生命体を再現する「次世代生命体統合シミュレーション」
第3の科学、コンピュータ・シミュレーション
コンピュータ・シミュレーションとは、物理的な現象を数式化してコンピュータに計算させ、起こりえる“現実”を予測する手法です。物理学の分野では大いに活躍している手法で、例えば、装置が大規模で、しかも実験が困難な原子力分野の研究などで盛んに活用されています。今日の科学の世界では、コンピュータ・シミュレーションは「理論」「実験」に次ぐ「第3の科学」と呼ばれるほど重要な手法になっています。
シミュレーションで生命体を再現
コンピュータ・シミュレーションを使って、人体の複雑な現象を丸ごと再現しようという試みが、「次世代生命体統合シミュレーションソフトウェアの研究開発」です。人間の体は、ナノレベル(ナノは10億分の1)のサイズのものからメートル単位のものまで、さまざまなパーツからできており、それぞれが複雑な動きをし、影響し合って生命活動という現象をつくり出しています。遺伝子から全身までさまざまなスケールでの現象をシミュレーションし、統合することによって、生命体をコンピュータ上で再構築するというのが、この研究の目的です。それには膨大な計算が必要です。次世代のスーパーコンピュータが最も活躍する場の一つが、ここにあります。
目に見えない人体の仕組みを見えるように
コンピュータ・シミュレーションには、見えないものを「見えるようにできる」という利点があります。シミュレーションの結果を、コンピュータ・グラフィックスで画像にすることにより、さらにわかりやすく把握することが可能となります。CTやMRIなどの医用画像は、人体の内部をある程度は映し出しますが、微細な血管や細胞レベルでの現象を映し出せないのです。
でも、コンピュータ・シミュレーションなら、微細な人体の内部とともに、人体のなかで起こっている力学的な情報(血液の流れが血管壁に与える力の大きさなど)も、見えるようにすることができます。それによって、医療の分野で大きな貢献をすることが期待されています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。