAD上で公差を示す「3Dアノテーション」という方法が開発されました。それにより、例えば裏側の部分がわかりにくいという問題も解決されて、自動車業界で試用が始まっています。たくさんの図面を用意したり参照したりする手間が省けて、設計・製造プロセスの負担が減ると期待されています。
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先生情報 / 大学情報
関東学院大学 理工学部 理工学科 機械学系 准教授 鈴木 伸哉 先生
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