口の中のトラブルは全身に! 健康維持に大切な「予防歯科」
物を食べ、飲み込むということ
口の中に食べ物が入ると、前歯がかんで奥歯がすりつぶし、喉から飲み込んで胃に送るという働きをします。この一連の動きは、口の中や周辺にあるいくつもの筋肉の働きによるもので、とても繊細かつ複雑です。食べ物が飲み込みにくくなり、誤って気道に入って起こる高齢者の「誤嚥(ごえん)性肺炎」がよく話題になりますが、実は物を飲み込む力のピークは20歳頃と言われます。そこから少しずつ衰えていき、硬いものが食べづらくなったり話すときの滑舌が悪くなったりして、やがて65歳を超えると「飲み込みにくい」といった具体的な症状となって表れます。
口腔内トラブルは全身に
また、歯周病は30歳以上の成人の半分以上がかかっています。最近では、歯周病菌が歯茎から血液を通じて体内に入り、認知症を引き起こす原因になっていると指摘されています。また、糖尿病患者は歯周病になりやすいですが、歯周病になった歯茎内で作られる炎症物質が、血液を通じてインスリンの効きを悪くすることで、糖尿病にさらなる悪影響があるとも指摘されています。
歯周病で歯を失えば、人は柔らかい食べ物を好むようになります。すると栄養バランスが偏るだけでなく、物をかむ筋肉も衰えて、そうした口腔(こうくう)内の衰えがやがて全身の衰えにつながると言われています。口腔内のトラブルは、まさに全身に及ぶのです。
疾病リスクを減らす取り組み
2025年に導入が予定されているのが、年に1度、日本国民に歯科の受診を義務付ける「国民皆歯科健診」です。この健診によって、口腔内トラブルが原因となる疾患の予防が期待されます。また定期的に歯のクリーニングを受ければ、これからも入れ歯などに頼ることなく、自分の歯を残すことができるでしょう。また歯科では、正しい歯の磨き方指導や、虫歯や歯周病を予防するために日頃から気を付けること、また栄養バランスについても教わることができます。歯科予防は、健やかな人生を送ることにつながります。
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