講義No.11982 医療技術

舌の動きを分析し、食べる力の維持・回復の方法を探る

舌の動きを分析し、食べる力の維持・回復の方法を探る

食べる機能が衰えると

人間が物を食べるとき、口やのどの中はどんな運動をしているのでしょうか。食べるための口腔の筋肉は100個以上あるといわれています。私たちは通常、意識することなく、それらを動かしています。ところが、加齢や疾病によって口腔の筋肉の動きが鈍くなると、食べ物をスムーズに飲み込めなくなります。これを「嚥下(えんげ)障害」といいます。嚥下障害が起こると、食べ物がのどを通らなかったり、食道ではなく気管に入ってしまったりします。気管に入った食べ物は肺に入り、炎症を起こして肺炎につながることもあります。また、食べる機能が低下すると、好きなものや硬いものが食べられなくなり、食の楽しみが奪われたり、栄養が偏ったりする危険があります。

舌の動きを数値化する

では、嚥下障害の場合、口の中の筋肉、中でも嚥下に大きな役割を果たしている舌は、どのくらい、どんなふうに機能が落ちているのでしょうか。それを「見える化」してくれるのが、「舌圧センサシート」です。何かを飲み込むとき、舌は口の中の天井に接触しながら、前から後ろへと移動します。「舌圧センサシート」は、口腔内の天井に薄いシートを貼付して、舌の接触の位置と強度を数値化します。その調査の結果、嚥下障害のある人は、障害のない人に比べて、舌が天井に接触する強度(舌圧)が弱く、動きも小さいことがわかりました。

有効な舌の筋トレ方法を探究

舌圧が弱く、動きが小さいのは、舌の筋肉の力が低下しているからです。例えば、腕の筋肉を鍛えるならダンベルを使って筋トレをするように、舌を鍛える方法についてさまざまな研究が行われています。その1つが「舌圧測定器」を使う方法です。舌でバルーンを潰すことで、舌の力を数値で表すとともに、バルーンを潰すこと自体が舌の筋トレになる装置です。ただし、筋トレはたくさん行えばいいというものではありません。適切な筋トレの強度と頻度についても、研究が進められています。

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先生情報 / 大学情報

広島国際大学 総合リハビリテーション学部 リハビリテーション学科 言語聴覚療法学専攻 准教授 福岡 達之 先生

広島国際大学 総合リハビリテーション学部 リハビリテーション学科 言語聴覚療法学専攻 准教授 福岡 達之 先生

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リハビリテーション学

先生が目指すSDGs

メッセージ

今は人が行っている仕事でも、近い将来AI(人工知能)に取って代わられてしまうものが少なからずあるといわれています。
しかし、言語聴覚士という仕事は、AIでは代替できない仕事として、かなり上位にランキングされています。なぜなら、言語聴覚士が担っている仕事は、一人ひとりの対象者に合わせたオーダーメイドだからです。オーダーメイドということは、人が好きで、人と話すことが好き、しかも人を理解する力がなければ務まりません。こうした言語聴覚士という仕事の重要性を、ぜひ知ってもらいたいです。

先生への質問

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広島国際大学は、「いのちのそばに。ひととともに。」の想いを胸に歩む医療系総合大学です。健康・医療・福祉を軸に「時代と地域が求める真のフィールドスペシャリスト」の育成をめざしています。医療系総合大学としてチーム医療に 最適な学部・学科構成となっており、学生生活そのものが実践の場となっています。また、国内外で高い評価を得ている研究者や社会の第一線での実績を持つ教員など、多彩な人材による優れた教授陣が、学部・学科間または研究科・専攻間の枠を越えて相互に連携を図り、きめ細かい教育を行っています。