実は若者にも多い歯周病 口から始まる健康への道

オーラルフレイルの予防
近年、「オーラルフレイル」という概念が注目されています。これは口の機能低下が全身の機能低下(フレイル)に先立って現れるという考え方です。研究の一環として、咀嚼(そしゃく)・嚥下(えんげ)・滑舌といった口腔(こうくう)の機能と、味覚や栄養摂取、生活習慣病などとの関係が調査されています。その結果、滑舌が悪い人は味覚の感度が低下している、糖尿病の人はかむ機能が低下している、といった傾向が見られます。従来、糖尿病患者への指導は食事内容が中心でしたが、口の機能を改善することが適切な食事摂取につながるという新たな視点が生まれています。また、舌の機能訓練をすることで、味覚低下の改善や予防を行い、望ましい栄養摂取状態の維持につなげる研究も進められています。
歯周病と全身の健康との関係
歯が20本未満と少ない人は、ケーキなどに含まれる飽和脂肪酸の摂取量が多いといった傾向も明らかになっています。歯を失う主な要因の一つが歯周病です。実は若い世代の罹患(りかん)率も高く、中学生の約40%が既に歯周病にかかっているというデータがあります。また、歯周病は全身の健康にも深く関わっていることがわかってきています。例えば、歯周病のある人は生活習慣病や心血管疾患のリスクが高いという研究結果が積み重ねられており、歯学分野での共通認識となっています。
未来の健康を守る歯科医療
歯周病が全身の病気とどう関わるのか、その因果関係を明らかにする研究が進められています。歯周病の原因菌は20種類以上あり、どの菌に侵されやすいかは人によって異なります。将来的には菌の種類によって歯周病のタイプ分けを行い、それぞれに合った治療方針を立てることも検討されています。
歯周病は、予防の重要性も注目されています。日本では最近、歯周病予防が医療保険の対象になり、国全体で予防歯科が推進されています。歯周病予防も含めたオーラルフレイル予防が、健康寿命の延伸とQOL(生活の質)の向上につながっていくのです。
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神奈川歯科大学歯学部 教授青山 典生 先生
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