講義No.14899 歯学

実は若者にも多い歯周病 口から始まる健康への道

実は若者にも多い歯周病 口から始まる健康への道

オーラルフレイルの予防

近年、「オーラルフレイル」という概念が注目されています。これは口の機能低下が全身の機能低下(フレイル)に先立って現れるという考え方です。研究の一環として、咀嚼(そしゃく)・嚥下(えんげ)・滑舌といった口腔(こうくう)の機能と、味覚や栄養摂取、生活習慣病などとの関係が調査されています。その結果、滑舌が悪い人は味覚の感度が低下している、糖尿病の人はかむ機能が低下している、といった傾向が見られます。従来、糖尿病患者への指導は食事内容が中心でしたが、口の機能を改善することが適切な食事摂取につながるという新たな視点が生まれています。また、舌の機能訓練をすることで、味覚低下の改善や予防を行い、望ましい栄養摂取状態の維持につなげる研究も進められています。

歯周病と全身の健康との関係

歯が20本未満と少ない人は、ケーキなどに含まれる飽和脂肪酸の摂取量が多いといった傾向も明らかになっています。歯を失う主な要因の一つが歯周病です。実は若い世代の罹患(りかん)率も高く、中学生の約40%が既に歯周病にかかっているというデータがあります。また、歯周病は全身の健康にも深く関わっていることがわかってきています。例えば、歯周病のある人は生活習慣病や心血管疾患のリスクが高いという研究結果が積み重ねられており、歯学分野での共通認識となっています。

未来の健康を守る歯科医療

歯周病が全身の病気とどう関わるのか、その因果関係を明らかにする研究が進められています。歯周病の原因菌は20種類以上あり、どの菌に侵されやすいかは人によって異なります。将来的には菌の種類によって歯周病のタイプ分けを行い、それぞれに合った治療方針を立てることも検討されています。
歯周病は、予防の重要性も注目されています。日本では最近、歯周病予防が医療保険の対象になり、国全体で予防歯科が推進されています。歯周病予防も含めたオーラルフレイル予防が、健康寿命の延伸とQOL(生活の質)の向上につながっていくのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

神奈川歯科大学 歯学部  教授 青山 典生 先生

神奈川歯科大学歯学部 教授青山 典生 先生

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歯周病学

先生が目指すSDGs

メッセージ

歯科医師は口の中だけでなく、患者さんの全身の健康を考える専門家です。口の健康と全身の健康にはつながりがあります。私たち歯科医療関係者の仕事は、患者さんの食事や栄養、そして生活の楽しさの向上にもつながっているのです。特にやりがいを感じるのは、治療後に「ありがとう」と言ってもらえる瞬間です。その言葉が次の日への活力となり、私たちの仕事を支えています。あなたにも、患者さんの日々の生活を豊かにする歯科医療の仕事に関心を持ってもらえると嬉しいです。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

神奈川歯科大学に関心を持ったあなたは

本学では、歯科医師に必要な知識と技術を「歯科咬合医療系」「生命科学口腔病態系」「社会歯科医療系」の3つの柱に統合し、各分野が連携することで、“何のために学んでいるのか”を明確にしています。7週を1ステージとする5Stage制の採用で、少ない科目を集中して学べるため、無理なく着実に履修できます。また、受動的に知識を得るだけでなく、自ら考え学ぶ力を養うため、参加型の能動的学修も導入しています。学生の能力を最大限に引き出し、社会に貢献できる歯科医師の育成を目指して、教職員が一体となって支援しています。