口内の健康は、全身の健康に直結している!

歯周病の原因菌が全身に広がる?
まれに、「むし歯や歯周病は放っておいても命には関わらない」と言って、歯医者に行こうとしない人がいます。しかし、実は歯周病は放っておくと、その原因菌が口内だけでなく、体のほかの部位に移動して悪さをすることがあります。糖尿病や、心筋梗塞などの心臓疾患、脳梗塞など、歯周病を原因としてほかの病気を誘発する例が多く報告されています。つまり、口内の健康が全身の健康を左右し、場合によっては命に関わることもあるのです。
口腔崩壊の影響は心身ともに
以前に比べて、日本人の口内環境はかなり改善されてきています。また、若い世代のむし歯の発生は大幅に減っています。しかし、それは平均して見た場合の話です。一部では、むし歯が10本以上あり、ものがうまくかめない状態になる「口腔(こうくう)崩壊」の子どもが増加しているという問題があります。
口腔崩壊の状態になると、ものがかみづらいために栄養が不十分になる、感染症にかかりやすくなるなどといった影響があります。また、集中力が落ちる、笑わなくなるなどの精神的な影響も大きいと言われています。なぜ笑わなくなるかというと、歯並びの悪さを意識するあまり、口を開けるのをためらってしまうのです。
歯科医療の枠を超えて
口腔崩壊の原因については、家庭環境の影響の可能性が指摘されています。本人や親が口内の健康に対する理解が少ないとか、経済的な理由で歯科医へ行けない、あるいは虐待が疑われるケースもあります。ただし因果関係ははっきりしておらず、今後、調査研究を進めていく必要があります。
家庭環境に原因があるとすると、口腔崩壊の問題を解決するには、歯科医だけでなく、保健師や社会福祉士といった、歯科医療以外の専門家の知識や協力も求められます。もちろん根本となる歯周病などの予防にも、本人や親に理解を促す啓発活動は重要なものです。口内環境の改善のためには、各分野の人たちの知見を集めなければならない時代が来ています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報

大阪歯科大学医療保健学部 口腔保健学科 教授神 光一郎 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
社会系歯学、口腔衛生学、公衆衛生学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?