ものづくりに役立てるAIの開発にAIを活用!

産業になくてはならないAI
AIは、産業界においても応用研究が盛んに行われています。特に第一次産業での、深刻な人材不足を解消する各種システムが開発されています。
例えば林業では、出荷するときに木口(木の断面の直径)を測る作業に問題を抱えています。木の断面には、「ワレ」や「クサレ」と呼ばれる使えない部分があり、それを除いた直径を測る必要がありますが、その判断基準が人によってばらつくのです。それを解消するために、ヘルメットにつけたカメラで撮影したワレやクサレの画像から、AIが自動的に使える部分の直径を出して、スマートグラスに表示する装置が開発されました。
AIを開発するためのデータをAIでつくる
農業でも画像判定のAIが活用されています。例えばトマト畑で、収穫できる実やハサミを入れる位置を判定するAIが開発されました。画期的な点は、「生成AIによる学習データ(画像)」の作成です。
実際の畑で大量の写真を撮るには膨大な手間がかかります。そこで、仮想空間上にシミュレーションで再現したトマト畑から画像を集めて、さらに、それを生成AIで本物そっくりに加工したものを学習データとして使う方法が開発されました。そうしたデータで学習したAIは、判定率が向上したという結果が出ています。この技術は自動収穫ロボットへの応用などが期待されます。
機器に影響する物理現象を解析
AIはこのように産業用機器のシステムとして組み込むだけでなく、機器の開発、設計の段階でも重要な役割を果たしています。例えば電気自動車など、電圧や周波数を変換するインバータという部品を使う機械では、「共振」で起こる振動が問題になることがあります。あらかじめ振動をシミュレーションして予測し、設計に生かしています。
現在、蓄積したシミュレーション結果をAIに学習させる「サロゲートモデル」というシミュレーション法の研究が始まっています。研究が進めば、ものづくりの開発プロセスで、より高速かつ正確に振動の予測ができると期待されています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報

秋田県立大学システム科学技術学部 知能メカトロニクス学科 准教授伊藤 亮 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
加工学、生産工学、数値解析先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?