講義No.14453 歯学

口の中のトラブルは全身に! 健康維持に大切な「予防歯科」

口の中のトラブルは全身に! 健康維持に大切な「予防歯科」

物を食べ、飲み込むということ

口の中に食べ物が入ると、前歯がかんで奥歯がすりつぶし、喉から飲み込んで胃に送るという働きをします。この一連の動きは、口の中や周辺にあるいくつもの筋肉の働きによるもので、とても繊細かつ複雑です。食べ物が飲み込みにくくなり、誤って気道に入って起こる高齢者の「誤嚥(ごえん)性肺炎」がよく話題になりますが、実は物を飲み込む力のピークは20歳頃と言われます。そこから少しずつ衰えていき、硬いものが食べづらくなったり話すときの滑舌が悪くなったりして、やがて65歳を超えると「飲み込みにくい」といった具体的な症状となって表れます。

口腔内トラブルは全身に

また、歯周病は30歳以上の成人の半分以上がかかっています。最近では、歯周病菌が歯茎から血液を通じて体内に入り、認知症を引き起こす原因になっていると指摘されています。また、糖尿病患者は歯周病になりやすいですが、歯周病になった歯茎内で作られる炎症物質が、血液を通じてインスリンの効きを悪くすることで、糖尿病にさらなる悪影響があるとも指摘されています。
歯周病で歯を失えば、人は柔らかい食べ物を好むようになります。すると栄養バランスが偏るだけでなく、物をかむ筋肉も衰えて、そうした口腔(こうくう)内の衰えがやがて全身の衰えにつながると言われています。口腔内のトラブルは、まさに全身に及ぶのです。

疾病リスクを減らす取り組み

2025年に導入が予定されているのが、年に1度、日本国民に歯科の受診を義務付ける「国民皆歯科健診」です。この健診によって、口腔内トラブルが原因となる疾患の予防が期待されます。また定期的に歯のクリーニングを受ければ、これからも入れ歯などに頼ることなく、自分の歯を残すことができるでしょう。また歯科では、正しい歯の磨き方指導や、虫歯や歯周病を予防するために日頃から気を付けること、また栄養バランスについても教わることができます。歯科予防は、健やかな人生を送ることにつながります。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

埼玉県立大学 保健医療福祉学部 健康開発学科 口腔保健科学専攻 准教授 栁澤 伸彰 先生

埼玉県立大学 保健医療福祉学部 健康開発学科 口腔保健科学専攻 准教授 栁澤 伸彰 先生

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歯科学、解剖学、口腔解剖学

メッセージ

人生100年時代といわれる今、おいしい食事を楽しむために欠かせない歯の大切さが見直されています。予防医療が重視されて、歯科衛生士の活躍はますます世の中から期待されるでしょう。歯科衛生士は、幅広い年代の患者さんと接します。人とのコミュニケーションが苦にならず、何より「口」に少しでも興味がある人であればこの仕事を楽しめると思いますし、大変やりがいのある仕事です。一方で専門分野だけでなく、幅広い知識や教養も身につけてほしいです。ぜひ一緒に学んでいきましょう。

埼玉県立大学に関心を持ったあなたは

埼玉県立大学は、保健・医療・福祉の「連携と統合」を目指し、学科を超えた地域活動・研究活動を行っています。多くの優秀な若者たち、明日の社会づくりの希望を持った若い力がいつかそれぞれの地域や職場で、あるいは世界のどこかで、高い志と豊かな感性、深い知識や技術を持って貢献できる可能性を秘めた人材として育っていけるよう全力で応援します。