ありふれた元素や化合物で、地球をきれいに
水を浄化する実験とシミュレーション
工場が稼働すれば、廃棄物が出ます。日本や先進国では環境に影響を与えないような放出ルールを厳しく設定していますが、発展途上国の工場などでは、まだ放出する汚染物質がきちんと除去されないところもあります。豊かな自然と快適な生活を化学の力で実現するには、水をきれいにすることが大きな課題です。水に溶けたフェノールなどの汚染物質を除去する場合、吸着実験をして良好な結果が出たとしても、液体の中で分子が吸着する瞬間の構造をとらえることは一般にかなり難しいです。しかし、計算化学の力を借りればナノメートルの世界で起きる吸着反応を分子レベルでシミュレーションできます。
ありふれた材料を使うというアイデア
地球上の希少金属資源は量が少なく価格が高騰しており、このような元素を使わない「ありふれた材料」で環境を守っていこうとするサスティナブルな考え方があります。地球上にたくさんあるものといえば、空気、水、そして土です。日本ではモンモリロナイトという粘土鉱物を使った汚染物質の除去に関する例があります。このような土は伝統的には焼き物の原料になったり、化粧品の粉としても含まれており、安全で安価な、安定供給のできる物質です。
基礎研究は方法論から創り上げる分野
粘土鉱物は主にケイ素とアルミニウム、酸素から成ります。地球上に存在する元素のうち重量比で一番多いのは酸素、次がケイ素、そしてアルミニウムなので、この粘土鉱物の持続可能性は大きいといえます。このような粘土鉱物をそのまま使うのではなく、少し有機物を混ぜて極性を変えた状態にしてシミュレートすると、汚染物質がどのように吸着されるのかもわかります。
計算化学で作業が大変なのは、正しい計算モデルを構築することです。基礎研究の分野では、方法論から独自に創っていくことが研究のすべてと言ってもよく、そこが研究者の腕の見せ所です。
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先生情報 / 大学情報
工学院大学 先進工学部 環境化学科 助教 宮川 雅矢 先生
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