舌の動きを分析し、食べる力の維持・回復の方法を探る
食べる機能が衰えると
人間が物を食べるとき、口やのどの中はどんな運動をしているのでしょうか。食べるための口腔の筋肉は100個以上あるといわれています。私たちは通常、意識することなく、それらを動かしています。ところが、加齢や疾病によって口腔の筋肉の動きが鈍くなると、食べ物をスムーズに飲み込めなくなります。これを「嚥下(えんげ)障害」といいます。嚥下障害が起こると、食べ物がのどを通らなかったり、食道ではなく気管に入ってしまったりします。気管に入った食べ物は肺に入り、炎症を起こして肺炎につながることもあります。また、食べる機能が低下すると、好きなものや硬いものが食べられなくなり、食の楽しみが奪われたり、栄養が偏ったりする危険があります。
舌の動きを数値化する
では、嚥下障害の場合、口の中の筋肉、中でも嚥下に大きな役割を果たしている舌は、どのくらい、どんなふうに機能が落ちているのでしょうか。それを「見える化」してくれるのが、「舌圧センサシート」です。何かを飲み込むとき、舌は口の中の天井に接触しながら、前から後ろへと移動します。「舌圧センサシート」は、口腔内の天井に薄いシートを貼付して、舌の接触の位置と強度を数値化します。その調査の結果、嚥下障害のある人は、障害のない人に比べて、舌が天井に接触する強度(舌圧)が弱く、動きも小さいことがわかりました。
有効な舌の筋トレ方法を探究
舌圧が弱く、動きが小さいのは、舌の筋肉の力が低下しているからです。例えば、腕の筋肉を鍛えるならダンベルを使って筋トレをするように、舌を鍛える方法についてさまざまな研究が行われています。その1つが「舌圧測定器」を使う方法です。舌でバルーンを潰すことで、舌の力を数値で表すとともに、バルーンを潰すこと自体が舌の筋トレになる装置です。ただし、筋トレはたくさん行えばいいというものではありません。適切な筋トレの強度と頻度についても、研究が進められています。
参考資料
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広島国際大学 総合リハビリテーション学部 リハビリテーション学科 言語聴覚療法学専攻 准教授 福岡 達之 先生
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