あらゆる子どものあらゆる症例に対応する「小児歯科学」
専門医資格者は100人に1人
歯科の二大疾患は虫歯と歯周病です。低年齢ではまず虫歯、そして思春期くらいから歯周病が起こります。虫歯菌は歯のような硬い部分を侵すには時間がかかるので、2、3歳の頃までほとんどの人には虫歯がありません。どのように子どもに菌が入り、虫歯や歯周病になっていくのか、その移り変わる様子を研究し、治療を担うのが小児歯科学です。実は、日本小児歯科学会が定めた基準を満たしこの専門医と認められているのは、2017年現在で、日本では歯科医の100人に1人程度なのです。
虫歯菌の多くは「母子伝播」
分子生物学のDNA分析手法の発達により、母親と子どもの間で虫歯菌のDNAパターンが一致している率が高いということがわかってきました。これにより、産まれてから濃密に接触している母親から唾液を介して伝播することが多く、さらに口の中の菌が多い母親からの方が伝播しやすいことが科学的に証明されたのです。そこで、これを基に母親への予防指導などが行われています。
また、小児歯科では障がいのある子どもや、ほかの部分の病気と関連のある口腔疾患の子どもの治療も担います。例えば、骨と歯はとても深く関連しており、全身の骨の病気にかかっている子どもは歯にも影響があり、歯の修復や入れ歯が必要な場合もあります。また大人と違って、子どもには成長に合わせた特殊な治療や技術が必要です。こうしたことも小児歯科の研究対象になります。
人の一生の口腔保健の入り口を担う
歯学の中で小児歯科は、0歳から14、15歳くらいまでの年齢の子どもを対象にした分野であるが故に、保存治療や予防、矯正、口腔外科など歯科にまつわるほとんどの専門領域をカバーする特性があります。人の口腔保健に対して最初に関わり、その一生を左右する重要な役割なのです。
また、前述のような全身の病気が歯に及ぼす影響や、口中の菌が心臓などの疾患を引き起こすメカニズムを解明するために、各医学領域との連携(医科歯科連携)が活発になっており、研究の幅もますます広がっています。
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先生情報 / 大学情報
大阪大学 歯学部 小児歯科学講座 教授 仲野 和彦 先生
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